なにかアイルランドのすごい「カトリック駄目すぐる」ニュースが入って来た ◆追記有り

最近の気になるニュースってぇと、本土がインフルエンザでパニックですごそうってのと、中央大の教授が殺された事件の犯人がやっと挙がったってのと、過去の不正でぐりぐりやられていた盧武鉉大統領が自殺した、それも山登山中に。という劇的な最期についてと、スリランカの内戦が終結したらしいんだが、ヒンズー教徒側の困難が予測されますよというのと、ピースボート自衛隊に守って欲しいと要請したというなんだか情けない現象があったのと、色々気になりまくりなんですが、ぎょーかい的にはもっとすごいのが飛び込んできましたよ。

アイルランド カトリック系児童施設 神父ら虐待『常態化』
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009052202000082.html
【ロンドン=星浩アイルランドカトリック系の児童施設で一世紀もの間、神父らによる性的暴行などの虐待が常態化していたことが暴露された。政府の調査委員会が二十日、報告書を発表した。

 調査では、カトリック系の孤児院、障害者施設、更生施設などに在籍した人のうち千九十人から証言を得た。その結果、一九一〇年代から二十世紀を通じ二百以上の施設で神父や修道女ら八百人以上が虐待に関与していたことが分かった。

 証言者の九割は暴行された経験があり、むち打ちや水責めなどが行われていた。半数は性的に暴行された経験があり、男児を対象にしたすべての施設では、修道士による強姦(ごうかん)が確認された。

 児童らの訴えで親族が届け出るケースもあったが、政府は黙殺。神父らは告発した児童にさらなる暴行を加えるなどして隠蔽(いんぺい)。報告書は虐待はカトリック系施設の「風土病」だったと指摘した。

 証言した人たちは中老年に達しているが、深刻なトラウマ(心的外傷)を抱え、三割はアルコール中毒自傷行為などに苦しむ。報告書には「スキンシップをすると性的暴行を思い起こしてしまう」「自分の子どもに攻撃的になってしまう。抱き締めることもできない」などの証言が並んでいる。

なあんんんんだああああこりゃあああ?アイルランドカトリック。駄目すぐる。いったいナニが起きていたんだ?

こちらのぶろぐに詳しい情報↓
○tnfuk today's news from uk+
http://nofrills.seesaa.net/article/119964602.html
アイルランド共和国で、教会による児童虐待についての報告書が出た。

日本ではあまり情報がないんで、海の向うはやはり詳しい。様々に報じられた情報をまとめてくださっているのが助かります。
是非上記のブログを読んでください。

虐待されていたのは現在は50代〜80代の人々。中でも深刻なのは「クリスチャンブラザーズ」という施設で、ここの施設で起きた被害者は相当数なようだ。この年代が中心という事は第二バチカン公会議による教会内改革が起き、教会内の自浄が成果を産むまで問題が続いていたと言える。映画『マグダレンの祈り』もアイルランドの施設に於ける暴力を扱った映画ではあったが、アイルランドの施設は常軌を逸しているとしか思えない。いったいどうしてこうなってしまったんだ?

こうした「施設」問題というのは、日本でも介護施設や養護施設等に於ける虐待などがたまにニュースになるが、ニュースになると言う事は、その都度問題が起きたら自浄能力が働いているという証拠である。問題とした人物が訴えることで、施設で起きた虐待が恒常化したり、深化するのを防ぐ。

アイルランドでその自浄能力が何故働かなかったのか、それについてはアイルランドの歴史の固有性がこの問題を深化させていた模様。というのもアイルランドが英国から独立を勝ち取ったあと、「教会」という独立した機関には国家は関与しないという態度をとったらしい事も関係しているようだ。

カトリック教会が世俗の介入を嫌うあまりに、つまり国家権力の介入を嫌う、或いはメディアと仲悪いとか、まぁ色々あるわけだが、しかし事勿れ主義二凝り固まった組織がどうなるかというと、組織内で起きた悪しき問題を解決出来ないとか、放置してしまうとか、見て見ぬふりをしてしまうとか、身内かばいをし過ぎて被害者が二次被害に遭うとか、色々問題がある。

更に第二バチカン公会議前のカトリック教会は、保守的で、また厳しい事を由とするような、戦前の軍国主義下の日本の陸軍のごとく「体罰」で以て教育する的な、修道士や修道女も多かったらしい。子供の頃、シスターが恐かったという話を聞く事があるが、今のシスターは優し過ぎてへなへな臭いんじゃね?と思うぐらいに昔の恐いシスターってのが想像つかない。

