シノドス

第11回世界代表司教会議がローマで始まった。世界中の司教が集まり会議するカトリック教会の行事です。業界用語で「シノドス」といいます(変換すると「死のドス」とかで嫌)要するに各支社の支社長が本社に集まり会議しているという感じ。ただ世界規模なので世界情勢が色々反映されます。
子供を泣かす怖い面構えのベネディクト16世が就任して初めてのシノドス。こんな記事が。

バチカン司教会議に中国代表が欠席、関係修復は足踏み
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051003id21.htm

【ローマ=藤原善晴】ローマ法王ベネディクト16世に招待されたカトリック
系中国人聖職者4人の出欠が注目されていた第11回世界代表司教会議が2日、
バチカンローマ法王庁)で始まり、4人は重要行事である初日の開会ミサに
姿を見せなかった。

 ローマ法王が招待していたのは、中国政府公認だがバチカンが認めていない
「中国天主教(カトリック教)愛国会」の「司教」2人と、バチカンに忠誠を
誓う地下教会を中心に活動する2人の計4人。

(中略)

しかし、カトリック系通信社「アジアニュース」代表で、中国の教会事情に詳
しいベルナルド・チェルベレラ神父は、「中国側の4人に連絡をとったが、皆
出席したがっていた。しかし、バチカンによる外交努力だけでは出席は難しい。
出入国の自由を認めよという世論などの国際的圧力が高まらなければ、中国政
府は決断しないだろう」と語り、中国代表の出席は困難との見方を示す。

中国問題が早くもバチカンで浮上。
中国は基本的に宗教はコントロール下に置く政策で、中国の政治コントロール下におくことが可能なカトリック教会、プロテスタント教会イスラム教会、仏教寺院などが存在し、それらは厳重な監視下にある。それ以外は弾圧され、地下に潜っているそうです。カトリック教会の場合は公認教会にはバチカンからの介入を赦さない中国独自の教会「中国天主教愛国会」が存在していることになり、バチカンと結びついているのは地下に潜った地下教会です。またキリスト教関係ではプロテスタントも含めかなりの数のキリスト教の地下に潜った信者がいるということです。しかしそうした非公認の宗教関係者は中国当局から警戒され、捕縛の対象となり、虐待や酷い拷問すら受けているというニュースは度々耳にします。

中国のキリスト地下教会の指導者・張栄亮さんが拷問・虐待の危機に直面
(アムネスティ・インターナショナル 04.12.14) 

http://watch.blogtribe.org/entry-2658c5406d752b4378ba14e13239a458.html
国 名: 中華人民共和国
ケース: 虐待及び拷問の恐れ/健康への懸念
対象者: 張栄亮

有名な地下教会の指導者、張栄亮は12月1日河南省で警察に拘禁された。彼は
拷問を受ける危険がある。彼は糖尿病で、必要な医療処置や、扱いを受けてい
ないとの懸念があり、この状態では拘禁の過酷な扱いに耐えることができない
のではと危惧される。

張栄亮は、キリスト教会の中国の指導者である。キリスト教会は中国最大の家
庭教会ネットワークで、中国方城教会の母会でもある。彼は、住んでいた鄭州
市徐砦村で拘禁された。教会関係者によれば、警察が村すべての家屋を調べ、
キリスト教のDVD、その他資料、張栄亮が海外団体と接触したことを表す外国機
関や外国人との繋がりを示す写真などを没収した。外国人との交流は中国では
投獄の理由となりうる。彼の妻と子供たちは身を潜めている。

張栄亮はすでに彼の信仰のために5回も投獄されており、合計で12年である。そ
の間にも、幾度も拷問を受けた。彼は「中国家庭教会信仰告白」の共同著者であ
り、中国の宗教についての国際的なメディアのリポートにも載っている。これが
彼を逮捕と拷問の危機にさらしている。

日本では小うるさい存在などと度々右巻きな人々に疎まれるアムネスティですが、しかし彼らは一貫して世界中の「人権侵害」をウォッチしている機関です。右巻きな人々が訴える北朝鮮拉致問題、人民への人権侵害も彼らのウォッチ対象です。そして上記のように中国政府による人権侵害の事例を多数ウォッチし続けています。

