『神秘結社アルカーヌム』トマス・ウィーラー  トンでもミステリ

ああ。そうだ。先月給料が入ったときにこれだけ買ったんだよな。あまりにアレげで書評書くの忘れていた。

神秘結社アルカーヌム (扶桑社ミステリー)

神秘結社アルカーヌム (扶桑社ミステリー)

前に紹介したんだが、コナンドイルとラブクラフトとアレイスタークロウリーが登場するってんで、既にそれじたいでアレげな方向が想像はついたのだが。
しかも扶桑社。この扶桑社の文庫のミステリーというとビデオ屋で言えば、売れ筋商品と抱き合わせで買わされるような三文ハリウッド映画、ドラクエと抱き合わせで買わされたクソゲーみたいなホラーとかミステリが多い。ハヤカワや創元推理文庫がなるべくなら避けて通るようなのを堂々と刊行している。モダンホラー界で嫌われているジョン・ソールを沢山出していたりね。王道からずれたのとか、三文的なペーパーバック世界を愉しみたいときはお薦めなんである。そしてそれに混じって時々パトリシア・ハイスミスとかケラーマンが出てたりするので実は侮れない文庫である。とにかく節操がないお陰か、モダンホラーでのちに頭角を顕すような人のも出版したりするので、面白いのが混じっていたりするのだな。

そういうわけで一見アレげでも、違うかもしれないと期待してみようかと思ったがやっぱりアレげ・・つまりオカルトマニアの駄本というか・・・まぁ作者は放送作家だそうだから物語を作るのはそれなりにうまいんだろうが、神秘主義世界「ファン」の位置から出てないような代物であった。表面的なマニアというか。マジなマニアではないというか。

神秘主義世界のカウンターカルチャー的なアレイスター・クロウリーの扱いもお約束的な位置に置いて・・つまりまぁお・カルトな人はクロウリーをけっこういい位置付けに置きたがる。王者クロウリーってな感じなんだが、ほんとはただの電波だろ?

エレファス・レビィとかマダム・ブラヴァツキーなどという神秘主義者の名を出してはくるが、単なる小道具に過ぎず、突っ込んだ世界観が希薄。つまり神秘主義世界を舞台小道具として集めてみましたって程度。ラブクラフトの扱いも・・これでは泣くぞ。しくしくしく・・・という按配であった。

作者は放送作家かなんかだそうで、ゆえにドラマ作りはそれなりにうまいので、サスペンス的に読める物語にはなっている。しかしいかんせん、ファッションとしてのオカルトでしかないんで、道具仕立てがなんかつまらないというか、ディープなものをお求めの「マニア」には向かないです。しかしライトにオカルトチックなモダンホラーテイストを愉しみたいという向きにはいい娯楽になるかもしれません。

ところで、クロウリーってブラックサバスの元ボーカリストオジー・オズボーンが好きだったなぁ。クロウリーの歌まで作っていた。他にジミー・ペイジもはまっていたという噂があった。ペイジの別荘はクロウリーの屋敷だったとか。んで、「ペイジは黒魔術にはまっていて、ジョン・ボーナムの死はその性だ」とか、「ロバート・プラントが子供を亡くしたのはジミー・ペイジの黒魔術の性であり、そのお陰でメンバー間が不和になった」とかへんてこな噂を流されていた。あと、ビートルズのサージェント・ペパーズのジャケットに写真がある。並んでいる人の一人がクロウリー
60年代70年代のカウンターカルチャーな人々に人気で、映画監督のケネス・アンガーなどが信奉者として有名。
そういうわけで実はけっこう使い古されたモチーフ的な存在ではあるが、今となってはなんとなくノスタルジックな印象があって、ちょっと懐かしい気もした。ゆえにこの小説、昭和30年代もの海外ホラー版みたいな小説なのかもです。