フランスのライシテに関する本の紹介

どうも本日は聖週間の性でカトリックネタ連発ですびばせん。

ええと愛蔵太さん経由で知った本。というか他でも色々取り上げられてた気がする。
○愛・蔵太の少し調べて書く日記
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20070404/bmrss20070404

書評日記  パペッティア通信:★ イスラム女性は、なぜ仏の学校でスカーフを着用してはいけないのか? 工藤庸子 『宗教 VS 国家 フランス<政教分離>と市民の誕生』 講談社現代新書 (新刊)

「不可分の非宗教的な共和国」という国是をもつ、フランス。 そこでは、公教育の現場からは、軍や警察まで動員して、十字架が撤去された。 この史実こそ、イスラム女性のスカーフを公教育から追放する動きが、フランス人の間であまねく是認される、最大の原因であるという。 アメリカのフィルターを通しがちな日本では、フランス理解も偏見にまみれがちである。 この状況に風穴をあける入門書、といってよいのではないだろうか。

書評日記  パペッティア通信:★ イスラム女性は、なぜ仏の学校でスカーフを着用してはいけないのか? 工藤庸子 『宗教 VS 国家 フランス<政教分離>と市民の誕生』 講談社現代新書 (新刊)(2007年03月21日)

↑「つまらない本しか出さない講談社現代新書」というブログ主の偏見が吹き飛んだそうです。

もとの書評はここ↓
http://plaza.rakuten.co.jp/boushiyak/diary/200703210000/

で、この本↓

宗教VS.国家 (講談社現代新書)

宗教VS.国家 (講談社現代新書)

けっこう言及している人が多かったので以前から気になってはいたが、上記のブログの解説を読んで、なんとなく「なんだ周知のことじゃね?」と微妙に気が削がれてしまった。むしろブログ主が「偏見を吹き飛ばしたと」と目から鱗的に驚いている光景に実は驚いてしまった。どんな偏見を持っていたんだろう??そっちが実は分らんのはマイノリティ故なのか?どうなのか?ちょっと動揺してしまいました。

どうも「人権の敵は教会」という単純化もまた危険性を孕む。元本を読んでないので、その辺りのことは判らないが、このように受け止めてしまう人がいるってのも困りものだ。そんなに単純化された内容なんだろうか?教会はほんとにずっと人権を否定してきたのか???

ドレフィス事件などでも教会内の保守とリベラルが対立していたように教会の聖職者達自体が揺れ動いていた時代でもあり、その辺りは説明されているのか?等々。保守とリベラル、バチカンと現場聖職者達が対立することが多々ある複雑怪奇なカトリックぎょーかいをただ「教会」とひと括りで説明してしまうのは危険でもある。

また、現代のフランスが完全に脱教会化しているかというと、慣習部分では未だカトリック的なものを引きずっている為に起きるイスラムの不満は書かれているのだろうか?完全な政教分離の癖にクリスマス休暇とか、イースター休暇とるのか?をい。とか。イスラムの人だってイスラムの大切な行事の時休暇にしてもらいたいだろう。
また、イスラム側の「公」への無理解からくる衝突。政教が一致した宗教故にフランスの政教分離原則が理解出来ない故の要求。フランスに同化しない移民達。
教育現場から宗教教育を締め出した為に起きている倫理観の低下。若い人々の宗教への無関心どころか侮蔑意識などはよく耳にする。宗教的無知からカルトにはまり易くなっているという話も聞いたことはある。(日本と似てるかも。免疫がないんでハマりやすい)
信教の自由は公的な場において、結果として「等しく」弾圧されることになるが故の、宗教者の「人権」はどうなるのだ?等々。色々疑念はある。シスターから修道服をはぎとる「公的な場」というものとは何だろうか?という疑問が以前からちょい念頭にはある。

ただ、書評に書かれていない、歴史的な経緯、つまり遙か以前の時代から、聖と俗は戦ってきた。

上記エントリの叙任県闘争もその一つだ。教会にとっても、俗の権力者による聖職売買や親族登用等の腐敗を生み出した歴史を鑑みるなら、俗の権力が教会内を脅かすのはいいことではない。現代において、世俗の権力が、多数の信徒を持つ教団を政治利用しはじめたら(票田にしたりとかね)怖いのは我々もよく知っている。故に双方の為にも政教分離の原則はやはり必要であるとは思う。フランスのライシテはその点で非常に参考になる。

なわけで、例えば、完全な公教育の現場ではない私学において、その創設する組織が宗教団体であればそこで自由に教えればいいだけの話ではあるわけで。まぁ、私学は高いんで、貧しい信仰者達が保証されないってのはそれもどうなんだろうとは思うけど、それは宗教団体がなんとかしないと。

まぁ、個人的には宗教締め出しへの疑念はいくつか感じてはいるが、原則は政教分離の方が弊害が少ないんではあるまいかとは思っているけど。どっちもどっちではあるなぁ。難しいね。

で、現代のフランス社会自体の混乱に関してはま・ここっとさんが詳しい。
さまざまな局面から現場を知ることが出来る。
http://malicieuse.exblog.jp/

また、様々なカトリックぎょーかい関連伝統文化と、現代のフランスやEUの政治問題に詳しい文筆家の竹下節子さんのサイトも非常に参考になると思う。著作の紹介もあります。
http://ha2.seikyou.ne.jp/home/bamboolavo/