『時間都市』J・G・バラード 死去の知らせにびっくり

ぱそさぼりしています。いいかげんメールチェックしないとと立ち上げたらメールが沢山入っていた。げー。
私は常から筆無精で電話無精で、とにかくまぁ色々と無精である。書かなきゃと思いながら返事が書けず、電話しなきゃと思いながら気がついたら夜中である。それが絵を描きはじめるとこれが更に酷くなる。1週間ぐらい人と話さなくても全然平気。部屋にこもってしまうので昔は心配した母が握り飯を造って部屋に持って来た事がある。流石に反省した。今は家人がいないんでお気楽すぎて酷いもんだ。
ま、私だけではなく絵描き仲間はこういうのが多い。島友人で大先輩のイラストレーター、元くに子さんも仕事が始まった途端1ヶ月ぐらい篭って出てこない。家を訊ねていくと行くとふらふらと幽鬼のような姿で出迎えてくれる。当然、飲みに誘っても出てこない。

更に私はテレビを観ない。新聞を取っていない。
そういうわけで世の中の出来事に大変に疎くなる。
最近で一番酷い世間知らずは「北野武が番組で暴言吐いて干された」と思っていたことである。はてなで話題になっていたからなんだが、北野誠という人を全然知らず、たけしだとずっと思い込んでいたのである。

なんとJ・G・バラードが亡くなったそうだ。
猫猫先生のブログで発見した。
○猫を償うに猫をもってせよ
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20090420
■SFについて
猫猫先生こと小谷野敦(こやのとん)氏はどーもバラードがつまらなかった様子で途中で放り出したそうだが、私は好きである。
初めて読んだのは『時間都市』であった。

時間都市 (創元SF文庫)

時間都市 (創元SF文庫)

短編集である。SFというよりは幻想文学という感じの変な世界ばかり。
バラードの描き出す世界は空間が切り売りされ人がぎゅうずめに住んでいる世界とか、上層も下層も気が遠くなるほど延々に続く巨大建造物みたいな世界とか、成長する彫刻とか、廃虚化した都市とか、音を奏でるというか記憶する建物の音掃除人の話とか、絵でいうなればシュールリアリズム的な世界を描くのが得意である。

私は視覚人間なのでこのような視覚中枢に訴えかけるような話が大好物なのである。
バーミリオンサンズ・シリーズ辺りも好きだが、実は猫猫先生がお読みになった「沈んだ世界」は読んでいない。長編より短編が好きである。『時間都市』はそのようなへんてこ世界の真骨頂であり、ビジュアル的にびりびりと来る。
わりと人に知られた作品というと『太陽の帝国』がある。ニュースでも「太陽の帝国の作者」という紹介のされ方をしている。滅びゆく上海で幼い頃を過ごした彼の自伝的小説の『太陽の帝国』は廃虚的な澱み観、都市の死、世界の死を見つめる彼の視点が素晴らしい。しかしスピルバーグが映画化してお涙頂戴のつまらない物語に仕立ててしまった。あれは酷かった。

『時間都市』をはじめて読んだのは、兄貴の本棚にあったからだ。変なタイトルに魅かれて知らない作家だが読んでみようという気になった。どうやら兄貴の大学の英語のテキストに使われていたようで、この創元推理文庫のをアンチョコにしていたのか、あちこち線が引いてあった。猫猫センセはつまらないとおっしゃっているが、東大の理工系ではこれを英語で使ってたみたいですよ。流石、東大はすこぶる変な文学を英語のテキストに使ったりしてるんだなと、勉強のべの字もしたくない美術系人間は感心したものである。
うちの兄貴は猫猫先生の二年ぐらい上になるはずなので、丁度在学中にこんな変な本をテキストに使っていた理学部方面の教授を御存知かも知れませんね。

ま、バラードの最近の小説はイマイチで取っつき悪かったし、多くを読んでいない。昔の短編はマジにいいです。
これを機会に未読であった「沈んだ世界」も読んでみよう。


・・・・・・・・・・・・・と、ここまで書いて気がついたが、今、創元推理文庫の仕事してる最中で、締切は連休明けなのはいいが、ラフ送るの忘れていた。いかん。
思い出してよかった。バラードのおかげである。