コンクラーヴェ

総勢117人もの赤い衣の枢機卿が一堂に会してあのシスティーナ礼拝堂に詰め込まれて選挙を繰り返すという光景はすごそうです。赤い衣の坊さんがずらっと並んだところはまるでスターウォーズの帝国軍のようで・・・。そういえば帝国軍、偉い人は黒(ダースベイダー)>赤(インペリアル・ロイヤルガード)>白(ストームトルーパー)というヒエラルキアだけど、カトリック教会のヒエラルキアだと白(教皇)>赤(枢機卿)>黒(司祭)となりますね。(司教は赤紫)逆転する帝国軍は反キリストって案配なのでしょうか?でも、葬儀ミサで並んだ光景は帝国軍が勢ぞろいしていたアレに似ていてなぁ。

コンクラーヴェの方法
コンクラーヴェ中、システィーナ礼拝堂の扉は厳密に封印されます。午前と午後2回にわけて投票を行う。3分の2+1票の票が集まるまで繰り返し選挙が行われるのですが、それが困難な場合は1)委任・一定数(9−15)のものを任命し選挙する。2)多数決の規則を変える。絶対多数+1とする。3)多数票を集めた上位2人に絞り決戦投票を行う。例外的には全員推挙(満場一致で投票手続きを経ない)というものもあります。これはダン・ブラウンの「天国と地獄」において出て来るストーリー上の重要な光景でしたね。(尚、1)に関してはヨハネパウロ2世が禁じた。)
各線挙ごとに投票用紙は焼かれ、外部の者たちに煙の色をもって知らせる。決定ならば白。未決ならば黒(用紙と共に湿った藁を混入して焼く)。選出された者は首席枢機卿から選出を受理するか質問を受け、受理すると答えたならば、司教であるならローマ司教(教皇)となり、司教でない場合は司教にまず叙階されます。新教皇は香部屋(聖具を置いてある部屋)に行き、白い教皇服を身につけて、枢機卿達から従順の接吻を受けます。
首席枢機卿バチカン宮殿のバルコニーから教皇選出を宣言し、新教皇は「ウルビ エト オルビ(ローマ市民並びに全世界)」へ祝福をします。その後、教皇帽を受ける戴冠式が行われます。(参照・新カトリック大辞典)
朝日comには、コンクラーヴェの説明アニメがあって判りやすい。手が込んでいますね。
http://www.asahi.com/special/050402/window/050402_04.html

コンクラーヴェの歴史
コンクラーヴェがそもそも行われるようになったのは、1179年のことです。それ以前は皇帝からの干渉で混乱することが多かったのですが、教会の法規によって俗権の排除を定め、1179年に第3ラテラノ公会議で選出方法を明文化しました。しかし複数の枢機卿での投票ではしばしば揉める事も多く、ぐずぐずと先延ばし作戦などをすることもあったそうです。1263年にヴェテルポで没した教皇クレメンス4世の後の教皇選挙では3年も決まらなかったそうです。この時代、教皇が没した街で投票が行われるというのが通常でヴェテルポの街の当局者はしびれを切らし、ついに枢機卿達を宮殿内に隔離し、食料はパンと水だけ。という措置をとったそうです。戦争中でも戦闘をそっちのけで食には気を使うというイタリア人だけにこれは効いたようです。即座に決定されたそうです。
この時決定された教皇グレゴリウス10世はこの嫌な体験から1274年のリヨン公会議で「教皇の死後、10日以内に個人の没した町に集まり、施錠された部屋のなかで選挙を行う。選挙が長引くならば3日後には食事は一皿に。5日後にはパンと水とぶどう酒だけ。」と定めました。食事制限が一番効くらしいです(笑)
その後紆余曲折しながらこの基本的な路線が踏襲されるのですが、現在のコンクラーヴェの方式を決定したのは20世紀の教皇ピオ10世です。(参照・新カトリック大辞典)

密室選挙「コンクラーベ」、ケータイ・盗聴対策を徹底
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050417i214.htm
【ローマ=藤原善晴】21世紀初のローマ法王選出会議「コンクラーベ」が18日、バチカン市国内の
システィナ礼拝堂で始まる。13世紀からの長い伝統を誇る同会議だが、今回は、現代風の味付けもな
されている。

コンクラーベは、外部と遮断されての「密室選挙」を特色とする。このため、参加枢機卿が宿泊するバチ
カン市国内の「サンタマルタ館」の電話回線、インターネット回線が断たれた。

会議に参加する枢機卿の待遇は大幅に改善された。1978年の前回選挙までは、システィナ礼拝堂とつ
ながる建物に分散して宿泊していたが、今回は高級ホテル並みの設備を持つ新設の「サンタマルタ館」に
全員が泊まる。礼拝堂と同館の間を移動する際などに外気に触れることができる。
全員が寝食を共にすることから、情報交換が容易となり、法王決定までの時間が短縮されるとの見方もある。

ケータイ禁止。ミサ中ケータイ鳴らしてしまう司祭もいますが、ケータイ電波すら遮断してしまうという案配ですね。「現代風の味付け」という表現が既に笑いを誘います。因みにサンタマルタ館にお泊まりするには50ユーロだそうで。また以前はシスティナに繋がる部屋に・・ということはラファエロの絵の描かれたあそこに泊まっていたんでしょうか?

