奄美振興予算が29%カットされたという話について(追記有り)

ツイッターで拡散されていた普天間基地移設絡みの奄美振興ネタ

http://twitter.com/nekota_nyan/status/13010139933
徳田氏の自民党議員の次男がテレビで言ってたけど民主党は徳之島への経済援助を29%もカットして兵糧攻めにしてるらしい。29%カットは徳之島にとって死活問題。で、兵糧攻めで徳之島をヘロヘロにしてから餌を出して基地誘致をする作戦らしい。これが鳩山総理の友愛政治。

これを受けて「民主ひどス」という批判や「ソースは?」等の質問が起きていた。
出典はおそらく4月12日に行われた国会の鳩山首相と谷垣自民総裁という党首討論だと思われる。
http://www.youtube.com/watch?v=yNPJ73fQa1A#t=4m22s

奄美群島在住の人間は既に随分前にカットの話は知っている。徳之島と結びつきの強い徳田毅議員(自民)はそのブログで激しく怒っていた。
徳之島だけではなく奄美群島の振興予算が29%カットされたことで、群島内の各役場は頭を抱えることになった。が、お上の決めたことなので仕方がないという感じではあった。

奄美振興について

正しくは「独立行政法人 奄美群島振興開発基金」というらしいよ。長いよ。

詳しくは下記資料をどぞ。
奄美群島の振興開発について(第97回奄美群島振興開発審議会)
http://www.mlit.go.jp/common/000020119.pdf

奄美群島終戦後沖縄同様アメリカに支配されていた。米国さん的には役立たずな土地なのか、徳之島をはじめとする鼻息荒い島民に手を焼いたのか、沢山の離島に関わるのがメンドーだったのか、沖縄よりもずっと早くに返還されたが、その時間空白に加え、本土から離れた離島であり、台風被害がはなはだしいという事情からその不利的状況の為、産業振興と社会資本整備の為の予算が設けられた。
これは他の離島も同様で、例えば沖縄同様米国支配が長く本土から遠い小笠原には「小笠原振興」、また返還が遅く、未だ基地負担を強いられている沖縄には「沖縄振興」、本土には近いが、奥尻五島列島などのような、離島として不利な環境である島々には「離島振興」というかたちで、それぞれの事情に添った形で予算が降りている。

■国土交通調査室がまとめた様々な離島政策
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&ct=res&cd=4&ved=0CB0QFjAD&url=http%3A%2F%2Fwww.ndl.go.jp%2Fjp%2Fdata%2Fpublication%2Fissue%2F0635.pdf&ei=PcraS7C2EcugkQXXwJF8&usg=AFQjCNHPicwxGK526ji7XBiywzhyBu0QMA&sig2=LUsPfwU-2CDS4DlpARwCbQ

奄美は沖縄に次いで人口が多い。本土から大変に遠いという不便さと歴史的事情から、インフラが立ち後れていたことで奄美振興として独立した予算が組まれた。前述の通り、本土から気が遠くなるほどの遠洋に浮かぶ小笠原もアメリカに長く支配されていた島であり独立した予算が組まれている。

奄美振興の場合、国が基本方針を決め、鹿児島県が5カ年の開発計画を考える。尚、これらは国土交通省の管轄である。

★削減された奄美振興予算

奄美振興は政府の苦しい台所事情の影響も受けて年々右下がりではあった。しかし民主政権になって事業仕分け食らったのか、激減した。これについて奄美大島の大島新聞のブログが「奄振予算3割減の衝撃」という連載記事を組んでその事情を分析している。サイトではなくブログというところが奄美の新聞屋さんっぽい。
この連載記事では数字をあげて、どのように変容したか様々に分析している。連載を全部追ってみると面白いですよ。(ちなみに、この新聞屋さんはリベラルなので反自民。で、この「大島新聞」は国家的に大変なことが起きても「アマミクロウサギ、ネコに殺される」が一面のトップを飾るというすごい新聞である)
追記注*ずっと大島新聞ブログだと思っていたが、どーもよく読んでみると違うかもしれない。しかし色々なことをよく調べている。

http://blogs.yahoo.co.jp/satokokyu/30880936.html
■奄振予算3割減の衝撃

2006年 326億 
2007年 314億  3、7%減
2008年 300億  3,2%減
2009年 287億  4,3%減
2010年 205億 29,0%減 ←民主党政権

国土交通省側の要求では15%減であったが、政府は29%削減とした。

この削減比は他の離島振興と比しても大幅削減である。

 特定地域振興対策関係(倍率)
 奄美振興  0,71
 離島振興  0,81
 小笠原振興 1,00
 半島振興  1,00

まぁ、ツイッターで拡散されているように奄美だけが大幅に予算を削られたのは事実ではある。

★これは民主の兵糧攻めなのか?

