麻生太郎、暗黒卿ベネディクト16世に会見

麻生首相ローマ法王と会談 法王宮殿内の図書室で
http://mainichi.jp/select/photo/news/20090708k0000m010116000c.html
【ローマ藤原章生】ローマ滞在中の麻生太郎首相は7日午後0時半(日本時間同日午後7時半)ごろ、バチカンローマ法王ベネディクト16世を表敬訪問し約30分間会談した。

 会談は法王が暮らす法王宮殿内の図書室で行われた。カトリック信者でもある首相は、祖父の故吉田茂元首相が初めてローマ法王に会った首相と説明。その上で「独自の外交力を有する貴国と人類共通の問題の解決に向けて協力したい」と述べた。法王は「カトリック家系の麻生首相と会えてうれしい。日本社会が宗教に開かれていることは喜ばしい」と応じた。

吉田茂は生前洗礼を受けたのではなく臨終洗礼だった。葬式は国葬の他にカテドラルで行われた。ただ、吉田茂の妻(麻生の祖母)と娘(麻生の母)はカトリック信者で麻生太郎は幼児洗礼だと思う。吉田は濱尾枢機卿と交流があったようだ。あの些かプラグマティックな怪物濱尾枢機卿が亡くなったのは返す返すも惜しい。高位聖職者はプラグマティックなほうがいい。本気で理想論をわめくようなのがなるとタチが悪い。腹に一物ありながらしてぬけぬけと理想を語るようなのが丁度いいと思うのだ。故ヨハネパウロ2世なんかはまさにそういう感じがある。「見た目、聖人、実はプラグマティック」の典型かも。もっとも、現場の聖職者は理想家肌のがいるほうがいいけど。

そういうたいそうプラグマティックなのがうようよしているのがバチカンで、現教皇ベネディクト16世は実は前教皇よりは多少理想家肌なトコがあるので脇が甘く、よくメデイァにボコられてますが、それでもまぁカトリック的なプラグマティック成分はそれなりに持ち併せている。

そういうわけで、極東のカトリック信者なんか吹けば飛ぶような人数しかいない国で、首相がカトリックってんで、こいつは利用しない手はないなと手ぐすね引いていたかどうかは不明だが、私だったらそう思う。他方、バチカンの情報網ってのは国家的紐がないぶん利用しない手はない代物が結構ある。政治家としてはつてがあるなら耶蘇坊主とて利用価値有りと、近づくのは賢明。かくして双方の、大層、政治的な思惑がぶつかったであろう対面が実現したということでしょうなぁ。

ベネディクト16世は早速、麻生太郎にアフリカ問題の解決等の提案を申し出ていた模様。さらに昨今のグローバリズム経済への懸念から、経済問題について語ったようですな。麻生さんが具体的にどのように応対したかは判りませんが、まぁサミット終ったら交代する可能性は大きいと思うんで、結局、現実には「パパ様に会えちゃったウレぴー」で終りかも・・・_| ̄|○

ところで、最近、Compendium of the social doctrine of the Church の邦訳が『教会の社会教説綱要』として出版されたらしい。
http://www.cbcj.catholic.jp/publish/roma/kyosetsu/kyosetsu.html

社会問題、特に労働とか民主主義とか家庭とか、社会共同体の基本にかかわる教書なようだ。教皇庁の正義と平和協議会から出されているんで、日本のカトリックの正義と平和協議会の出版物のようななんだか読んでるうちに口の中が甘くねねちゃねちゃしてくるような反知性主義的なのと根本的に違うと思うんで読んでみたい気がする。

因みに表紙画がシエナのポデスタ(市庁舎)の壁画、ロレンツェッティの「善政と悪政」の「善き政治の寓意」原書の表紙画がそれだったようで、邦訳もそれを用いている。バチカン的政治の理想ってのは、ルネッサンス都市国家の共和制なんじゃあるまいか?等と想像してみる。

この絵好きなんですよ。これと対を為す「悪政の寓意」とで、まぁこの寓意バリバリだった時代の図像ってのは変ぽくていいんですよね。
この絵の左に座す女性は「正義」の寓意でその上にいる「叡知」の寓意が持つ天秤には「交換的正義」と「分配的正義」が乗ってバランスが採られている。前者の「交換的」というのは経済上の公平さ、誠実さ。後者の「分配的」というのは法による善悪への報償と罰の正しさを意味するのだが、これらの図像の由来はトマス・アクイナス(もしくはアリストテレス)的な法理論に基づいている。右の髭じじいはシエナ市の擬人像で、その周りを取り囲む人物達は七つの美徳である。これは伝統的な徳概念に由来する。ああ、いかにもカトリック的な図柄なんだなとか思ってしまうのである。

こうした政治の善政を期待する教書の訳文が出たと思った等、更に最近、ベネディクト16世がCaritas in veritate(真理における愛)という回勅を出したそうです。これについては菊池司教様のブログに紹介記事が出ています。

○司教の日記
http://bishopkikuchi.cocolog-nifty.com/diary/2008/12/post-9c1c.html
教皇様、09年世界平和の日メッセージを発表

教皇ベネディクト16世によるグローバリズムから生じる問題点なようです。単純な反グローバリズム論ではなく、そういう現実の中で、いかなる問題が起き、生じた問題と向きあい、如何に善を為していくべきか的な社会倫理的なお話なようです。

まぁ、たぶんもうすぐ選挙になるんで、右の人も左の人もノンポリな人も、上記の本を読んで、各人、それぞれの政治スタンスで、より良き社会になるように祈り、どこに投票しようとか判断したりしてみましょう。もっともマスコミの記事読んでると政治そのものにすべからく絶望したくなるような事しか報道してくれないんで困ります。

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karposさんから紹介してもらったニュースサイト。麻生さんとべね16のツーショットが出ています。

http://www.zimbio.com/pictures/05siuXizzMN/Pope+Meet+Prime+Minister+Japan+Taro+Aso/hiCj7OzSmef/Pope+Benedict+XVI

この写真にカルメル会の修道服を着ている方がおられるが、通訳担当の和田誠神父だと思われ。この神父様、以前中川通産大臣バチカンで酩酊して傍若無人な事をしたという報道が事実無根で酷いと、手記を書かれた方ですな。普通、カトリック司祭はあまりこういう世事に絡んだ行為を行わないのだが、ことに外交上の問題が絡むような微妙な事については。ゆえによっぽど腹に据えかねたか、もしくは見るに見かねたのかもしれない。


劣悪メディアの報道の歪みをかいくぐるリテラシーが必要なので、まぁネット情報とか助かります。