宗教表現を巡る問題が起きたらしい

ジョジョの奇妙な冒険』という漫画はタイトルだけ知っていてしかも人気があるらしいということも知っているが読んだことがない。絵がどうもあまりに個性的に菜っ葉臭いというか、すごいクリーチャーな印象を受けてしまうために食わず嫌いなだけである。とはいえ、絵印象のくどさではジョジョに匹敵する『ベルセルク』もはじめ手に取った時は嫌な絵だなぁ。と思ったのに、気がついたらまんまとハマり全巻買って、しかも次巻がなかなか出ないと怒っている始末である。くどくて個性的な絵の漫画というのは病みつきになる。同じぐらいすごい下手なんだか上手いんだか判らないくどい絵の漫画の『ヘルシング』も絵がへたくそ!とか思いながらも巻を重ねていくうちに絵がすごくイイ!などと思ってるわけなんで第一印象なんぞいい加減なものである。そういうわけでジョジョに根強いファンがいるだろうことはよく判る。

そのジョジョが世界的な危機に陥ったらしいというニュースが出たらしいというのをこれまたブログ界隈で取り上げられていて、共同通信社が勝手に騒いでいてマッチポンプらしいという話を、まぁ今、読んだわけである。伝聞ばっかでわけ判んない書き方をしたが、つまりことの実態が今一つよく判らんのである。

とりあえずこんなニュースがあったらしい↓

2008/05/22-16:16 人気漫画「ジョジョ」一部出荷停止=イスラムめぐり不適切表現−集英社
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200805/2008052200696
 コミックと文庫版で計136巻出ている人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦著)とアニメDVDの中に、イスラム教に関する不適切な表現があることが分かり、版元の集英社などは22日、原作とDVDの一部を出荷停止にしたと発表した。
 問題になったのはDVD「Adventure6 報復の霧」。悪役が読む本にコーランの文章が書かれているとしてアラビア語圏で批判されたため調べたところ、映像化の際、内容が分からないまま文字を使ったことが判明。このほか原作にも、モスク内で戦う不適切な場面があった。

へぇ。それならカトリック教会を冒涜しているかのごとき『ヘルシング』なんかマジやばですよ。そういや同じくどい漫画の『ベルセルク』もある意味メシアのパロディだよな。そんなことで自粛されたら困りますが、幸いにして神父ですらケケケと読むような按配な我、ゆるゆるなギョーカイ、野暮なコト言ったら内部から怒りが殺到するであろうっつーか、私が怒る。マジに怒る。続きの巻が読めなくなっては困る。ただでさえどっちの漫画も続きの巻がなかなか出ない。早く出してくれ。

で、このニュースへんじゃね?と色々なブロガーさんが取り上げていた。
この方がその疑問点を追及していたのでチェック↓
○UGS 日記のこもれ火
http://d.hatena.ne.jp/SHIKAIKILYOU/20080525/p1
■[ニュース][漫画]ジョジョOVA問題について共同通信に電話をしてみた

つまり情報がマッチポンプであり、わざわざニュースになりそうなネタを創作してみたのをニュースにしたという按配? 潜在的危険物を真性危険物に作り替え、んでもって爆弾を落として国家間の危機を煽ってきたのをニュースにしたというべきか?

例えば、おフランスの古典漫画。『TINTIN』この漫画シリーズは植民地主義の色濃く、例えば『BLUE LOTUS』では日本人は出っ歯で眼鏡で極悪に描かれている。大戦前の漫画だからしょうがない。のらくろでは中国人「匪賊」は豚である。手塚漫画でも『ジャングル大帝レオ』で黒人は土人扱いで、流石にこれは現代はやばいとどうも自粛させられているようだが、80年代でもしばらくは発行されていたよね。どうもしばらく前の世代の漫画では他民族を無知ゆえから来る偏見とか、どうも貶めて描くようなのはざらであったが、子供心にそれはそれ、架空のものとして読んでいた。つまり空想的世界として頭の中で変換されていたのだ。現実のアフリカ人と、レオのアフリカ人とは一致していなかった。今の時代の漫画でもそうである。だからへらへらと『ヘルシング』を読めるのである。どうも日本人の概ねの人はそんな感じなのではないか?「これはフィクションではない」などと文頭で主張している『ダ・ヴィンチ コード』は別な。そうじゃなかったらペーパーパックミステリーとして楽しんだんだが、本気にした馬鹿が大老発生した困ったシロモノだった。

今のところ色々な人の調査では共同通信が、ネットで評判になっていると書いている実情は実は2チャンネルでありがちな掲示板にコピペ貼り付け小僧@ムスリムがいるらしい。ということとか、つまり「2ちゃんねるの同一人物のコピペ爆弾を外国人が見て、ネットですごい話題!とかいってあたかも日本人の総意みたいにニュースに書かれてしまってる」みたいな。ネット時代の落とし穴と言うヤツですかね?

