『ルポ貧困大国アメリカ』 堤未果 新自由主義の時代 グローバリズムの二つの顔 米国と中国

ずいぶん前に読み終えていたこれ

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

かなり評判になっていたらしく、既にもうあちこちで語られ尽くしていると思う。
アメリカがブッシュ(猿)によってどれだけ酷いことになっているかリスト本だ。どれぐらい酷いかってのはあのハリケーンカトリーナ騒動の時にもよく判ったんだが、これを読むと更にもっと酷い。酷すぎて酷い部分しか書いてないんだろうなぁとか思わなくもない。なんせこれだけ酷かったら抗議行動とか文句垂れや主張が激しく過激方向に行きそうなもんだが。あの国では。
しかし、それでもここで書き出されていることは事実だろう。というのも、この手の情報が日本ではなかなか得ることが出来ないある種のフィルタリングがあるかもしれない。つまり、アメリカ情報を得るツールはしょせんアメリカのエスタブリッシュな階級の人々の世界だけで、故にこれらの世界を知る機会がないとか、陰謀論的にブッシュ的アメリカ政治の方向へ行こうとしている日本の財界の意向が情報を云々とか、とにかく情報の貧困さ甚だしく、ここに書かれた光景について、どれぐらいのバイアスがありどれぐらいの真実があるのかは判らない。しかもこの著者後半で筆が滑って「だからけんぽー9条を・・・」とか言ってる段階で、アンチ小泉な社民的左巻きスタンスの馬脚を現してしまっているので余計に信頼性を失ってしまったからなんだが。その辺りの露骨なまでの恣意的なやり方が左のジャーナルな人々の欠点だな。出身朝日新聞だし。

まぁそういうバイアスがあるにしても、ライフラインが民営化されていく経済大国での恐怖の光景は現実に存在する。医療保険の縮小された世界の話は、この著者が指摘しているだけでなく、アメリカ人が別にそういう目的で書いたモノでないふとした光景にまで描かれているので。つまり医療における対応の貧富の差は歴然とある。

またイラク問題。ブッシュ君が大好きなイラク戦争。兵士不足を補う為に移民を利用していくそのやり方。戦争で起きた様々な障害、精神的な障害も含むケアの放置。そういう問題が例えば、電波なアフリカ系米国兵士が起こした殺人事件とつながっていく。実のところかなり身近な問題である。

メタボ。サブプライムローンといった昨今よく聞こえてくるアレ。それらを含めて、今現在起きているアメリカの問題を書き出しているという点でやはり好著であると思う。そして読み終えた時はげしく薄ら寒くなる近未来的ホラー本でもある。なんせ小泉君の方向はまさにこれを目指しているからでもあり、未来の日本がこうなったら嫌だなという、反面教師にした方がいいよ本でもあるのだが・・・・。まぁ「けんぽー9じょー」などと種明かしをしなけりゃ、もっと素直に読めたのが惜しいな。これ読んだからって社民党には票入れないよ。

ところで、まぁアメリカは経済の怪物、資本主義の怪物と化して久しいわけだが、ここへ来てもう一つの怪物が力をつけはじめていて世界問題となっている。
中国様である。
こちらも資本怪物化していて、アフリカなどは相当アレな状態になっている。海外の渡航情報などを見ると最大級に危険な地帯がぞろぞろある。ダルフール関連一つ追っても、Googleアースの破壊された村々が累々と。それをマークした炎の記号は日を追う事に増えスーダンを埋めつくしている。近隣諸国もトンデモないトコが沢山ある。これらアフリカのエンドレスな内戦の責任の一つは中国であり、中国はアメリカが中南米でしてきたことの足跡を辿りつつあるので、まるでアメリカをカリカチュアライズさせているかのような存在になっている。しかもタチが悪いことにこの国は一党独裁である。批判勢力がない。今存在している、共産主義国家の欠点は軍事と結びつき尚且つ一党独裁化するという辺りだな。日本の共産、社会主義系の党が軍備反対するのは、もともとの共産主義がとんでもなく暴力的だったことを忘れているというか、むしろその危険性をある程度認識している点かもしれないとか思ってみた。

で、中国。アフリカでは様々な政権と密接に関わっているようで、この方のブログでその一端を知ることは出来る。
○横浜日記
http://shinriji.exblog.jp/d2008-04-03
川島真という政治学者さんのブログ。中国外交なんかの本を出している方だ。4月頭に南アフリカに行ったらしいがそこで見聞したことがメモされている。中国や台湾の経済な中国人がかなり南アフリカには多いようで。

