書評

『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー スピードが速すぎるミステリ

コートが必要な季節になりましたね。 そんな寒い本日、挿画の仕事を上げ、その受け渡しと文庫の出版の打ち合わせでT社の編集さんと会っていた。SFやミステリの老舗の出版社だ。 最近『レンズマン』読んで面白かったよという話などで盛り上がる。この手の…

『シャングリ・ラ』池上永一 ジャケ買いして失敗したエコ近未来小説

ギャラが入ったので早速本屋にいって面白そうな本を新開拓をしようと思った。洋物の文学小説はじっくり腰を落ち着けて読める環境の島で読みたいんで、首都にいる間は読みやすそうなのでも読もうと思った。スペースオペラを読んだあとだしね。 本屋の単行本新…

『神秘結社アルカーヌム』トマス・ウィーラー  トンでもミステリ

ああ。そうだ。先月給料が入ったときにこれだけ買ったんだよな。あまりにアレげで書評書くの忘れていた。神秘結社アルカーヌム (扶桑社ミステリー)作者: トマス・ウィーラー,大瀧啓裕出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2008/09/30メディア: 文庫購入: 2人 クリ…

『銀河パトロール隊』E.E.スミス 米華思想なスペースオペラの古典

スペースオペラというのはSFの一ジャンルで、有名どころでは『スターウォーズ』とか『キャプテン・フューチャー』シリーズとか『スタートレック』なんかがそれに相当するんだと思う。SFに詳しくないからそういう風に思ってるんですが、ひらたく言ってしまえ…

『秘密の新撰組』三宅乱丈 疲れたときの一冊

まぁ、なんか忙しくってパソする暇もないやってなぐらいでメールチェックすら怠っていた。コメントのお返事も遅くなってごめん。 さてそんないそがしい時は馬鹿漫画を読むに限る。最近ちょびっとだけギャラが入ったので、目をつけていた三宅乱丈の漫画を先ず…

『チェーザレ』惣領冬実 教会権力と世俗権力

昨日は、仕事の締め切りが二つ終わり、本日は少しだけゆるゆるとしてます。大学の出講日だったんで、作品講評。その後、ガッコのパソコンで絵をスキャン、加工したものをメールで送り、家に帰って別の仕事を仕上げて、バイク便で送り出し・・と、すごく働い…

『チェーザレ』惣領冬実 権力者の肖像

仕事が重なっていてなんだかもうわけが判らない。佐藤センセの雑誌のイラスト締め切りが今日で、これ以降、その雑誌連載が単行本になるのでそれのイラストの修正、その特集の締め切りがあって、更に単行本三巻目のゲラ読みがあり、別の小説の文庫本の締め切…

『時が滲む朝』楊逸 ブログ小説

平野を読んだ勢いでこっちも読み上げた。まぁすごく短い小説なんで。時が滲む朝作者: 楊逸出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/07/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 34回この商品を含むブログ (81件) を見るうーむ。芥川賞というレッテルが邪魔して…

『決壊』平野啓一郎 日常にあるカタストロフィ

先日、松本サリン事件の被害者、河野澄子さんが亡くなられた。その夫、河野義行さんはこの事件の容疑者の扱いを受け、メディアに追っかけられていた。記憶では河野さんの家の倉庫だかに大漁の農薬があったからだという理由である。この時、メディアの暴走に…

読書中の二つの本『時が滲む朝』『決壊』

二つの小説を平行して読んでいる。時が滲む朝作者: 楊逸出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/07/10メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 34回この商品を含むブログ (81件) を見る決壊 上巻作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/06/26メデ…

お魚のニュースとか、ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』とか

妹が来ていたのと仕事が忙しかったのでろくにパソもしていなかったが、ネットのみがニュース源なわたくしはもう世間様でナニが起きてるか判らない。通り魔があったとか、子供が川に流されて大変だったとか、麻生さんがベルルスコーニ化してるみたいらしいと…

『ナポレオンー獅子の時代』長谷川哲也 漢臭い戦記物漫画

某作家の挿画で悩んでいたことは先日書いた。 おフランス革命といったら、なんとなく少女漫画的なイメージが出来あがってしまったのはベルバラ効果なのだが、実際は革命の立役者のほとんどは男であるし、貴族社会の豪華絢爛と比して革命軍側に視点を置くなら…

『太公望』宮城谷昌光 ニートの期待の星の実像は違うらしい

仕事してる合間に読んでいた。 「太公望」というと釣り親父の代名詞。 若い頃は冴えないヤツで、ぼーっとしていて、仕事もおろそかで貧乏。女房にも愛想を尽かされ逃げられてしまうという体たらく。ああ、まるで仕事しててもぼーっとしてしまい下流な生活に…

「東京漂流」藤原新也 グレートマザーに支配された都市

あの秋葉原の事件について考える為に書棚からほこりをかぶった「乳の海」を取り出し、再び読み返していた話は先日書いた。乳の海 (朝日文芸文庫)作者: 藤原新也出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 1995/11メディア: 文庫 クリック: 9回この商品を含むブログ…

『聖☆おにいさん』中村光 宗教ネタはタブーではない

先日、デンマークで自爆テロがあった模様 ▼デンマーク大使館狙い自爆テロ、8人死亡 パキスタン http://www.asahi.com/international/update/0602/TKY200806020258.html 【グワダル(パキスタン南部)=四倉幹木】パキスタンの首都イスラマバードで2日、デ…

