わたくしは何故テレビ様に酔ったのか

新しいテレビ様は画像美麗で、中世の欧州の平民達が教会の大伽藍の尖塔アーチ構造に支えられた天上のめくるめく高さやその壁面のステンドグラスから零れ落ちる色とりどりの光に天上世界の美を体験し「ほぇ〜。なんてまぁ、美しス。なみあみだ」などと感動してるのと同じぐらい感動していたわけです。

しかし美というのは人の目を晦ませる毒を持つものでもあり、天上の美と限らぬ、悪魔的な側面も併せ持つ。ゆえにテレビ様もその法則に従い、見ているものを文字通り眩ませる。かくしてこちとら動きもしてないのに三半規管がおかしくなる気分を味わった。

でかい映画でもそうだけど、動きがある画像というのは時々酔いますね。
その昔「宇宙博」というなんだか科学博のおこぼれみたいな博覧会があったんですが、そこに「すげーでかくて視野に端っこが入らないよ!」というスクリーン映像を売りにしたパビリオンがあった。ビルの壁一面が映像で、それに対してかなり鋭角に座席が設定されていて、平たい床にある椅子というよりは壁に取り付けられた椅子に座ってみるという感じになる。なので宙に浮かんだような位置に座っているという感じ。そこでは「空を飛ぶ」映像(主観的視野)が流れていて気分的に気持ち悪くなりました。ナイアガラの滝を移動しながら上から見てるのとかだった覚えが。

足元がスケスケなヘリコプターに乗っても気持ち悪くならないのだが、映像だと酔う。視覚の動きと体の動きがマッチしないと酔うのですかね?

ところで、以前のテレビ様は4:3比の画面であった。今度のテレビ様は誰が決めたんだ?この変な矩形は?という横長比率である。この場合の眼球運動は垂直運動ではなく水平運動が多くなる。そうすると中心となる一点から遠い端っこの存在が4:3比画面よりも把握しなくなる率が高い。
テレビぐらいのサイズだと4:3の画面ならでかくてもそこんとこ気にならない。なのにたいしてでかくもない横長テレビでも気持ち悪くなる。

人間の眼球運動は水平が多いと端が処理落ちしやすいとかあるのかな?しかしもともと人間の目はどちらかというと水平方向に強いはずなので、無意識的に擬似空間に置かれた錯覚を起こし、前述の端っこが見えないでかいスクリーン的な現象に置かれていたのかもしれませんです。

で、『天地人』を試しに見てみたが、もとよりデジタルを想定していたのか端っこが入った構図で画面が作成されている。無意識に4:3比で区切った構図と横長の構図との差異を比較してみていたら激しく疲れてしまったので途中で観るのやめました。
ただ、横長比率でも4:3比率でもそれなりに絵になるように撮っている工夫がしてあるのが偉い。

日本の伝統的な襖絵とか屏風絵は、それが全てでひとつの構図を持った絵にもなり、個々、一枚一枚でも構図が計算されている。それと同じ技がここに生きているのだと感心することしきりであった。

ところで、我が家に来たテレビ様は液晶パネルが3ミリほど右下がりである。90センチ幅ぐらいで3ミリというのは微妙で、画面見てるぶんには気にならないのであるが、なんか微妙に気になる。パネルの取り付け工事はいいかげんなんだな。イタリアとかうちの島とかはそんな感じなんでまぁいいんだけどね。コンセントカバーとかもっと斜めってるんだよ。