アフリカのメディアは一般的に中国に辛口だというが、それはおそらく反政府の立場をとるからであろう。反政権、反政府となると中国批判になるのは、中国が政府や政権の中枢に集中的に接近している姿を反映している。だが、メディアが複数あり、プロ政権、アンチ政権に分かれている場合には、前者が中国支持となる。

ちょうど、マラウイ大統領が中国を訪問中なので、その動向をネットで調べる。
地方政府とマラウイ政府との間の経済協力が模索されている。四川省マラウイ政府は灌漑をめぐって調整。深圳では港湾建設などが相談されている(河川交通の港湾か)。地方政府に対外支援ばらまくところが中国の特徴。中央政府だけ見ていては、中国の対外援助はわからない。

など興味深い。

アフリカの問題は南米同様、遠すぎて見えないんだが、経済的援助の反面、アフリカにおける人道的問題を産み出している中国の動向は気になるところではある。共産主義国家的経済グローバリズムという新興存在というか、アメリカの資本主義の悪いところを継承しているかのような中国と、伝統的なグローバリズムアメリカと、世界の地図がだんだんと、かつての東西問題のごときなにか二分されていくのか、それは判らないんだが、経済という怪物の-私はその分野が一番暗くて判らないんだがー恐ろしさを感じなくもないです。

こういう本もあるんで。

死都ゴモラ―世界の裏側を支配する暗黒帝国

死都ゴモラ―世界の裏側を支配する暗黒帝国

イタリア・ナポリ周辺に本拠を持ち、中国などアジアを含む世界経済の裏側を牛耳る、新興の巨大犯罪企業マフィアの恐るべき実態を暴き、告発するノンフィクション小説。イタリアで百万部を超えた大ベストセラー、欧米各紙誌絶賛。
昨年末、アメリカなどでも多くの推薦図書やベストセラー・リストに列せられた。

イタリアの国際暗黒組織、カモーラ。ファッション業界と癒着し、アジアと結びつく国際的組織。その実態に迫るノンフィクションではあるんだが、なんだか文章が、それってば今流行のジェイムズ・エルロイ様ですか?文体で読みづらい。アマゾン書評でもそんなこと書かれている。エルロイ文体はエルロイだからこそいいんで、あの散文詩をこの手の本に応用されると困る。そういうわけでまだ読破出来ていません。でも怖い本だよ。ルポ貧困大国とあわせて読むとこの世を儚んでしまうかもしれないです。

そしてまぁ、本日のこれ↓
一日一チベットリンク運動/Eyes on Tibet

上記のように、いまや貧者の味方であった、つまり圧政下で苦しむ大衆の味方であったはずの「共産主義」が中国では圧制の手段化している、そんな中国。大量の人民を養いたい中国。資源豊富でエネルギーの供給源で軍事施設もありますよ核燃料も作ります地帯であるチベットを手放したくない中国。宗教なんぞはしかみたいなもんで駆逐しないといけないとほんとは思っている中国が引き起こしているチベット問題。言論統制も、迫害もどんどんするよな状態と化している中国。

当然、日本の左巻きの人権擁護知識人がいやがりそうなことをしているんで、ついに左な人々が立ち上がった模様。
○14世ダライ・ラマ法王と中国政府首脳との直接対話を求める声明文
http://gaiasymphony.com/tibet.html 
湯川れい子池澤夏樹谷川俊太郎、イルカ、ミッキー吉野加藤登紀子・・・・あーあれだ。典型的な団塊の世代的な左な人々ですなぁ。団塊の世代からわたくしの年代まではこの手の左な人が多い。どうも「いちご白書をもう一度」な夢でも見てるんじゃね?的に、なんか集いたがる。フォーク歌う。マルクスさいこーとか思っている。ほんとに理解してるは疑わしいのがほとんどだがそうだ。政府とか体制が嫌い。大人が嫌い。「日本人は・・・」などと外側からモノを言う。そういえばうちの師匠濱ちゃんは団塊世代ど真ん中なんである。彼はひねくれ者だったらしく「楯の会」から勧誘が来たという経験の持ち主である。「楯の会」の勧誘受けた経験のある神父ってどうよ? 流行に流されないというか、流行に鈍感に過ぎなかったという方が正しいかもな、世間から意識がどっかで隔離されてるような師匠なんで、まぁ色々言うことが面白いけど。