しかし子供を定規で殴るとか、動物には魂など無いのですと言ってのけるシスターとか、アメリカ映画に出て来る狂信的なカトリックみたいなのがマジにいたらしい。わたしの知る限りのシスターにはそういうのがいないんで、やはり明治とかそんぐらい産まれのシスターなのかもしれないですが。兎に角、貧乏ゆえに、口減らしの為に修道院にぶち込まれた修道士や修道女で世を恨んでるようなのが、集団生活でひん曲がって根性悪になったようなのがいたんだよ。という話は神父から聞いた事はある。

この件でも、本人が望まぬ聖域で鬱憤晴らしの為に児童達を虐待したり、或いは志願してなった聖職でないゆえに覚悟なく、性の問題を解決出来ず、児童をレイプしてしまうなどというような経緯も相当数あったんではないかとは想像する。いずれにしても自浄能力が働かない状態だったというのがこの悲劇に繋がっている。


第二バチカン公会議によって多くの改革が行われ、風通しがよくなったゆえに、逆にこの手の過去の問題もこれからもあきらかにされ、世に出て来るであろう事は想像出来るが、自浄能力をなくした組織などいずれ腐り、消滅するだけだ。この際だからどんどん膿を出し、被害者を救済していかないといけないだろう。教会の責任は重い。

にしても、なんか半端なさすぎだよ。駄目過ぎるというか、通り越して、もうね、地獄に落ちろ。氏ね。とつい言ってしまいたくなります。とほほ。

◆◆追記

アイルランドにしばらくいらしたkimucoさんがトラバをくださったのであらためて御紹介しておきます

○In bethu ingine
http://d.hatena.ne.jp/kimuco/20090525/1243042259
■[アイルランド]アイルランドの孤児院で

アイルランドのニュースブログなどの翻訳が記事が読めます。
カトリック系の教育機関や養護施設などで起きた様々な問題がアイルランドで今浮上しているようですが、アイルランドがおかれていた歴史的状況、対しばらく前の世紀まで英国の植民地下にあったことや、第三世界的な混迷状況が永らく続いてきた事情などが、更にこうした問題の解決を遅らせていたという分析が為されています。

アイルランド関係の物語などを読むと、この手の養護施設、孤児院などでの虐待というのが光景として描かれているのによく出くわし、暗澹とした気持ちになったものです。また、有名な小説『アンジェラの灰』でも教区司祭がすこぶる冷たい鬼畜な人物として書かれていたのが印象深い。(あの小説で慈悲深かったのがフランシスコ会司祭ってのが絵にかいた様な設定だったんで、ただのお約束な組み合わせなのかもしれないが)

いずれにしても、かなりの数の施設や機関で起きており「日常」的光景だったようですな。アイルランドの、欧州の国で近代まで植民地下にあった事や、また宗教的にはカトリックプロテスタントから蔑まれていた背景という特殊な歴史を抱えることからも、アイルランド近代史を知らないと正確に判断出来かねる案件ではあるなと思っています。

で、上記情報によると、元時点で、どうやら被害者達がローマに直訴しに行くということらしい。

こうしたカトリック世界で過去に起きていた諸問題については前教皇の時代からバチカンが解決に乗り出しており、有名なところではボストンの虐待などが挙げられる。この時は現教皇ベネディクト16世(当時のラッツィンガー枢機卿)が毅然とした態度で、真摯に解決に臨むと語っていたと記憶する。最近ではオーストラリアで起きた過去の事件にも謝罪し、解決に取り組んでいる。こうした問題が浮上してきたのは、教会側が内部改革を断行中という事ではあるだろう。教区ぐるみ、あるいはカトリック教国なら国家も加わる隠ぺい的風潮を打破していこうとローマは動いていると思う。ベネディクト16世の手腕に期待したいものです。

こうした問題が起きた時、教会の落ち度を歓び、それを煽り立て、ここぞとばかりに叩きまくるいつものごとき「祭(゚д゚)ウマー」なメディアの論調に出くわすと、教会の腐れ具合に絶望したり、事を矮小化したくなったり、もしくはメディアのお祭り騒ぎを批判したくなったりと、まぁ心情としてはそういう方向に行きたくもなるが、むしろ表に出してまで、自浄しようとする教会組織の意志をまず汲み取る必要があるだろう。

ギョーカイ人的には万民の平安の為の祈りが必要な場面である。

◆◆
英国在住ブロガー、nofrillsさんが、コメ欄で教えてくださったアイリッシュタイムズの事件証言者の言葉がすごいです。
エキサイト翻訳なんでかなりアレです。一部、直しましたが、性的言い回しが変なのは、どう訳していいかよく判んないんし面倒くさくなったんで、結局、エキサイト翻訳のままです。

▼The abused - in their own words
http://www.irishtimes.com/newspaper/opinion/2009/0523/1224247210382.html

