コンカツというものがあるらしい

小学生の頃からの友人で翻訳家のTと久しぶりに電話で話した。

どーも、島から帰って色々な友人と会いたいな〜と思うも、生来の出不精、電話不精、手紙不精、メール不精がたたり、結局会えずに島に帰ることが多い。かような昔からの親友ですら2年に一辺会うなんて気の長い関係になりつつあります。かくして元気で留守がいい状態な友人の数が増えるばかり。そのうち忘れられちゃうかもな。

とはいえ、久しぶりに話すと昨日会ったみたいに話せるのも友人のよさで、色んな話をだらくさとした。今度、会おうねということで、会って話せばいいんだけどだらくさと話し込んでしまう。

翻訳家のTはわたくし同様、冬のキリギリスのように生きている。出版ギョーカイに寄生する立場として同志である。そしてこの出版不況にあえぎ「明日のことは判らないよ」とほざくハンフリー・ボガードを殴りたくなるような不安を抱えて生きている状態であった。
なんせTが取引していた会社が倒産しちゃって大変だったんである。すごく昔に「今、やってる仕事なんだよね」と聞いた翻訳モノの仕事が頓挫していたりという大変なことになっていた。

現在、翻訳ものは不景気の出版業界の中でも特に悪化している。海外エージェントと翻訳者という二重の支払いが尻込みさせてるとか、読者が海外モノをあまり読まなくなってきたとか色々。白水社とか国書刊行会って偉いな。

そういうわけでわたくし同様明日はどっちだ状態の彼女は「コンカツ」にいそしむことにしたらしい。え?なにそれ?と聞いたら、「就活」に倣って「婚活」だそうだ。つまり結婚相手探しですな。

びんぼーで明日のことは判らない状態であるが、共同生活者を作り、生活コストを下げるのがいいのだとか言ってました。確かに一人暮らしって無駄が多いもんなー。

そういうわけで「半分お見合いみたいなことしてるのよ」「色々な知り合いに結婚相手を捜してるといっとくと色々な人を紹介してくれるんだよね」と言っていたのだが、相反して紹介されるのは、どーも「世の中で最も私と縁遠いというか合わなさそうな人ばかり」だそうです。単に彼女の好みが五月蝿いだけなんじゃ?と思って詳しく聞くと、確かにそれは数多いる知人のなか(変人も多い)にもそんなヤツはいないってなぐらい、共に生活するのは難しそうな人である。というか彼女の文化と接点がまるでない。

お見合いというのは経験したことがある。仲介者はどーもナニも考えてないのが多くて、このわたくしに銀行マンとか議員とか、趣味が「スキーとテニス」なんて書いてる人などをぶつけてくる始末で、「もっとヤクザな仕事の人を紹介して欲しい」と訴えたらその後、紹介がなくなった。どうもカタギな親達の世界にヤクザな世界人(出版とか、げいじつとか、学者、変な研究者)がいないのが敗因。妹の世界(映像メディア)は「おねえちゃん。そういう人がいたらわたしが結婚してるよ〜」とぼやいていたので、そちらも駄目そうである。

そういうわけで仲介者がナニも考えてないだろうというのはそうだろうな〜と思った。

さらにこちらも既に子供なんか考えられない肉体となってしまった年齢層で、まだ一人もんっていうんだから、他人から見たらすごく変な人に間違いない。そうでなかったらとっくに殿方にプロポーズされていそうなもんである。そういうわけで結婚なんて今更よくわかんないな的になっていたんだが。

その友人が婚活してるって聞き、そしてこっちはガッコの専任とか、アカデミーポストなんぞあったらいいよな、みたいにシュウカツしようかな?と考えていた矢先に、婚活なんて思いもよらなかった言葉に、ぎょっとしたというか。

松本清張の小説読んでるとあの時代は知らん殿方といきなり結婚して同居するってのが当たり前の時代だったのであるが、それが想像がつかない。

知らん男と暮らすのはいいが、そこには必ず性の問題が生じる。子供を産むという共通目的があるんならまだいいが、わたくしのように子供も産めないとなると、まったく知らん殿方との性生活なんてぞっとする。どーもそういう感じになってしまうので、コンカツの前に横たわる「性」の問題がためらわせてしまう。第一、それ以前にこんな年齢のおばはんとの性生活ってほうがキモイだろうしな。殿方的に。

どっかに「性の問題はいいから、同居して暮らしましょう」なんて枯れた殿方がいたらいいなぁとか思うが、流石にそれは虫が良すぎる。仲のいい友人♂と暮らすってのも楽しそうだし、プラトニックな愛ってのもあると思うんだけど、結婚ってそんな都合のいい関係ではない。同居して生活していくって、性の問題だけでなく。いろいろと生臭いことだしな〜。と、もやもや。

かくして、ヤクザなげいじつ家の未来は暗い。

ボーナス貰って真面目にこつこつ生活していけるようなひとに、わたしはなりたい。

世の下流な皆様、共に頑張りましょう。

・・・・・・専任のクチ、どっかありませんかね?