奄美は保守基盤が強い。だからいじめだという意見もある。「だが、ちょっとまってほしい」とは左系の新聞屋が使う常套句であるが、奄美振興政策の予算の使用目的を考えると、ちょっとまて、とは言いたくなる。

奄美群島の小さな島に引っ越して来て驚いたことが一つある。電話帳を見て気がついたのだが、奄美群島、建築関連業者大杉!
横浜は住宅が多いのでそれなりに建築業者も多いのだが、電話帳の職業比率で建築関係がこんなに占めているのは異常だぞと思ったことがある。
奄美群島はいわゆるハコモノ行政的な弊害が異様に目につく。美しい浜をぶちこわしにする護岸工事。うちの島でもコースタルリゾートなどという壮大な建築系の計画が持ち上がったことがある。島の観光の目玉である百合が浜を有する長い海岸をリゾート的ななにやら整備をするとかなんとか。今の浜で十分美しいのに人工的な手を加えようというのかということで反対が起きた。結局計画を縮小し、島の中心地に面した浜にヨットハーバーなどが作られ、美しかった自然の砂浜も人口的な砂浜になってしまった。人の手の入っていない浜は美しいのだが、そこの浜は何か寒々しく、水質もイマイチな印象である。ヨットで入ってくる人もそんなにおらんし、しょぼいってんでほとんど使われていない。
無駄な公共事業の一例である。

奄美群島振興の予算編成の資料をネット漁っていて見つけた。うっかり保存し忘れたんでもうたどり着けなく、紹介出来ず申し訳ないが、大幅に削られていた予算の多くはいわゆるハコモノ、コンクリとあとは土地改良政策。他の離島政策より奄美は削られ幅が大きかった。

護岸工事のように永続的に島の繁栄に繋がる建設ではなく、建築関係社の糊口を凌ぐ為の工事というか、なんだかそれが異様に多い印象。
確かにインフラが遅れていた時代建設は必要であった。そしてその時代に建築仕事を担った地元の会社は整備されたあとは仕事が無くなってしまう。本来はインフラがある程度整備されたあとは、産業発展と生活に反映する継続的な支援に転向すべきであるのだが、建築維持だけの仕事では建築関係者はそんなに数は必要とされなくなる。収入を絶たれては生きてはいけない。
結局、その為に仕事を作らざるを得ないという悪循環にある。
奄美群島ではこうした公共事業と住民反対の衝突が多い。観光業人と、農業人と、建築人の利害がむき出しで衝突している。

奄美振興は国土交通省管轄であり、使用目的が土木事業でほとんど占められていた。また大きな事業は本土資本や鹿児島の業者などが請け負っている。島の業者はその下請けで実は島に実入りも少ない。

そうした問題は以前から島人達から指摘されており、国土交通省管轄から外し、地方行政(この場合は各島々の地方自治体)に目的を決定させてほしいと願い出ていたりしていた。

鹿児島の民主議員が削らないと約束していたって、国家的判断では奄美振興のこのような利権温床のひも付き予算が仕分け喰らったのは当然であろう。

ただ、それに変わる問題。例えば奄美群島のガソリンは高いとか、航空運賃があまりにも高いとか、運送費用が高く、島の物価は高い(島のAコープで買い物すると紀伊国屋成城石井で買い物したのか?と思う)など生活物価がとにかくかかる。当然であるがデフレの恩恵はない。もっとも、買い物したくとも買い物心をくすぐるようなモノがないので無駄遣いをしないのと家賃安いんで、都会ほどお金を使う機会もない。うちの島人は昼飯を家に帰って食べるので外食もそんなにしないし。

島の平均収入は日本でも最下位の部類に入るんじゃあるまいか?というくらい安い。徳之島は年収190万とかあったぞ。都市部の半分以下。下流な私でも平均以上ではないか。これはおそらく高齢者比がとても高いからであろう。徳之島は長寿の島で有名だし。つまり、地方自治体としては持ち出しの方が多い。

奄美群島ではかねてからこのようなリスク解決としての航空運賃値下げや燃料費援助などを願い出ていた。民主党は公約にそれを盛り込んでいた。それが通らなかったことについては離島の生活への理解が足りないと、民主党政権は批判されてもいいとは思う。

しかし奄美振興で削減されたのは「自民利権とずぶずぶだったゼネコンや土建業への兵糧攻めと理解した方が正しいだろう。つまり、国家的観点から見るならば無駄の事業仕分けであったとは思う。兵糧攻めというよりは必然の結果だったのかもしれない。