閑話休題
で、まぁ、右っかわのちゃんねる桜辺りに集う人々が早々と中国を「人権」問題で訴えていたが、ここへ来て人権問題の真打ち登場!という按配。いや、これは嬉しいですよ。なんせ典型的な左の人(特に団塊)のキーワードは人権、エコ、地球市民、平和、友愛と連帯。まぁそんなの好きである。そのすべてをクリアするダライラマの主張に賛同しないはずがない。やはりここは彼らにこそ登場してもらいたかった場面ですな。常々それらに脊髄反応する彼らが、今回は妙に速度が遅かったなというのはまぁこの際置いておいて。日本政府と、それらの関連機関が嫌いな彼らも、流石に日本政府とそれらの関連機関が嫌う共産主義的なるものの権化中国に遠慮しちゃうにはあまりにも許容範囲を超えたのであろう。当然だな。彼らが嫌いな「米帝」のフレームをなぞりつつあるのが現代中国だからなぁ。昔、チベット側の抵抗勢力にCIAが関わっていたとかそういうので、アメリカ嫌悪脳が発動して二の足踏むかと思っていたが。流石にそんな冷戦構造脳ではもう世界は語れない。

かくして、かつてのイデオロギーは容喙しつつあり、経済怪物対貧困人民の闘いにこれからなるんだろうか。


ところで、団塊君が好きなあのキーワードにもっとも反応する、政治に微妙に関わるのが好きな坂本龍一は上記の賛同者には名を連ねていない。細野晴臣の名はあるのに。細野さんも坂本教授も、激しく昔からアジアンな少数民族音楽などに興味を持っていて、わたくしなどはお世話になりましたよ。いいアルバムをいくつも出しておった。ゆえにそうした文化が消滅の危機にあるなら当然動くだろうなと。しかし坂本さんは、湯川さん達とは同調せずに動いているみたい。

ナニしてるかというと・・・・
チベット
http://tibet.cocolog-nifty.com/blog_tibet/2008/04/alan_60b3.html
■「坂本龍一×チベット人歌手Alan」の微妙〜な感じ

チベットをずっと昔からヲチしているブログ。時々こっそり覗いてお世話になっておりましたよ。
んで、坂本龍一は群れるのは好きじゃないらしいが、なにやらそれ以外に大人の事情があるようです。これらはあくまでも推測。


上記ブログで紹介されていた、坂本龍一が音楽を担当した映像。チベットの47年。
けして無視してるわけではなく、むしろ最大の意識を持っているとは思うんだけどね。

ただ、坂本さんの例がほんとかどうかは判らないが上記ブログの記事によると、中国経済と結びついた企業からそこはかとない圧力が様々な音楽関係者とかその他諸々にかけられているようです。ここでも中国が手にした経済という名の怪物が日本の日常に深く関わって来ているという光景に改めて薄ら寒くなってくる。それは世界の他の国々も同様であろうと。

いやはや。近未来がなんだか怖いんですよ。


因みに上記ブログで活動紹介。

チベット
http://tibet.cocolog-nifty.com/blog_tibet/2008/04/417_4e05.html
【イベント】4/17@宇都宮「チベット人と支援グループが語るチベット問題緊急セミナー」

主催者よりご案内いただきました。

チベット人と支援グループが語るチベット問題緊急セミナー」 を開催致します。
   日時:2008年4月17日(木)午後7:00〜8:30
   場所:栃木県宇都宮市中央1丁目1番15号
      宇都宮総合福祉センター 9A研修室(9F)
      玄関を入り左にお進み下さい
      (市中心部、オリオンスクェアから1ブロック
               南隣の10階建てのビル)
      →地図はこちら
   参加費:¥500 予約不要

上記セミナー終了後 ≪追悼会≫キャンドルライティング

   日時:2008年4月17日(木)午後8:45〜9:10
   場所:カトリック松が峰教会内の広場
      快く場所を提供して頂きました(教会への駐車不可)
    
   キャンドルはこちらで用意しますが、
   ご自身でも持参したい方はお持ち下さい。
 
   主催:アムネスティ・インターナショナル宇都宮グループ

興味深い人はどうぞ。
松が峰教会内といえば師匠濱ちゃんが昔いたトコだな。神父修業中に。大谷石の素敵なトコですよ。

政教分離的なのが好きなわたくしは政治的な活動を教会がやるのは好かんのだが、チベット問題は信教の自由が絡むので、まぁ支援するのは当然だよ。宗教弾圧って嫌だよ。
それに追悼式だけ教会というのはなんかいいよね。祈りは共有されると思う。宗教の枠を越えて祈れるのはいいよ。