沈黙の罪

いま現在苦しむ人がいる。過去に苦しむ人がいる。
宗教は、(我々のギョーカイも含め)そういう弱者に目を向けよと教えるわけです。
最近ではswan_slabさんが現代史の中でその存在を無視され続けてきた水俣病患者の歴史を追っていました。

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http://d.hatena.ne.jp/swan_slab/20060503/p1
沈黙の戦後史 昭和28年〜34年 日本社会が水俣病事件にふたをするまでのプレリュード 
新しい50年にむけて その3

eireneさんも取り上げておられましたが、素晴らしいシリーズなんで読んで欲しいなと。
エントリでも言及がありますが、ユージン・スミスという素晴らしい写真家がいて、彼の撮った水俣病患者の写真、風呂の中で水俣病の子供を抱きかかえる母親の、ピエタ像のような美しい映像はその美しさゆえに残酷で悲しい。
その写真は今も記憶に鮮明に残っています。
http://www.pku.edu.cn/life/xuehui/yasp/pic-sheyingdashi/eugene%20smith/Tomoko%20Uemura%20in%20Her%20Bath.jpg
私たちのみじかにも今も苦しむ人は大勢いるわけです。そういうことは知っておいて欲しいと思いますね。
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さて、バチカン中国対決の陰にも多くの宗教弾圧に今も苦しむ人がいるのですが、我が国のカトリック教会の人権問題を扱う機関はこれに関してはずっと沈黙したままです。宗教弾圧に絡む他国の政治に口出したくないのかといえばそうではなく、こういう問題は取り上げています。

フィリピン:アロヨ政権下で殺された教会関係者のリスト
http://www.jade.dti.ne.jp/~jpj/campaign/jp_campaign.html#under-arroyo
2006年2月24日フィリピンではアロヨ政権下で主流の野党、左派、共産主義者、「軍の冒険主義者」による政府 転覆計画があったとして非常事態宣言が出されました。この宣言は3月3日にまもなく解除されました。この出来事にいたるまでの間に多くの人々の人権が抑圧され、フィリピン政府によって政治的殺略と鎮圧がされてきた背景があります。また、解除された現在においても、表現の自由や平和的な集会の権利の制限がたびたび懸念される状況下にあり、人権の尊重の必要性が叫ばれています。

うわ。アロヨ政権って酷いんだ。トンでもない政権だ罠。
ここでは教会関係者と共に「共産主義者」が弾圧されています。
対テロ政策の一環で女性活動家が殺されているようです。[これはひどい]
とはいえ、フィリピンの政治には疎いので状況はよく判らないんで(調べてみないことには最終的な判断は下せませんので)なんともいえませんが、まぁ弾圧されたり殺されている人がいるのは事実でしょうね。
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ところでなぁ、こういう場合はすかさず声明を出す。けれど隣の国の共産主義政権下で行われている宗教弾圧には依然沈黙を保ったままとはどういうことだ?

・・・・・・・・このダブルスタンダードは何故なんでしょうかね?

社会の中で苦しむ人がいる。そういう人権問題には、右とか左とか関係なしに苦しむ人がいたら応援するつもりですが、この組織を信用しないのはこうした矛盾点が多く見られるからです。ですのでこの組織を通じた運動は無視しています(同じ人権組織ならアムネスティが一貫している)が、カトリックと名乗るならばそのダブルスタンダードはやめて欲しいし、ダブルスタンダードのままでいたいならば「中国共産党日本支部」とでも名乗るべきでしょうね。それならば筋が通ります。

人権問題を取り扱うはずの「正平協」は中国で苦しむ人々に対して沈黙しています。
教会が第二次世界大戦下に於いて沈黙をしたこと。そしてそれに対し前教皇は謝罪をしたこと。
教会の罪として「沈黙の罪」というモノがあるのです。
正平協」のそれはまさしく「沈黙の罪」であるといえますね。

これからどうなるのか判らない地下教会の人々や他の宗教の人々の問題。バチカンは積極的に動こうとしているわけですが、隣国に住む我々には情報すらまともに入って来ない。マスコミも。同じように情報を握っているだろう教会関係者も沈黙し続けている。これらの現象はいったいなんなのか?とは思います。

中国問題を考えているうちにすごいむかついてきたですよ。