教皇ヨハネ・パウロ2世の悲願は中国の教会の復興でした。多くの信者さんの苦境はバチカンに多数入って来ているのでしょう。公然と批判こそしないにせよ、憂慮の対象であるということは度々耳にしてきました。しかし中国は先の葬儀のときもあきらかなようにバチカンにはかなりの警戒心を抱いています。台湾との交流も気に入らないということで、確かに共産中国から見るならばバチカンは嫌な相手です。しかし信者達は政治的なこととは関係なく信仰を持つものも多いのです。どのような時代でも権力者達の思惑によって酷い目に遭うのはそうした弱い立場の者たちですね。

本来ならば情報を集めやすい立場にある日本のカトリック教会は隣国の政府による現在進行形の人権問題にはかなり冷淡なのでぜんぜんあてになりません。この手の話は教会で聞くことはなく、日本のカトリック教会の中枢の聖職者はいつも日本の政治話や国内の過去の話ばかりしているので呆れてしまいます。特定の政治思想にあきらかに洗脳されているとはいえ、そんなことは政治の専門団体に任せて、カトリック教会同朋と多くの宗教者が今まさに同時進行で命を落としているという現実に目を向けて欲しいものです。かつてわが国でも宗教を理由に弾圧された過去があるが故に、他人事ではないこの現実ですが、バチカンとしては日本にまったく期待すらしていないのか何にもいってこないんでしょうか?それとも中国様の怖い人々を敵に回したくないヘタレ司教ばかりなんでしょうか?日本人相手ならまず身は安全ですからねぇ。身内である日本人や身内のカトリック信徒やバチカンに対しては激しく攻撃的なのに。(・・っといけない。また意地悪な嫌味がつい・・・。)

とはいえ人質を握られている状況でうかつに攻撃するわけにも参りません。いたずらに中国共産党を刺激するのもよろしくはありません。彼らにとっては「宗教」は国内のチベットの独立問題、イスラム教徒の問題など、地雷が満載なわけですから必要以上にびりびりしています。本音を言えばチベットイスラムも独立!宗教解放!とか言いたい所ではありますが、そんな簡単なことでもないでしょう。中国共産党が倒れたらそれはそれで大変なことになるとも思います。ですのでここはバチカンの老練な手腕に期待したいところですね。まぁ、これを機会に日本のカトリック教会も少しカトリック同朋やチベットイスラム、他のキリスト教や宗教信者さんの苦境にも目を向けて欲しいとは思います。


昨日のエントリのコメント欄でもちらっと書きましたが、訒小平の開放政策下の中国、西安近辺の街に行ったことがあります。やはりあの辺りに行くとイスラムの人々の姿が目立ちます。屋台をやっていたり、内陸部から出稼ぎに来たのかなぁ?という人も沢山いましたね。学会でいったので、その合間に漢中という街を散歩してきました。ここでもイスラムの人は多い。イスラム寺院なども存在していました。(おそらく公認の寺院でしょう)父が物好きなので「イスラムのモスクが見たい見たい。」などと申しましたので出かけました。共産主義下で宗教を守るのは大変なんだろうとか、そういうところで頑張っているのはえらいとか、父は何か感銘を受けたらしく案内して下さったお坊さんに喜捨をしておりました。しかし公認教会の存在など知らなかったので、今思えばあの寺院は政府の手厚い庇護下にあったんでしょう。しかし、そういう公認教会のお布施の経理はどうなっているんだろうか?
また、通訳をしてくれた女性が「自分はキリスト教徒だ」と私に教えてくれましたが彼女も公認教会の人だったのでしょうか?それとも当時は宗教には少しゆるかったのでしょうか?

今の情況はどうかわかりませんが、当時から中央アジア少数民族中国当局との衝突はおぼろげながら伝わってはおりましたね。現地で、イスラム教徒に殺された役人。というニュースが流れていましたが、その時のニュースでは、少数民族に定められた数の子供以上の子供を生んでいるということで産児制限指導に行った役人が殺されたということでした。「イスラムでは子供は神の授かりモノなので産児制限など罪深いことは出来ない」という言い分でした。中国人側は「我々も産児制限に協力しているわけでお前らはまだ少数民族ということで優遇されているんだぞ」(人数は忘れたが3人ぐらいはオッケーだったと記憶)と、子供の問題一つとってもぶつかるようでした。

◆中国の火薬庫?

