東京から取材団が来る。
私の取材ではなく家の取材。海辺にすんでる人ん家を取材したいそうで。うちは家を建てる時、沖縄の某建築家に頼んだ。条件は安藤忠雄みたいなシンプルなのを建てられる人。家はキャンバスなので住んでいる人の変容でどうとでもなる。しかし細部を作り込み過ぎるとそれが不可能になる。なもんでシンプルが一番。情緒性は家具で演出すればよい。よーするに日本の昔の家屋の発想だよね。床の間の花や掛け軸が季節を伝える、庭の景色がそのまま家具になるような。
そういう考えがあったのと、海際なのでコンクリ建築でないとダメなもんで、そうなると選択肢は安藤忠雄のような無駄のない建築だ罠。頼んだS先生のファイルに茶室の写真があり、それで決めた。自然光を意識している建築家はよい。

なもんで、まぁ独特の家が出来た。その性でこういう取材が来る。しかし使う人間に情緒がないので機能性の方が優先され、殺伐とした使用法しかしてない。(居間なんか、キャンバス造りの作業場になっちゃったり)流石に情緒がなさ過ぎるのでお客さんが来る時は花などを活けたり、果物を飾ったりして、付け焼き刃におもてなし空間を造る。

で、昨日は取材さん達が来るというので、野の花を刈りにいってくる。野の花と言ってもここは南島、ハイビスカスやブーゲンビリア、野生のグラジオラスなんかが咲いているのだ。茶花の基本は「季節」その季節を愉しむ花として、庭の茶花や季節の花などを飾るという習慣がわが家にもあったんだが、流石にうちの庭はいつも塩害で花どころではない。そういうわけでジャングルやら道端に咲いている花を集めにいったんだが結局グラジオラスになってしまったよ。この島では「山羊のクソ花」という気の毒な名前がついてるけど。農民の天敵なんだよね。だから刈り取るにも後ろめたさはいらぬ。

因みにわが家の居間には冷暖房器具はついていない。夏はクソ暑い。外気を採り入れられるような造りにしてあるので涼しいことは涼しいんだが熱帯の温度ってのは半端じゃないのと夕方は直射日光が入り込むんで最悪になる。それでも東京から来た人が涼しいとかいってるので、東京の夏ってやっぱり最悪かもしれんな。だって直射日光がはいり込まない時は風だけで充分涼しいんだよ。

でも、今日はなぜかいきなし寒くて、暖房が欲しい。寒いよ・・・。
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ところで、この家に引っ越す前、FOBコープというところでリモージュ焼きの白い食器をそろえた。食器というのは無くなったあとに買い足せるようなのじゃないと困るのと、数がある程度揃っていないと困るので、わりかたリーズナブルで定番を数そろえているとことなるとFOBだ。その買いつけに行ったときに店のオーナーというおばさんが出てきて家の話になり、海沿いの家だというので異常に興味をしめされた。どんなとこか?とかどんな感じか?などと聞かれたけど写真なんか持ちあるかんもんでな。で、そのオーナーさんの家が取材陣が以て来た雑誌にでていたよ。彼女の家も海沿いの借景。なるほど。さすが建築、インテリア関連やさんだけあってお洒落である。私の殺伐とした暮らしぶりとは大違いである。一度、報告しにいかないと悪いな。
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結局今日の撮影は晴れずに見送り。気の毒だが天気ばかりは仕方がない。
セッティングだけして、島の美麗な場所を案内する。その後、明日の復活祭の為に祖母の荷物を受け取りに施設までいってくる。荷物をまとめ、外泊や車椅子の貸し出しの手続きなど済ませ、戻ってくるも撮影隊は晴れないもんでぐったり。明日、明後日のチャンスに賭けるというので、鍵を貸すから適当にどうぞ。と言っておいた。