読みたい本とか

今日は蒸し暑かった。なんとなく頭の働きが鈍い。
眠れないのでポール・ボウルズの「シェルタリングスカイ」を発掘したので読む。

シェルタリング・スカイ (新潮文庫)

シェルタリング・スカイ (新潮文庫)


作中で出てくるサハラでお茶をしたかったという姉妹達の逸話が悲しくも美しいが、いかんせんボウルズという作家はどうもデカダンスなので、読んでいて疲れる。暑い夜に読むには暑すぎる。これこそ島にもっていって読みたい本だが、なんというか目的もなく異郷にあるという時に抱く一種の浮遊感というのは確かに存在するし、それに永く晒されると自分自身が蝕まれていく感じがするというのもわかるが・・
かつてジャワ島を旅した時、一晩かけてバスに乗ってたどり着いたジョグジャカルタの街で泊まるホテルがなく途方にくれたことがあった。たどり着いたホテルはオランダ人の屋敷を改築したホテルだったが、そのホテルの中庭のテラスでだらだらとしている白人の目のしごく濁った様を見てここには永く逗留したくないと思った。そういうやりきれないような腐っていくようなデカダンスをボウルズには感じる。同じ異郷でのデカダンスならマグリット・デュラスの一連の書があるが、彼女の物語には根底に生きることがある。アメリカ人というのはこういう異文化に腐っていくような感覚を覚える話が好きなのかなぁ?「地獄の黙示録」とか、「モスキート・コースト」とか、みんな破滅するよね。しかしおフランス人のデュラスの場合、腐りながら冷静に巻き返しをはかる様な強靭さを感じるよ。女性と男性の差異なのか、それとも民族的なものなのか?
ジョグジャカルタでは結局、中国人の華僑が経営するホテルに移った。インドネシアイスラムの国だ。真夜中に突然声の割れた拡声器からアザーンが鳴り響く。真っ暗で静まりかえった街の上をアッラーへの祈りが響き渡る。「やれやれ」と眠りにつこうとすると今度はいきなり銃声が聞こえる。それも泊まっている部屋の真横で。なにやら怖くて布団をかぶって寝てしまった。次の日ホテルの人に問うと、隣のおっさんが猫を見ると銃をぶっ放すので困るとぼやいた。確かにまったく異質な世界がある。こういうところに永くいるとやはり腐っていくんだろうか?自分では判らない。
しかし、今のように気持ちが少し鬱気味のときにボウルズを読むとどうも不快だ。お陰で変な夢を見た。
・・・なもんで、口直しに違う本でも読もうと本屋にいったよ。
以前から読みたいと思っていた山口昌男の「挫折の昭和史」を探しに行ったんだな。
「挫折」の昭和史

「挫折」の昭和史

「敗者の精神史」と対で出ていた本だが、こちらは買いそびれていた。大分前に叢書になったらしいので探しにいったがなかった。満州のあのモダニズムの時代、アールデコの都市、或いはアールヌーボーの都市などと評して語る山口の視点を読みたかった。そして、原爆記念日終戦記念日と続くこの時期に、石原莞爾という面白い人物が暗躍したあの時代の話を読みたかったのだが、本屋さんにいっても本が無い。悲しい。
望月峯太郎の「万祝」の5巻が出ていたのでそれを買ってすごすごと引き上げてきたですよ。
で、本日の書評。
「万祝」は面白い。
万祝 5 (ヤングマガジンコミックス)

万祝 5 (ヤングマガジンコミックス)