東トルキスタン共和国
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/syometsu/higatoru.html

新疆省は55年に新疆ウイグル自治区となったが、「自治」とは名目的なものに
過ぎないもので、東トルキスタンには人民解放軍新疆生産建設兵団という屯田
兵が21万人も入植し、ソ連との国境警備とともに民族独立運動の再発防止に睨
みを利かせつつ、大規模な農場建設や資源開発などを行った。最近では屯田兵
民営化されて、「中国新建集団公司」という従業員93万人の大企業グループに
なっています。

20世紀に消滅した東トルキスタン共和国ソ連と中国という大国の狭間で悲しい運命を辿ったようです。そのウイグルでは以前から絶えず反政府運動が生じ、中国は彼らをテロリストとして弾圧を繰り返してきました。チベットと同じ構造ですね。ついに切れたのか「宣戦布告」。

ウイグル独立派、中国に「宣戦布告」か
http://www.sankei.co.jp/news/051001/kok086.htm
1日付香港各紙によると、中国新疆ウイグル自治区の独立派とみられる男3人が
中国政府への「戦争開始」を宣言する様子が録画された映像を、英BBCテレビ
がこのほど入手した。

 映像は、中国がテロ組織と指定しているウイグル独立派組織「東トルキスタン
解放組織(ETLO)」が送ったものという。事実なら、ウイグル独立派組織と
して初の宣戦となる。

アムネスティはこうした問題をかなり前から監視していたみたいです。

http://www.amnesty.or.jp/ 

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中国:テロリズムとの闘いを弾圧の口実にしてはならない
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AI Index ASA 17/032/2001  本日、中国政府が国内の「テロリズム」取り締まりに国際的な支援を求めたが、 これにより新疆ウイグル自治区イスラム教徒の少数民族への弾圧が強化され、 すでに憂慮すべき同自治区の人権状況が更に悪化する危険が高まったと、アムネ スティ・インターナショナルは警告した。  中国政府代表によるこの要請は、中国当局が新たに新疆ウイグル自治区での 「テロリストと分離主義者」の活動を鎮圧する作戦行動を開始したという最近の 報道に続くものだ。同自治区当局者は作戦の主な対象が「民族分離主義者」であ ることを明らかにしている。  「中国当局は『テロリズム』と『分離主義』の区別を無視している」とアムネ スティは指摘した。「事実、分離主義は広範な活動を含むものであり、大抵は平 和裏に反対や異議を表明するものに過ぎない。政府の管轄外でイスラム教を説教 することも破壊活動とされている。」  国民の安全を保障するため各国政府には適切な手段を講じる義務があることを アムネスティは認めるが、中国当局が9月11日の事件を利用して新疆ウイグル自治 区のイスラム教徒の少数民族を「分離主義者」や「テロリスト」、「イスラム過 激派」として、厳しく弾圧することを正当化しようとしている点をアムネスティ は憂慮している。

トルキスタンウォッチャーのジャーナリストのページ。

東トルキスタン独立運動封じ込めを上海機構に手伝わせる中国
http://oshida.exblog.jp/i4

中国当局の発表するものへの突込みが満載状態です。

トルキスタンの問題・・正直他国の問題で、尚且つ情報が掴めません。双方の言い分にはそれぞれ双方の理もあるんでしょう。中央アジアの混乱が吉とでるか凶と出るかもわかりません。ですからどちらに与するかなどということも判断しかねますが、少なくともチベットウイグルが体験していることは、中国が我々を非難している過去そのものとはいえます。現在進行系のこの事態は憂慮したくはなります。

中国の動きは依然気になりますので、時々ヲチしていないといけませんね。
ところでこのきな臭いニュースを「朝日新聞」だけが報じず、尚且つ

高所綱渡りギネス挑戦者、空の上から国慶節を祝賀
http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200510020092.html

・・・などというのんびりしたニュースだけ伝えていたというので、2ちゃんねるの人々が激怒していました。「中国当局の対応は致し方ない。」或いは「ウイグル民族は気の毒だ。独立を応援」と思うにせよ、綱渡りなぞのニュースよりは、きな臭いこの情報の方が気になります。こうした動きは、一連のイスラム問題、インドネシアのテロや、石油問題とも間接的にもに関わってきます。朝日新聞は・・・本当に使えない新聞に成り下がりました。それとも「裏が取れなかった」からなのでしょうか?一応BBCからの情報だということで他の新聞は報道したようですが。