書評

浅田次郎二点『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』清朝没落絵巻

浅田次郎は新田次郎ではない。字面で間違えそうになるが、ぜんぜん違う。つーか間違えそうになるわたくしがおかしい。蒼穹の昴(1) (講談社文庫)作者: 浅田次郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/10/15メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 209回この商品を…

・・というより、三国志とか。

某所で三国志のネタが出ていたので、なんとなく読みたくなって家にあった父の蔵書の陳舜臣の『曹操』『諸葛孔明』を読んだ。曹操〈上〉―魏の曹一族 (中公文庫)作者: 陳舜臣出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2001/03/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック…

『石の葬式』パノス・カルネジス ユリシーズの国の哀しき風景

ギリシャ人ってなんか可哀想である。西欧の文化の礎を築いた偉大なるギリシャ人の末裔でありながら2千年以上も他民族に支配されてきた民族だ。といってもまぁ東ローマ帝国の公用語はギリシャ語だし、ほとんどギリシャ人の国状態でもあったか。その後はオス…

『白い果実』ジェフリー・フォード 本格的幻想小説

年明けの読書はこれだ↓白い果実作者: ジェフリーフォード,Jeffrey Ford,山尾悠子,金原瑞人,谷垣暁美出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2004/08/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 94回この商品を含むブログ (43件) を見る久しぶりの本格的幻想小説だ…

『ツバルー地球温暖化に沈む国』 神保哲生 ちっこい島の危機

隣の旦那、ひでさんの書斎はトイレである。三人の男の子を抱える家ではトイレが聖域なのである。ひでさんちの大人トイレの書棚は充実していて興味深い本が並んでいる。昨日お隣に誘われ、おトイレをお借りした時にこの本を発見してお借りした。ちっこい島に…

『また会う日まで』ジョン・アーヴィング アーヴィング・ラビリンス

ノロかなんだか判らん風邪でとにかくとろとろと眠りながら本を読み、本を読みながら眠っていた2007年の晦日。外は島固有の冬の風が吹き荒れ、家の中は誰もいない。海鳴りと風の音のみがガラス越しに聞こえてくる部屋で、島犬が足元で丸まったベットにもぐり…

『ハン二バル・ライジング』トマス・ハリス どうした?トマス?

那覇で藤原新也を購入したが、読んじゃったらあとどうするか?藤原新也の本は一晩で読めそうだったんで、ホテルで眠れぬ夜に読み終っちゃったら、膨大な時間を持て余しそうで嫌だ。という危機感から、トマス・ハリスのこれも買いましたよ。ハンニバル・ライ…

『黄泉の犬』藤原新也 藤原流オウム真理教麻原彰晃解釈

足止め喰らった那覇では暇だった。まぁ観光する元気がなかったのに加えて土砂降りの雨だったからだ。ただ、時間はくさるほどある。テレビは琉球なテレビしかないのを知っているんでつまらんし、雨の所為で当然だが出歩きたくない。古いホテルでネットも出来…

『綿の国星』大島弓子 自由と不自由 思春期世界

美大の学生には色々なのがいる。教えられ上手と下手なのと、コミュニケーション不全なのとか、やたら人懐こいのとか。美術やる人間というのはどっかでナニかが欠けてたりするのも多いので、その振幅幅が大きかったりする。最近ふと大島弓子の『綿の国星』が…

『フェルマーの最終定理』サイモン・シン 懸賞が今年締め切りだった数学最大の謎

わたくしは数字脳がない。ゆえにインド人ってなんかすごいと常々思っている。 そういうわたくしでも面白く読める、イギリスのインド人移民であるサイモン・シンという著者が書いた数学ドラマ史。フェルマーの最終定理 (新潮文庫)作者: サイモンシン,Simon Si…

最近読んだ漫画『累』と『ハチミツとクローバー』

うちの生徒は美大生の性か、コスプレとか、フィギアとか、ゴスとか、ロリとか、いわゆるな趣味を持っていたりするのが多い。で、先日も友人達で撮ったコスプレ写真を見せてくれた。『ONE PEACE』と『ハチミツとクローバー』『NARTO』のコスプレって辺りがイ…

『百万遍』花村萬月 アウトローな花村の自伝小説

花村萬月が自伝小説を出してたってんで読んでみようと読んだ。百万遍 青の時代〈上〉 (新潮文庫)作者: 花村萬月出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/08/29メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 43回この商品を含むブログ (9件) を見る百万遍 青の時代〈下〉 (…

『半島を出よ』村上龍 背筋が寒い近未来

研究室のK教授が「おもしれ〜」といって勧めてくれた。ブックデザインがカッコいいので、まぁ読んでみようかという気になった。村上龍を読むのは『愛と幻想のファシズム』以来である。(ただし持ち前の天才的記憶力のなさから『愛と幻想のファシズム』の内容…

『沖縄を撃つ』花村萬月 花村流沖縄案内

先日、団鬼六を取り上げたんで、今度は花村満月ね。外道小説家第二弾。沖縄を撃つ! (集英社新書 415D)作者: 花村萬月出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/11/16メディア: 新書 クリック: 51回この商品を含むブログ (18件) を見る集英社から送られた来た本雑…

『外道の群れ―責め絵師・伊藤晴雨伝』団鬼六 アウトローの浪漫

昨日、伊藤晴雨のことをチラッと書いたので、ちゃんと紹介しておきます。 伊藤晴雨は明治15年に生まれた絵師で、最後の浮世絵師などといわれています。但しその絵面は「責め絵」と呼ばれる縛り絵、つまりSMな鬼畜なものや、幽霊画など、よーするにキモイ…