Statements of “worst thing” that happened to participants while living in an institution
一つの施設の生活の中で起きた最も悪い事例

  • 尼僧が裸の状態で剥ぎ取って、棒で打って、夕食を全く与えないで、辱しめます。
  • 逃走した後に、私の髪を持っているのは非常に短い長さまで中断して、他の人々の正面で尼僧によって打たれるようにスタンドに裸の状態でしました。
  • 私は6時に尼僧によってレイプされました、そして、ヘッドの上に火掻き棒がある状態で、10時に尼僧によって殴られました。
  • 十分な食物ではなく、性的で物理的な乱用、教育がありません。
  • 無理矢理のオーラルセックスとむち打ち。
  • 修道士が私をレイプしようとしましたが、成功しなかったので、私は代わりに負かされました。
  • ベッドから取られて、修道士が彼らの茎を使用していた間、他の少年と共に裸の状態で歩き回らされて、彼らの陰茎に軽打されます。
  • 十字に結ばれて、他のものは側で自慰しましたが、レイプされます。

厳しい身体的な虐待

  • 私は床を磨いていて、尼僧があおむけに彼女の足を置いたので、床に押されました。 私は暗い部屋に閉じ込められました。
  • 理由がないのによる他の子供からの身体的な虐待と隔離。
  • 些細な私が出血するまでの非行のための2人の尼僧による厳しい殴打。
  • おねしょするのにおいて打って、おまるをきれいにして、子供を気にするように、最もひどく働くために割り当てます。
  • ベッドに結ばれて、3人の家庭奉仕員によって物理的に乱用されています。
  • 私は、修道士のリーダーに負かされて、入院し、私の打撲傷が見られたために私の父の葬儀に行くことができませんでした。 また、修道士のリーダーは、私を殺すと脅かしました。
  • 彼らは、私に私の姓を変えて、私がそれを受け入れるまで、私を負かさせました。 彼らは私から私のアイデンティティを取りました。 現在、まだ私と共にいる精神的な拷問によるかかっている私。 彼らは、私の姉妹と私を切り離して、彼女に別の団体に行かせました。
  • 尼僧によって物理的に勝られて、数と言及されます。 私の頭は風呂で水の下で押されました。 尼僧は食物を子供たちの一団に投げました、そして、私はいくらかの食物を手に入れるように戦わなければならないでしょう。
  • 寝る方法の午後6.3時に私が翌朝の午前6.3時で負かされると言われます。 それは、それを待つ拷問でした。
  • 剥ぎ取られて、イラクサに投げられて、1週間ブタと共に眠っています。

まだまだ続くんですが正直おなかいっぱい。

これ読んでいて思い出すのがチャールズ・ディケンズです。英国でも近代の大資本家がぶいぶい言ってたりしたなにかトンでもない時代の孤児院や養護院などの施設ものというとこんな感じで、性的な描写は流石に割愛されてはいるものの、当時のニュースネタの典型的な一つになっていましたね。施設の子供たちがロクな扱いを受けていないということが度々新聞を賑わし、そういうところから逃げ出してきた子供がウエストエンド辺りにたむろしたり、長じてニューゲイト送りなんていうのがヴィクトリア朝小説のお約束的なモチーフになっていたりしますね。ピカレスク小説的には面白い舞台で、ヴィクトリア朝を舞台とした小説は好きな分野ですが、実存でそういうところで生き永らえるというのはやはりトンでもない体験であると思います。

英国は近代化の過程でそれを克服していったんでしょうが、アイルランドは遅れて追いかけていたのかもしれません。

とはいえ今も多かれ少なかれ閉鎖された空間における、集団的狂気という問題はあちこちに存在します。

◆◆アイルランドの教育事情

コメ欄でも御指摘があったように、アイルランドにおける養護施設、孤児院の問題ではなく公教育問題が絡むのではないか?という話を受けて少し調べてみました。が、日本語サイトだとなかなかいい情報がないですね・・・。

今回もっとも深刻な被害が出たといわれる「クリスチャン・ブラザーズ」は全寮制の学校。私立と思われるかもしれませんが、アイルランド固有の教育機関のあり方から教会が運営する「公的な」全寮制の学校という位置づけになるでしょう。全寮制というと日本ではあまり存在しないのでどーも特殊な様に感じてしまいますが、例えば英国やアメリカだと金持ちが行くプレップスクールみたいなの想像しちゃったりします。でもアイスランドなんか中等教育以上は全部全寮制とか、欧州ではなんかポピュラーなようですね。