例えば、今回の事件を受けてこんなエントリがあった↓
○見えない道場本舗
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080526/p3
■[漫画][時事][宗教]フィクションだけどこれ大丈夫かな?と、外国人に「聖☆おにいさん」のことを尋ねたら大問題になりそうで困ったことについて

私はこの漫画を知らなかった。ここでは一部掲載されているがこの部分を読んだだけで笑えた。まぁギャグ的にありがちというか内輪でもこういう話をするよ。自分的にはあまり新鮮味はないかも。今、イエスがいたらブログ書きまくりでアルファブロガーかも。でも、ユダというしつこいファンを怒らせて炎上。アカウント停止処分を受ける羽目に。とかね。色々考えてみたりしますよ。ゆえにまぁ冒涜などとあまり思わない。この部分から察するとどうも作者のキャラに対する愛が好けて見えるし。勉強してあればあるほどたぶん面白いだろうと思う。無知から来る偏見と侮蔑の方が腹が立つ。文句を言わないからとナニしても、何を言ってもイイというわけでもない。本気で馬鹿にする場合はとことん実情を勉強してから来いよなとは言っておく。2000年の歴史と蓄積された教義、そこで交わされている数多の議論。現代世界の各国に散らばる組織の実情、信徒と聖職者、修道会の活動等を全部調べ尽くしたうえでな。・・・・つっても私もよく知らないけど。笑)

で、このブログエントリでは、「おともだちのオタクのアメリカ人?学者に話したらトンでもないことに」という話が出ているんだが・・・・まぁ最後までちゃんと読んでみてください。
最後まで読まない時点でアメリカ人?の反応のカ所読んでて、あああ。アメリカ人って頭堅いのナ。とか思った私は、まんまと・・以下略

ただ、日本の漫画を外国人がどう受け止めるかは慣習の違いやギャグの文脈を共有してきた文化がどうであるか?で反応も違うだろうなぁとは思う。
ま、欧州では『ヘルシング』『ベルセルク』も人気だそうで。意外と世界の人々も同じように漫画と相対しているかもしれない。ただフランスでは、カトリックへの揶揄なんかは受け入れられているが、逆にTINTINのような植民地主義的な漫画は眉をひそめられるらしい。ムハンマド問題でのフランスの態度と、植民地主義への批判的態度が一致しないのは、この国の歴史と現代の問題が見えてはじめて納得出来るわけであるが、ただカトリック教会への風刺の激しさをそのままイスラムに転用した時点で文化摩擦が起きたのがあの事件で、ま、フランス在住でキリスト教文化を中心とした宗教比較文化の本をいくつか書いておられる竹下節子さんは、「カトリックはおとなしいからなんでも言える」的なことをどこかでおっしゃっていた覚えがある。つまりまぁ、冒涜してもテロられないというか、そもそも信者が教皇バチカンを批判したり、そのことで議論出来る風通しのよさがある。だからこんな事件で即謝罪なんてメディアとしてどうなの?とか言われるかも。

イスラム問題も、一部の原理主義者以外はおそらく似たようなもんだと思う。インドネシアで知り合ったムスリムは相当すちゃらかだったし。こっちがたしなめるほどいいかげんと言うか。ラマダンに酒飲むなよ。
んで、仏教に関しては我々が一番よく知っている。坊主丸もうけなどと揶揄しながら葬式には坊主呼ぶし、優れた僧がいたら単純に尊敬し有り難がって話を聞く。流石出家なさった方は違う。などと評したりするけど、檀家の金で好き方題してる坊主には容赦しない。ブッダに関しても風刺漫画で登場することはよくあるよね。
まぁ元ネタのジョジョを読んでないんでなんとも言えないけど。

とにかくわざわざ事を起こすような、記者のあり方ってどうよ?的な事件として今認識されているようである。
集英社さんも大変だなと思った次第。自主規制で面白いものが読めなくなってしまう方が長い目で見たら損失かもしれません。頑張って欲しいので応援する。
・・・というか、そこからの仕事の締め切りが目前なので今は応援してもらいたいっす。