『大戦勃発』トム・クランシー 読むと馬鹿になる本

最近忙しい性で、腰を落ち着けて読む本が読めない代わりに、いつもは読まない本に手を出してみるかと、ビジネスマンなおじさんが読んでそうな娯楽小説でも読もうと、買ったのがこれ↓

大戦勃発〈1〉 (新潮文庫)

大戦勃発〈1〉 (新潮文庫)

いやはや・・・[これはひどい]タグをつけた方がいい大変に面白い本だった。
昔、この作家の「レッドオクトーバーを追え」とかいう本を読んだ記憶はあるけど、これほど酷くはなかったと思う。当然、ハリウッド的なお話だったが「まぁ、小説だし」的な納得で読めたと記憶するけど、この作品にはうーん。

何故かというと、とにかくこの作者トム君は、共産主義が嫌い。「共産主義は多様性を認めない、ファシスト国家であり一握りの人間だけがいい思いをするそういう国家なので国民は地獄で一握りの権力者だけが堕落した生活してると思う。」とか、「中国人とかって理解できない野蛮人で。その野蛮人は文明が理解できないから、経済の理論がまったく理解できないのである」とか、まぁ無知極まりない妄想で世界観を設定するので、アメリカ以外の国のリアリズムがない。中国人の下描き方は人種差別はなはだしく、中国様の反日運動とかにムカついたことがあるわたくしでも中国様の名誉のために怒るよこれは。という内容である。黄禍論バリバリ。んでトム君が書く中国の「中華思想」は鏡のように「米華思想」になっていて、メリケン国の考えこそが世界一。な思考に辟易とさせられること請け合い。まぁ中国の政治家が相当馬鹿に描かれているのは勧善懲悪脳の病理だとしても、善である立場のアメリカの政治家も実はかなり馬鹿っぽいです。政治ってこんなレベルで動かんとです。たぶん。

その酷さゆえに、実は面白かった。

アメリカ人のどんな分野の人が読んでいる本かわからんのだが、そこはかとなく透けて見えるのはブッシュ大統領を支持するような、しかも外国人などあまりであったこともない、イマイチ世界のことがわからんようなアメリカ人。そんな読者層が浮かんでしまった。つまり特定の世界の、つまり一部の保守的なアメリカ人の視点とはこんな風なのかと。そういう一部のアメリカな人々(東海岸や西海岸にはあまりいなさそうだけど)の実態というか思考ロジックを知るには大変に勉強になる本である。

まぁこういっちゃなんだが、アメリカのごとき新興国家にゃあ、中国の数千年の文明も思想もロジックも理解できないんだろうなぁとか、中国にはキリスト教徒が少ないなどと書いちゃってるけど、すごくいるんですけど・・それもかなり前から・・・とか、「中国人は全然経済分かってない」というような書きかたしてるが、現実の中国様のあのずるさは経済分かっている上でやってる狡知からくるんじゃね?お前は先ず中国史勉強汁!とか或いは、共産主義に対する理解も相当ダメポじゃね?まぁ私も共産主義国家は好きじゃないけど、ここまで馬鹿扱いは酷すぎだろ。マルクス嫁。などと突っ込みどころ満載。先ず知的階級の人は騙されないと思うが、あまり情報に接してないアメリカ人がこれが真実などと思い込んだら激しく迷惑である。とにかく読んで馬鹿になる本だよ。こいつは。真に受けたら『ダヴィンチ・コード』並みの破壊力あり。

ただ、ふと思ったが、ここに書かれている中国はまさに我々がイメージする北朝鮮であり、だとすると我々が見ている北朝鮮の実態とはいかなるものか?と思ってしまった。

このシリーズにはなんと日本とアメリカが戦争する話もあるらしい。これまた日本に対する偏見に満ちた内容なんだろうから、激しく読む気萎えではあるが、微妙にそれゆえに怖いもの見たさで読みたい気もする。

あと、同じシリーズでアメリカの国会議事堂に飛行機が飛び込むテロってのを書いているらしく、それも911以前に。ということでちょっと((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル それも微妙に読んでみたいけど、絶版になっちゃってるかも。

まぁ、大国メリケンにもいる馬鹿の思考を知る資料として読むのがいいと思った次第。

因みに軍オタに限って言えば、軍備知識が増える良本かもしれない。

次はこれでも読んでみようかな↓

SHOWDOWN(対決)―中国が牙をむく日

SHOWDOWN(対決)―中国が牙をむく日

産経様の「尖閣諸島危機」ネタロジックを勉強するのに好著な気がする。