まず1949年アイルランドは英国から完全に独立します。今回の被害者は、この独立前の時代から独立後しばらくの年齢に集中しているようですが当時どのような教育が行われていたのか現代の教育とは若干差違があると思います。ただ、現代でも昔から続いている「国民学校」と呼ばれる公教育機関があり、公共学校でありながらなんと運営はその地区のカトリック司教などが加わった教育委員会が行っているようです。現代でもそうなのですから、昔はもっと密接にカトリック教会が関わってたんではないかと推察いたします。もともと欧州ってのは中世なんかじゃぁ学校ってぇと教会がやってるもんだったわけで。勿論、現代のアイルランドではそれ以外にも多宗派の教育機関が存在し、またアイルランド固有の言葉での教育を行う学校もあるそうで、それらを選択する自由があるそうです。


今回は「クリスチャンブラザーズ」だけではなく様々な施設が告発されているわけで、孤児院、養護施設、全寮制の学校というのがどこまでそうでどれくらいでってのが判らないんですが、「クリスチャンブラザーズ」の問題は寮施設内で起きていた恒常的な暴力と捉えられるようです。

引用した告白はクリスチャンブラザーズだけの話ではないでしょうが、学内の寮生同士のいじめの存在証言も散見は出来ますが「尼僧」や「修道士」への告発が多く、告発された施設の運営は修道会が担っていたものが多いようですね。

ここで「だから政教分離がどうこう云々」とか吹き上がるのは早計で、アイルランドの教育は欧州において高水準だとの評判も聞きますので、両刃の剣的なモノもあるかもしれないです。といってもアイルランドって結構無神論的な人が優れていて、ジョイスとか・・・、まぁ伝統的価値に反発するメソッドというものが知性をより磨くっていうのはありますな。(ジョイスは実はトミストだったらしいけどな)

もっとも前述の通りアイルランドでも価値の多様化は進んでいて教育機関も様々になってきているようです。モンテッソーリのガッコとかもあるらしいです。

◆◆

ブコメにお返事しとく

nekora カトリック恐るべし。高潔で鳴る僧侶ですらこれじゃ俗人はさぞや…。日本のカトリック教育機関も調査しなくていいのかね。

こういう事件が起きると、身近にカトリックがいない人はこういう感想を抱いてしまうのが悩ましい。身近にいなくても、ヨーロッパなんか行ったり、あるい文学でも美術でも音楽でもいいけどあちらの文化生活をよく知っていたりすると、まぁこういう感想にはならないとは思う。

一部には確かに目をおおうようなトンでもがいるのは事実であり、しかしそれですべてを測るのは、過去の例えば軍紀を逸脱した一部の日本軍兵士の鬼畜な振舞いを取り上げて、日本人が全部あやしいと思うぐらい危ういんで、まぁひとつ。

こうした過去の問題が今ごろになって出て来るのは上記ブログにも書いたように教会が1969年に行われた公会議を受け内部刷新に乗りだしている過程のものでもあるわけです。

日本における事例というとブコメでも紹介したような花村萬月自身の体験として書かれた『ゲルマニウムの夜』はカトリックの養護施設での出来事で、実際そういう事件が有り、問題となったことがある。日本の教会の中央機関である中央協議会が謝罪声名を公式に出していたのを覚えている。当時、同じ悲劇を出さない為に、中央協議会は問題が生じた時は申告してくださいと呼びかけていました。

つまりまぁ調査はかなりされているし、実のところ昔に比べてその点はかなり厳しいと思う。今は信徒のほうが強いので、聖職者達は常に大衆の批判の目に晒されている。寧ろ気の毒と思える時があるくらいだ。

わたくし自身カトリック関係の学校出身だが、聖職者は己に厳しい人が多かったし、シスターは優しかった。間が抜けている方もいるくらい。生徒のほうが強かったりした。尊敬出来るマザーテレサのようなシスターもいたので、アイルランドの光景が信じられないぐらいであるが、欧州の近代という一昔前の時代的なそういう事情もあるとはいえ、なにか欧州文学に見る「業」の光景があるなと。こうした業については、フランス文学などにもある。
高潔な人もいれば、反面、すざまじい業を抱えている人もいる。

日本におけるよく聞く問題は、まぁせいぜいが、恋愛沙汰(神父は恋愛御法度)か、もしくはワンマン過ぎて顰蹙買うとか、セクハラがあったなかった的なものがほとんど。ただ、カトリックの神父とか「高潔で鳴る」とはいえないです。普通に一般人的で、まぁ恋愛結婚が御法度ぐらいなので、二次元にしか萌えない人向きだったりする。

ゲルマニウムの夜

ゲルマニウムの夜

芥川賞を取ったこれ↑
花村萬月の小説は下世話的でもあり美しくもあり。施設で暮らした日々が書かれている。