まことちゃんハウスは環境破壊?

イタリアの建築家にレンゾ・ピアノという人がいる。関西国際空港や銀座にあるガラスキューブのエルメスの建物は彼の作品である。記憶に残ってしまうような作品を作る建築家である。
その彼の代表作にパリのポンピドゥー・センターという現代美術の美術館がある。
建物が出来て間もない頃、ある日、彼がその近くを歩いていると、ひとりの足の悪い老女が道を尋ねてきた。杖をついたその老女をしかるべき目的の場まで導き、この親切なイタリア人にいたく感じ入った老女は感謝しながら、彼のことを聞く。
「私はレンゾ・ピアノというんです。」
そして背後にあるポンピドゥーセンターを指差し、
「ほら、あの建物を作ったのは私なんです」
すると件の老婆、いきなり彼を杖でバンバンと彼を叩きはじめた。
「パリに、こんな醜悪な建物をつくりおって!この!」

ポンピドゥー・センターが出来た当初、かなり不評だったという話は聞いた。確かに工場みたいな、不必要にパイプやらチューブやらがうねうねと這い回っているような、デビット・リンチが歓びそうな悪夢的な建物である。
上記のエピソードはフランスと日本を行ったりきたりしていた絵描き仲間から聞いた。

パリの人は新しいものができるとすぐ「景観にそぐわない!」と怒る。上記の老婆もそのクチで、親切なイタリア人だろうが、醜悪な建物を作ったら途端に豹変してクズ扱い。
古くはエッフェル塔、最近(といってもだいぶ経つけど)パレ・ロワイヤルにあるダニエル・ビュランがその怒りの対象となった。しかし馴染んでくるとそのことをすぐ忘れて、けっこう好きになっていたりするようでもある。

で、日本でも醜悪極まりない?建築物で訴訟問題。

楳図かずおさん宅、赤白の壁は適法 東京地裁
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090128/trl0901281537008-n1.htm
 「まことちゃん」などの作品で知られる漫画家の楳図かずおさん(72)が東京・吉祥寺に建設した外壁が赤白しま模様の自宅をめぐり、近隣住民2人が「周囲の景観を破壊する」として、楳図さんらを相手取り、外壁の撤去を求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。畠山稔裁判長は「地域に、壁の色彩についての法的規制などはなく違法とはいえない」などと請求を棄却した。

 楳図さん宅は2階建てで外壁が赤白の横じま模様に塗装されている。住民側は「周囲との調和を欠き、景観を破壊している。良好な景観から恩恵を受ける権利(景観利益)を侵害された」などと主張していた

写真を拝見する限り、そんなに醜悪でもない。
この「まことちゃんハウス」を巡るトラブルは以前からニュースになっていて、「まことちゃん」をモチーフにするとかそんな話もあったような覚えがあるがそのモチーフはどうも塔の部分らしい。
わたくしはかっぱ橋にある巨大なコックさんの像とか想像していたので、それは嫌だろうなぁ。巨大なまことちゃんなんて・・。と思っていたが、これはまぁ許容範囲。

個人的には景観を破壊するような建造物ってのは嫌いなほうなんだが、今の建築物ってのは似非欧州、似非アメリカってな感じで、まことちゃんハウス的なるものがごろごろしてるし、似たようなものではないか?としか思えない。つまりまぁ楳図さんちもそんな美しくもないし、つまりただのセンス悪い建物だと思う程度。醜悪とまでは思わない。

しかし、楳図かずお氏・・・

▼今度は全面ウンコ型の家建設だ…楳図かずおブチ上げ
http://www.zakzak.co.jp/gei/200901/g2009012907_all.html

いや、それは流石にどうよ?
・・・・・・・・・・・・な、気がします。

日本の場合、どうも都市景観というのは総合的な美しさみたいなものを無視してここに作りはじめてトンでもない景観が出来上がって、それがまぁアジア的カオスさをかもしていて、特徴的なのかもしれませんが。
例えば、パリなどは高さとか建物の色とか、塗るペンキの色まで条例で決まっていて、実は大変なのだそうです。新しい建築に挑戦できるものはせいぜい公共物のようなすごく大きなものなようです。そのお陰でパリの街は落ち着いた絵になるような景観になっているわけです。

ただ、この街の住人の清潔度数は酷い。建造物を美しく造りあげるはいいが、公共の道はゴミだらけ、犬のクソだらけ、路駐だらけ。汚らしいことこのうえない。パブリックな場をなんと心得る。と怒り心頭に達してしまいたくなりますな。清掃という件に関しては公共心というものの欠片もない。公道はごみためである。
流石に反省しているのか、面白い車に乗った掃除屋さんがいる。犬のクソ掃除屋というのがマジにいるのだ。飼い主に責任持って回収させろよと思うのだがそういう掃除屋さんが失業してしまうのでよろしくないとかいう話を以前聞いたことがある。

この点では街の清潔度は日本はキングオブではあるな。家の前は家人が清掃する。ゴミ放置も昔より増えたがそれほどでもない。犬のクソは持ち帰らないと人非人扱い。夏は埃立たないように打ち水までする。欧州から帰国するといつも清潔ですごいと思ってしまうのである。

カオスで不調和で看板だらけの眼が回る都市景観はしかし清潔である。というのもある意味、しごく個性的なのかもなのですよ。