・・というより、三国志とか。

某所で三国志のネタが出ていたので、なんとなく読みたくなって家にあった父の蔵書の陳舜臣の『曹操』『諸葛孔明』を読んだ。

曹操〈上〉―魏の曹一族 (中公文庫)

曹操〈上〉―魏の曹一族 (中公文庫)

曹操〈下〉―魏の曹一族 (中公文庫)

曹操〈下〉―魏の曹一族 (中公文庫)

諸葛孔明〈上〉 (中公文庫)

諸葛孔明〈上〉 (中公文庫)

諸葛孔明〈下〉 (中公文庫)

諸葛孔明〈下〉 (中公文庫)

陳舜臣というと『秘本三国志』という本も出している。その彼の『三国志』では、『三国志演義』に比して曹操を悪役に徹した表現をとらなかった吉川英治の『三国志』にも増して、曹操という人物に好意的に書いていたのが印象だった。その陳が「曹操」という人物からみた三国志を書いてみたのが『曹操」という作品。

そもそも吉川本は前半でだらだらと戦争報告が続くとか、けっこう冗長で、あの長さを読みきるには胆力を要する。昔読んだが、今は読み返す気力がない。ゆえにどんな感じだったかすら忘れつつある。ただひたすらに長い長いお話だったという印象しか残ってない。五丈原までたどり着いたときには、頭のほうに出てきた人物のことなど忘れてしまった。董卓呂布みたいな濃いキャラはともかく、呂布が殺しちゃったはじめのボスて誰だっけ?(答え>丁原)とか、記憶の彼方。吉川三国志赤壁までがとにかく辛い。しかし、なんとなく日本における正統派三国志という感じで、やはり読んどけ作品。物語の出来栄えとしても王道な印象。

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)

その点、陳の三国志は読みやすかった。まぁ現代小説的お約束があるという感じ。
ただ、どうも五斗米道が気になるらしく、個性的な話になっている。その個性が『曹操』にしても『諸葛孔明』にしても出ているので、読者を選ぶかもしれない。陳自身があとがきで述懐しているのだが、仏教的な精神性を反映させたかったらしい。更に、叙事詩としての「三国志」ではなく。個としての人物をクローズアップし、その人物を等身大の人間、弱さを持った一人の男として書こうとする為に所謂、講談的な面白さを求めるなら、つまらない印象と映るかもしれない。盛り上がるはず数々のエピソードは、この物語では脇役にすら成り果てている。ついでに言えば、諸葛孔明萌えなわたくし的には「こんな孔明は嫌だ」なキャラであるよ。

で、これ以外の『三国志』というと柴田錬三郎だが、生憎読んでいない。柴錬なら講談本的な面白さを期待できそうだ。更に、最近は何故か北方謙三までが『三国志』を書いているようだが、こちらは食指が沸かない。食わず嫌いでいけないのだが、北方謙三のイメージから想像するとどうもなぁという感じ。

・・・・そういうわけで、実は陳の三国志ものではなく、宮城谷昌光の『三国志』を読みたいのだが、これが今んところ、単行本で第6巻まででている。しかしそこまでで、やっと赤壁らしいというので、いったい何巻まで出るのか、恐ろしくて手が出せないのである。宮城谷の『三国志』なんてすごく面白そうである。
◆◆
ところで、中国の伝統的な三国志では曹操は悪役である。ところが吉川本にしても、それ以外にしても日本の小説では曹操はそこまで悪役ではない。日本の戦国時代物でも、徹底した悪役というのは出てこない。お国柄の違いなのか。中国では曹操キャラは受け入れられないのか?
どちらかというと劉備玄徳のほうが優柔不断な上司の典型で、イライラすることこのうえない。孔明を使いこなせない駄目上司である。しかも子育て失敗してるし。その点、曹操は胆力も決断力もあるマキャベリストである。正直、何時首切られるか判らんので、部下になったら怖いのだが、国の運営という観点からするなら信頼出来そうである。

それと呂布はなんだか好きである。戦闘力は最高値なのだが、知力激しく少なく、忠誠心もすぐ低くなる。ゲームなんかでは実は困ったキャラだけど。それでも劉備よりは数値がわかりやすくていいよ。

そういうわけで、誰か何故、劉備がこれほどまで人気なんだか教えて欲しい気がする。

1・出自が庶民の出だから。
  (筵売り。しかし呉の孫策も実は出自は不明。親父が瓜売ってたとか。)
2・部下のキャラが立っている。
  (呉にも、魏にも、講談的に捏造、粉飾しようと思えば面白いキャラがいる)
3・中国な人々はとにかく曹操が嫌い。
4・判官びいきってヤツ。蜀が一番小さいし〜。
5・漢の劉邦の末裔臭いから。劉さんというのは格別なんですよ。