宮城谷昌光と塚本青史の本をダラ読み

最近中国ネタをずっと追っていたせいもあって脳が感化されやすいわたくしは、マルケスの短編集をほおり出して、家にあった宮城谷さんとかの中国講談本読んでました。なんかあまのじゃくなんで一方的に叩かれている場面ではそういうののいいとこを知ろうとか…

『碁を打つ女』シャン・サ 硝子のように繊細な小説

中国人、山颯(シャン・サ)は若くしてその詩の才能を認められ、10代で渡仏。その後画家バルティスの元に寄宿していた。碁を打つ女作者: シャン・サ,平岡敦出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2004/08/25メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 8回この商品を含む…

『わたしの名は紅』オルハン・バムク オスマントルコ細密絵画世界

いやはや、やっと読破した。この本↓わたしの名は「紅」作者: オルハンパムク,Orhan Pamuk,和久井路子出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2004/11/01メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 104回この商品を含むブログ (51件) を見る藤原書店である。高いので有…

『警官の血』佐々木譲 警察三代を通じてみる戦後史

警官の血 上巻作者: 佐々木譲出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/09/26メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 22回この商品を含むブログ (86件) を見る警官の血 下巻作者: 佐々木譲出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/09/26メディア: 単行本購入: 4人 ク…

『ルポ貧困大国アメリカ』 堤未果 新自由主義の時代 グローバリズムの二つの顔 米国と中国

ずいぶん前に読み終えていたこれルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)作者: 堤未果出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/01/22メディア: 新書購入: 39人 クリック: 606回この商品を含むブログ (374件) を見るかなり評判になっていたらしく、既にもうあちこち…

沖縄に行った話『ナツコ沖縄密貿易の女王』奥野修司 沖縄女傑

昨年、島のイタリア料理店の壁画を描いた。店長夫婦の小粋さに感銘してボランティアのつもりでやった仕事だったが、そのお礼にと以前から行きたいようと言っていた美ら海水族館に連れていってもらった。なんとも却って高くついてもうしわけないことだったが…

『チベット旅行記』河口慧海 西遊記のごとき取経の旅

◆一日一チベットリンク運動/Eyes on Tibet madrigallさんに勧められていたこれ読破チベット旅行記〈上〉 (白水uブックス)作者: 河口慧海,長沢和俊出版社/メーカー: 白水社発売日: 2004/08/01メディア: 新書購入: 7人 クリック: 55回この商品を含むブログ (28…

虐殺の光景

チベット絡みで、法輪功のページにぶち当たって、なんか怖い話を沢山読んでしまった。 チベット問題は国家と民族、グローバリズムとナショナル、マジョリティとマイノリティ、というような世界のあちこちで今見られる紛争の一つなわけなんだが、地理的にも歴…

本日のチベット 『ダライ・ラマ自伝』続き。

ちべヲチ。 昨日の続き。『ダライ・ラマの自伝』読み終え。ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)作者: ダライラマ,The Dalai Lama of Tibet,山際素男出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2001/06/08メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 90回この商品を含むブログ (71件)…

本日のチベット 『ダライ・ラマの自伝』は面白いよ

本日のちべヲチ。 バトル画像は、気が向いたらまた作るけど、今んとこくたびれ中。◆◆ 以前から読みたいと思っていた『ダライラマ自伝』を読書中。ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)作者: ダライラマ,The Dalai Lama of Tibet,山際素男出版社/メーカー: 文藝春秋発…

『足跡』『ガラスの家』オランダ統治下のインドネシアと中国統治下のチベット

チベットのニュースが刻々と入って来る間、以前から紹介していたプラムディア・アナン・タトゥールの本を読み続けていた。シンクロしていく民族自決と民族圧殺の問題。片や植民地下での民族の覚醒と社会主義、共産主義的な解放の物語であり、片や共産主義国…

吉川英治文学賞なるものがあって佐藤亜紀と浅田次郎が受賞した件について

先だって、コメントに浅田次郎の書評をかいたら消えてしまったがくーりということを書いたのだが、その浅田次郎の『中原の虹』が吉川英治文学賞をとったらしい。中原の虹 第一巻作者: 浅田次郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/09/25メディア: 単行本購…

『自分探しが止まらない』速水健朗 戦後若者の志向性カタログ本

羽田で飛行機乗る時はいつも山下書店に行くんだが、買いたい本が上下巻の分厚い単行本とかしか無かったんで、そげな本を提げて歩くのはやだし、眠いけど眠れない頭脳に相応しい、肩のこらない新書でも読むか。などと新書コーナーにいった。あんまり読みたい…

『邂逅の森』他、熊谷達也 蝦夷の気概

先日、某作家の本が単行本化されるというので担当編集者と打ち合わせをした。その時、最近読んだのですごく面白い作家がいるという話をしたら、その編集者がなんとその作家、担当だったというので、まだ読んでない文庫を送ってくださった。有難いこっちゃ。…

『香乱記』宮城谷昌光 秦朝没落漢勃興物語

中国モノ第三弾。三国志関連から清代と来て、今度はもっと遡ります。古代中国小説の王者、宮城谷さんの書。香乱記〈1〉 (新潮文庫)作者: 宮城谷昌光出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/03/28メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (3…