『白い果実』ジェフリー・フォード 本格的幻想小説

年明けの読書はこれだ↓

白い果実

白い果実

久しぶりの本格的幻想小説だ。
書オタクな編集者が集う国書刊行会が出すんだからそれなりのだろうと思って読んだがそれなり以上によろしかった。
物語は「東の帝国」独裁者の悪夢が支配する世界で観相学の第一人者でもある観相官クレイは辺境の街にて盗まれた「白い果実」の探索と犯人探しを命ぜられる。エネルギーの源である青い鉱物の産地であるその鉱山街では坑夫達は鉱毒に侵され、青く鉱物化していく。そこで出会う観相学の知識を持つ謎の女性アーラとの出会いが、高慢で差別意識丸出しの鼻持ちならない超むかつく性格のクレイの運命を大きく変えていく事になる。その街での失策によってクレイは文字通り島流しに逢う・・・・以下、主人公は本人の意図するところを越えて様々なことに翻弄されていくことになる。というまぁストーリーだけなら漫画的なエンタティメントにもなるのだけど、前編を貫く幻想的な光景や設定が、この小説をゴシック的な構築観をもたらしている。
この小説の結晶化された幻想世界は例えばアルバニアの作家イスマイル・カダレの『夢宮殿』やJ・G・バラードの初期短編群、あるいは映画『未来世紀ブラジル』、萩尾望都のSF作品『モザイク・ラセン』や『銀の三角』『マージナル』にも似て、ありえないがありえそうな無機質で透明な夢世界を書き出しているので、そういうのがお好みの人なら、まずはまるかもしれない。わたくしは好きなのではまりました。
この小説、三部作だそうで、この第一作は一応完結は見ているがなんとなく中途半端な終り方をしている。スター・ウォーズの二作目、つまりエピソード5に相当する『帝国の逆襲』の終り方みたいに消化不良をちょいと起こすかもしれないけど。
そういや、わたくしはスターウォーズの第一部を見てないんだ。。。。。映画館で見たいと思っているうちに見そびれて、DVDで見るなら大画面テレビを買ってからだなどと思っているうちに激しく年月が経ってしまった。ああ〜大画面テレビが欲しいよう。

まぁ、『白い果実』はアメリカ人が書いた小説なんだそうだが、どーも東ヨーロッパ作家が書いてもよさげな世界で、尚且つ、北朝鮮とかも想像してしまいますね。作家の情報がまったくないんでどういうメタファーがあるのかはよく判らないですが。

夢宮殿 (海外文学セレクション)

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イスマイル・カダレはわたくし的に萌えである。

時間都市 (創元SF文庫)

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バラードはわたくし的にやはり萌えである。