基地問題は別レイヤーで考えた方がいいとは思う。

ただ、民主になって予算が大量に減らされあげく、基地誘致の話が来ると心情的にムカつくのもこれまた人の自然というモノで・・。

奄美群島の課題
奄美振興の削減は島の多数の建設業者にとって打撃ではある。既に必要ない業種などというのは酷ではある。確かにこれでは基地を餌にされると釣られたくなる人も出てくるだろう。で、建築業者さん達が「ハコモノ批判はもうお腹いっぱい。仕事くれ。」という気分になるのは判るというか、うちの親父もハコモノの親分、ボスキャラ、いわゆるゼネコンだったからなぁ。

しかし離島インフラにはまだまだ課題がある。例えば高齢者が多数居住する島のバリアフリー化の工事事業などは、これからより大きく求められるようになると思う。また、畜産業者も多いので畜舎から流れ出る汚水の整備管理等の工事なども考えられるとは思う。環境保全の為の建設支援などを要求するという方向転換。地味な仕事をこなして行く方がいいんじゃね?と素人なのでつい考えてしまうけれど。

この手の課題はナニも奄美に限ったことではなく、日本全国の問題だろう。島だと小さいし、産業の種類が少ない為に、可視化されやすいのだろう。

まぁ、奄美振興は用途と金の動きを変えて、本土資本が持ってくのではなく島民の業者に確実に反映される形に変えるべきだとは思うので、国の偉い人はそこまで考え、用途の予算組んでほしいです。

ただ、飛行機代とか船運輸費用とかガソリン代は安くしてほしいな。なんせ奄美群島には高速道路はない。うちの島に到っては国道もないんだよ。ガソリン税の恩恵は限りなくない。ま、高速も国道も全然必要ないけど。

◆◆(追記)
ええと、兵糧攻めについて岩国が基地問題でやられたという話を今なんかネットうろうろして読んでそれがなんだったか、わかんなくなりました。ついった友達のつぶやきだったかも。仕方ないのでぐぐりました。

▼米軍再編と岩国 「兵糧攻め」で取引とは
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200612030220.html

断ったら予算削られたという話。まぁ当時は自民政権ですから民主政権の仕業ではありませんが。

岩国では反対したら予算が削られたのですが、徳之島の場合、反対運動などが高まる前に予算編成が済んでおり、基地移転の交渉などはすこぶる水面下でまだなんだかよく判らない内容の感触的打診なだけの時であり、あまり連動はしてないとは思います。

あと、奄美振興予算削減について、その予算内容が他の離島振興などと比して土木建設事業ハコモノ予算が多いのか、また人口一人当たりの予算の比較などを含めたデータも必要ではありますね。同じくらいで奄美だけ削られていたならばまぁ怒りたくもなりますが。


徳之島三町長は結局、鳩山氏と会うことにしたようですが、町長達は「反対をお伝えする」つもりのようです。今後、民主党政権がどのような予算を組むかは要観察の必要性はある。
なんせうちの島にも、とばっちりくるんだよな。徳之島と一蓮托生なんざんす。ちゃんと監視しないとな。


ただ、youtube で鳩山氏が谷垣氏に対し「あなた方のように札束で顔をはたくような政治はしていない」と言っている影ではこんな風景も

南日本新聞特集 
▼揺れる徳之島 米軍再編と鹿児島
http://373news.com/_kikaku/beigun/tokunosima/01.php
25日、3町長が待つ天城町役場の町長室に入ってきたのは、牧野議員と民主党須川清司内閣官房専門調査員だった。牧野議員は「普天間の米軍に来てもらう。上京して官房長官に会ってほしい」。
 徳之島が選ばれた理由は「沖縄に距離が近く、立地条件がいいこと」と説明を受けた。「米軍が来ても沖縄よりいい条件にする」と牧野議員は強調した。

この記事を信じるならば、どう考えても札束ちらつかせてるとしか思えないよな。
上記連載記事にはかなり期待中(ってよく読んだらあとの連載は終わっていて有料閲覧だった・・・orz)

兵糧攻め云々では現時点では批判しないが、嘘ついたり、地元理解の為の手続きや礼を欠いたやり方についてはマジに怒っているので、今後も沖縄や徳之島に酷いことをするかどうか観察を続ける予定。既に沖縄に対しては県外移設が全然守られておらず責任を果たしていない時点で、駄目なわけだが。連休中にいく予定だそうだが、土下座しに行くのかねぇ。