お魚のニュースとか、ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』とか

妹が来ていたのと仕事が忙しかったのでろくにパソもしていなかったが、ネットのみがニュース源なわたくしはもう世間様でナニが起きてるか判らない。通り魔があったとか、子供が川に流されて大変だったとか、麻生さんがベルルスコーニ化してるみたいらしいとか、なんかどれもよく判らん。「内閣改造」とか、もう脳裏の映像にサイボーグ化した福田首相が浮かぶぐらい現実的な話として受け止められないしで、ほんとに浮世から離れてしまったようです。
そんな中で目を引いたニュースといったらこれくらい↓

▼五輪遠泳の英国代表選手、「魚が怖い」
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-33056920080804
[北京 3日 ロイター] 北京五輪から新たに正式種目となるオープンウォータースイミングの英国代表選手が、魚が苦手なため、試合会場となる湖で泳ぐことに不安を抱いていることが分かった。

 順義オリンピック水上公園の人工池で行われる10キロ遠泳に挑むデービッド・デービス選手は3日、ウェールズ・オンライン(www.walesonline.co.uk)に対し「もし大きな魚を見たら怖い。彼らは人間じゃない。歩き回らないし、普通じゃない」と語った。

 人工池にどのような魚がいるかは不明だが、南アフリカでのレースに参加した際には、コーチに対し「水中に嫌いな魚がいたら100メートルで途中棄権する」と伝えていたという

ぽにょ?ああ、ポニョ見たいのに映画館ないから見れないんだけど、宣伝映像だと普通じゃないよな。人間じゃないし。でも魚でもないみたいだし。シーマン系かも。

・・・・違う。まぁ海ネタというか、デービッド君のユーモアにまったりしたというか。そういうわけでツボだった。

最近は糞暑いんで午後は海に行くことが多いんだが、この暑さの性か浜に近いとこは海水が濁っていて気分が悪いんでリーフまで行って外洋と内海の境の水深がかなりイケてるような深いとこで泳いでますがその辺りに行くと魚のでかいのが群れ為していたり、愉しいんですよ。デービッド君にとってはそういう光景は怖いんだ。まぁ確かに水の中では魚はでかく見えるうえにへんてこな奴等もいる。海でウツボに出会ったら怖いよ。うねってるの見ちゃった時には速効で逃げた。ダツは光を見ると突進してきて怖いよとか聞くし。夜間には泳がないからいいんだけど。外洋で、渓谷のようになった海底を下に見ながら浮遊してる時にうっかりサメに出会ったら流石に怖いだろうなとか想像してしまうです。
しかし選手になったということは本国で泳いでいただろうと思うのだが・・・・中国の湖にはナニがいるか判らないというなら、気持ちは判らないでもない。四川省には野人もいる国だもんよ。

あとは有名な方の訃報二つ。
赤塚不二夫はとにかくアル中ですごかったし、家族も大変だっただろうなと思う。一度、わたくしが昔勤めていた予備校で講演を頼んだらもう無茶苦茶でして、良識ある父兄とかいたら訴えられちゃうような按配であった。生徒は喜んでいたが、とにかく「講演」ではなく壊れた親父のパフォーマンスを見たという感想だった。以来赤塚不二夫は彼の描くギャグネタ以上に壊れているという印象であった。ご冥福を祈ります。

もう一人はソルジェニーツィン
この人の著作にはトラウマがあって、高校時代か大学時代か忘れたが『ガン病棟』を読みかけたがあまりに暗くてやめてしまった思い出がある。『収容所群島』とかも群島という言葉に魅かれて読んでみようかとよく思うのだが、別に島嶼について書かれているわけではない。
ただ、スターリン批判をしていたこの人がアメリカに行き悶々としてたとか、やっぱシューキョーが大切だよな!!!とか言ってたりとか、或いはドストエフスキーにも通じるような、人間存在というモノの有様と国家政治という問題とを突き詰めて考えていく、それも激しい重さとともに・・というあまりにロシア的ななにかを体現しているかもな〜とかで、この人はいつか読破したいとは思っていた。「ロシア」というものを背負っている彼の、民族と国家というものについての思想に興味はある。
例えばロシア民族の持つ病理的(ロシア人作家ってのはよくよくこういう視点で物書くよねぇ)なものについてのユダヤ問題の歴史を取り上げた作品が発表されたとかでかなり興味深いのだが、どうもその後音沙汰がないらしい。
(参照:finalventの日記 
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20080805/1217889317)
で、まぁなかなかに取っつき辛いけど興味深い作家であるこの人の著作の取っ掛かりをつけようと、ノーベル賞をとった『イワン・デニーソヴィチの一日』 Один день Ивана Денисовичаを昨年購入し、読んでいたんだけど、書評を書き忘れていたよ。もうほとんどディテールは忘れちゃったけど。

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

これが結構面白かったわけです。
淡々と収容所の生活を書いているんですが、凍りつくような寒さの中で労働する収容所の人々の単なる退屈な一日が面白かった。もうほとんど忘れてるがかすかに覚えている光景が、硝子が破れた部屋の窓を塞ぐとこやとにかく暖を取りたいのでストーブがある看守かなんかの部屋に行って時間稼ぎしてるとことかかなぁ。あとなんでもかんでも凍っちゃってるとか。それぐらい盛り上がりがないような話。
出口がないかのような、理不尽な生活を、とにかくあまり感情も交えないような筆致で、淡々と描いている。囚人の延々と続いているだろう単調な生活の光景が却って際立ってくるというか、名作である。とにかく全然盛り上がるなにかがないのにすごい面白いっていう変な小説です。どこかユーモアすら感じるかのようなこの作品から、ドストエフスキーとはまた違うロシアの一面を知り、とにかくすごいすごいと感じ入ったので再び『ガン病棟』でも読んでみるかと思ってはいたんだが。アレはマジ取っつき悪い。そもそもロシア文学そのものが取っつき悪いのだが、それは私の体質の性かも。

にしてもロシア人は「ロシア」についてやたらと書きたがるというか、「ロシア」という浪漫を感じちゃってるみたいな。どうなんですかねぇ?トルストイとかはまだ読んだことないんですが。