香水

ムハンマドの合間に読んでいた。カダレを読み終ったんで、再読。カダレも再読だけどこれも再読。なんせ下流ニートだから本が買えないんだよ。

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

ある人殺しの物語 香水 (文春文庫)

Amazon.co.jp
舞台は18世紀のフランス。町は汚穢(おわい)にまみれ、至るところに悪臭が立ちこめていた。そこに、まったく体臭のない男がいた。男にないのは体臭だけでない。恐ろしく鋭い嗅覚と、においへの異様なまでの執着以外に、男には何もなかった。
物語は至高の香りを求めて、めくるめくにおいの饗宴が繰り広げられる。ドアノブのにおい、石のにおい、花の香り、動物のにおい、果ては目立たない人のにおいに至るまで、ありとあらゆるにおいが立ちこめる。登場人物も、究極のにおいの美少女以外は、主人公も含めて恐ろしくグロテスクである。まさしく魑魅魍魎(ちみもうりょう)。裏道、闇、疫病、屠殺、汚濁…にもかかわらず、なぜ本書からは恐ろしく魅惑的な香りが立ちのぼってくるのだろうか。

パリには複雑で洗練された味わいがベースにあるように、生ハムやチーズのすえたようなにおいが鼻を突いても、この町で、人を引きつけてやまない魅力がグロテスクなのかもしれない。ストーリーも舞台も登場人物も、実に巧妙に展開している。一度手にとるとテンポよく、一気に読んでしまう。読者は主人公とともに限りなく奥深い嗅覚の世界をさまよい、陶酔させられることだろう。

本の内容はアマゾンの解説の通りだ。
匂いを通じて世界を知るという設定が面白い。この時代のフランスは正直いってばばっちい。三銃士の面々も、マリー・アントワネットも、ロベスピエールも、麗しのサン・ジュスト君もみんな臭かったんだろうな。未だにパリにいくと汚いなぁとか思う。通りがばばっちい。犬の糞だらけ。車はがんがん行き来しているので大気汚染も酷いと思う。でもしばらくいるとそんなばばっちい環境の通りに面したオープンなカッフェーなんかでカフェオレとバカでかくて歯が折れそうなサンドイッチを楽しんでいたりするわけで、人間慣れである。
匂いというのは慣れる。島の家など半年ほっとくもんだからかび臭いんだが、今じゃ判らない。お客様には申し訳ないが、かび臭いのがわが家の特徴的匂いだよ。ちょいとずっといるとアレルギーが出そうだけどね。
まぁ、とにかく革命期頃のパリはフラゴナールの砂糖菓子みたいな絵に代表される甘くてかわいらしいイメージとは裏腹に、女性のあのやたらに結い上げた髪は一週間も固めたままほおって置くもので、中はシラミだらけであり、天然痘の流行で人々の面はあばただらけであり、衛生学の面からいうと後進国このうえない。いくら乾燥しているからといってやはり衛生面ではやばすぎる環境だったと思う。現代インド並かもしれない。
こんな感じ↓
http://www7a.biglobe.ne.jp/~sakusha/indoryokouki/index.html
インド旅行記らしいがすごいぞ。印度人。
そういう環境で香水文化が発達する。香水だけでなく匂いに関する色々なものがあったりする。めくるめくアロマな世界を探求しているおフランス人は多いようで、紅茶まで匂い付きのブレンドが多い。マリアージュなんぞにいくとどれ買っていいか判らなくなるほどだ。「エロス」とか「ルネッサンス」とかなんだかヘンテコな名前がついていてそれを喚起するブレンドになっちょる。エロスは夏にふさわしく、ルネッサンスは緑茶入りであった。「なんちゃらノエル」とかいうクリスマス限定ブレンドは、女性の血の道症に効きそうな漢方薬みたいな茶であるよ。
リネン屋などにいくと安眠ハーブを詰め込んだ枕などもある。あまりにいい匂いなので買ってきたが匂いがきつすぎて安眠どころか、著しく睡眠を妨害されてしまった。暴力的に臭いのでたんすの中に突っ込んでやったがそれでも臭う。気が狂いそうだった。
どうも、フランスの乾燥した気候と、湿度の高い日本とでは匂いの質が変容するようだ。香水なども日本向きのを買わないと臭くなる。シャネルの5番とか19番など鼻がひん曲がるよ。もっともフランスでもシャネルを頭からかぶったとしか思えないおばはんと朝ご飯の場を共にしたが、ありゃ食欲をなくしますって。
香水は人の肌のペーハーによってもたぶん匂いの質が変容するんじゃないかと思う。自分に合ったのをみつけるまでけっこう色々試したけど、むつかしい。なんせ店先で試してもその後、匂いというのは時間と共に変化するんで、元の匂いと違うものになってしまう場合が多いようだ。
やはり調合師というのは一種の芸術家だと思う。

どうも書評ではない話になってしまった。まぁ上の解説に尽きるんで。