『「弱い父」ヨセフ キリスト教における父権と父性』竹下節子 父とヨセフと救いについて

昨日のエントリで、惚けていく父のことを書いた。老いるということの残酷さと共にあれほど子供心に恐ろしかった父の像の変容を自覚せずにはいられない日常で、「父」の像とはなにか?と自問することも多い。 先日も紹介した竹下せんせのこの本はそういう私の…

図像学的な本3点・竹下節子、ル・ゴフ、中野美代子

トム・クランシーとか、アメリカンな軍ヲタでナショナリストの馬鹿本を読んでいたのにいいかげん飽きて(というか、近寄らぬほうがよかった無駄な世界だったと認識し)やはり脳みそに滋養をつけねばなるまいと、おのが領域のびじつ世界本を3つ平行して読み…

『SHOWDOWN(対決)―中国が牙をむく日』馬鹿本読書月間 共和党の脳内

まぁ、疲れているので漫画以外は相変わらず馬鹿本を読んでましたです。SHOWDOWN(対決)―中国が牙をむく日作者: ジェドバビン,エドワードティムパーレーク,Jed Babbin,Edward Timperlake,佐藤耕士出版社/メーカー: 産経新聞出版発売日: 2007/03メディア: 単行…

『リストランテ・パラディーソ』オノナツメ イタ飯漫画

生徒の作品チェックをしていた。 一人の生徒が持ってきた絵が、まぁうちの霊的師匠濱ちゃんに似ていたのでつくづく師匠は漫画顔だなと思っていた。(例・吾妻ひでおの『失踪日記』のA川)その生徒と話していて、オノナツメがいい!と言っていた。「是非、読ん…

『大戦勃発』トム・クランシー 読むと馬鹿になる本

最近忙しい性で、腰を落ち着けて読む本が読めない代わりに、いつもは読まない本に手を出してみるかと、ビジネスマンなおじさんが読んでそうな娯楽小説でも読もうと、買ったのがこれ↓大戦勃発〈1〉 (新潮文庫)作者: トムクランシー,Tom Clancy,田村源二出版社…

『船を建てる』 鈴木志保 ロードムービーのような漫画

一輝師匠に強力に勧められていた漫画。 表紙画からするとなんじゃかメルヘンなキャラモノかとカンチガイしそうだが実は内容はアフォリズムに満ちたロードムービーのようなそんな漫画だった。船を建てる 上作者: 鈴木志保出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 20…

最近、濫読した書の数々

いくつか本を読んだ。 ネットの怪米人、マルクス博士に触発されて猫猫先生こと小谷野敦の著作を数冊。 例えばこれ↓今、読書中。日本売春史―遊行女婦からソープランドまで (新潮選書)作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/09/01メディア: 単行…

『キリスト教とはなにか』という本の備忘

哲人集団G★RDIASのkanjinaiさんがこの本読んで?を出しておられた。 http://d.hatena.ne.jp/gordias/20071016/1192546004 なんで一応備忘。買う本にするかどうかはわからないけど。キリスト教を問いなおす (ちくま新書)作者: 土井健司出版社/メーカー:…

『いつまでもデブと思うなよ』岡田斗司夫 オタキングの偉業

先日、妹が送ってきたワンピースのチャックがなかなか上がらなかったことにショックを受けたわたくしはどえらい危機を感じた。一応母にあげてもらって着ることが出来たが、このままではMサイズの服がもはや早急に着れなくなってしまう。これは最大の危機であ…

『国家の罠』佐藤優 ポピュリズムの時代は大変なんだな

rice_showerさんに勧められた『国家の罠』をついにゲト。読んだ。面白かった。 なので友人達にも薦めた。オヤジな友人は一様に興味を示した。しみじみオヤジ本だな。オヤジ達はかような権謀術数なお話が大好きである。国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれ…

『自壊する帝国』佐藤優 ソ連末期の相貌

rice_showerさんに「絶対読めっ!」と勧められている佐藤優。そのお勧めの『国家の罠』を読む前に買ってきてしまった『自壊する帝国』を上記の「師匠をお見舞いしたりしてみる旅」の間に読み終えた。わたくしは旅の初日は大抵眠れない。非日常的な行為である…

『21世紀少年』完結したノスタルジー漫画

21世紀少年 上―本格科学冒険漫画 “ともだち”の死 (ビッグコミックス)作者: 浦沢直樹出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/05/30メディア: コミック購入: 3人 クリック: 130回この商品を含むブログ (192件) を見る21世紀少年 下 (2) (ビッグコミックス)作者: …

『私家版・ユダヤ文化論』昨日の続き

http://d.hatena.ne.jp/antonian/20070927/1190913098 ・・・・の続きね。先日、アメリカから帰ってきた友人に会った。 締め切り地獄に苦しむ私を尻目に「ルート66を車で踏破するぞ」と出かけていったデザイナーな友人である。 彼はアメリカがすごく好きとい…

『私家版・ユダヤ文化論』内田樹 なんだか判らないモノを語る

なんでも小林秀雄賞とかになった本らしい。近所のカボスで一押し本になっとったんで手に取った。私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)作者: 内田樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/07/20メディア: 新書購入: 11人 クリック: 169回この商品を含むブログ (1…

『山口昌男の手紙 文化人類学者と編集者の四十年』大塚信一 山口昌男山登攀

文化人類学者山口昌男に出会ったのは何時頃かは忘れた。 画廊オーナーであり、恩人でもあり、友人でもあるTさんに紹介されたのがきっかけである。 なんせ、美術人間であるわたくしは世のアカデミズム世界など知らない。人文世界などトンと無縁であるが故に、…