コンクラーヴェの候補者
今回のコンクラーヴェの候補者に関してはあちこちで憶測が流れています。リベラル派は外国の南米やアフリカあるいはアジアの枢機卿を望んでいますし、保守派はヨハネ・パウロ2世の保守路線を汲む者を望んでいます。また伝統的にイタリアから選出されてきた為にまたイタリア人か?という説もありますね。

●イタリア
マルコ・チェ (79)、アゴスティノ・カッチャヴィラン(78)、 カルロ・マリア・マルティニ (77)、
アンジェロ・ソダーノ (77)、ジャコモ・ビッフィ(76) マリオ・フランチェスコ・ポンペッダ(75)、
フランチェスコ・マルキサーノ(76)、サルヴァトーレ・デ・ジョルジ(74)、
ミケーレ・ジョルダーノ(74)、カミロ・ルイーニ(74)、セルジョ・セバスティアーニ(74)、
ファラエレ・レナート・マルティノ(72)、 セヴェリノ・ポレット(72)、
バティスタ・ジョヴァンニ・レ(72)、ディオニージ・テッタマンツィ(71)、
タルチショ・ベルトーネ(70)、エンニオ・アントネッリ(68)、アッティリオ・ニコラ(68)、
アンジェロ・スコーラ(63)、クレシェンツィオ・セペ(61)
●ドイツ
ヨーゼフ・ラッツィンガー(78)、 フリードリッヒ・ヴェッター(77)、 ヴァルター・カスパール(72)
ヨアキム・マイスナー(72) 、マキシミリアン・ゲオルク・シュテルジンスキー(69)
カール・レーマン (68)
●スペイン
フランシスコ・アルバレス・マルティネス(79)、リカルド・マリア・カルレス・ゴルド(78)
エドゥアルド・マルティネス・ソマロ(78)フリアン・ヘランス(75)
カルロス・アミーゴ・バリェホ(70)、 アントニオ・マリア・ロウコ・バレラ(68)
ポーランド
フランスチェク・ マファルスキー(77)、 ユゼフ・グレンプ(75) ゼノン・グロフォルゥスキー(65)
●フランス
ジャン-マリー・ルスティジェ(78)、ポール・プーパー(74)ベルナール・パナヒュー(74)
ジャン-ルイ・トーラン(62)フィリップ・バルバラン(54)
●他、ヨーロッパ
クリストフ・シェーンボーン(60、オーストリア)、ゴドフリード・ダネールス(71、ベルギー)
アンリ・シュワリ(73、スイス)、ホセ・サライバ・マルチンス (73、ポルトガル
ホセ・ダ・クルス・ポリカルポ(69、ポルトガル)、マリアン・ヤウォースキー(78、ウクライナ
ルボミール・フサール(72、ウクライナアドリアン・ヨアンネス・シモニス(73、ベネルクス三国)
デズモンド・コネル(79、アイルランド) コーマック・マーフィ・オコナー (72、イギリス)
キース・マイクル・パトリック・オブライエン(77、イギリス)、ミロスラフ・ウルク (72、チェコ
ヴィンコ・プルジッチ(59、ボスニア-ヘルツェゴヴィナ)、ラズロ・パシャカイ(77、ハンガリー
ペーテル・ エルド(52、ハンガリー) アウドリース・ユオザス・バッキス(68、リトアニア
ヤニス・プーヤッツ(75、ラトヴィア) ヨシップ・ボザニック(56、クロアチア
アメリカ・北米
ウィリアム・ウェイクフィールド・ボーム(78) エドマンド・カシミール・ショーカ(77)
アダム・ジョゼフ・メイダ(75) セオドア・エドガー・マカリック(74)
ウィリウアム・ヘンリー・キーラー(73) バーナード・フランシス・ロー(73)
エドワード・マイケル・イーガン(73)、ジェイムズ・フランシス・スタッフォード(72)
ジャスティン・フランシス・リガリ(69)、ロジャー・マイケル・マホーニー (69)
フランシス・ユージーン・ジョージ(68) アロイシアス・マシュー・アンブロジッチ (75、カナダ)
ジャン-クロード・ターコート(68、カナダ) マーク・ウーレ(60、カナダ)
●南米 (名前が長過ぎだ・・・)
ジョゼ・ファルカンフレイレ(79、ブラジル) エウゼビオ・オスカル・シェイド(72、ブラジル)
マジェラ・ジェラルド・アグネロ(71、ブラジル) クラウディオ・フメス(70、ブラジル)
アドルフォ・アントニオ・スアレス・リベラ(78、メキシコ) ハヴィエル・ロザーノ・バラガン(72、メキシコ)
ファン・サンドバル・イニゲス(72、メキシコ) ノルベルト・リベラ・カレラ(62、メキシコ)
ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(68、アルゼンチン) ダリオ・オヨス・カストリジョン(75、コロンビア)
ペドロ・ルビアーノ・サエンス(72、コロンビア) アルフォンソ・ロペス・トゥルヒージョ(69、コロンビア)
ホルヘ・アルトゥロ・メディナエステバス(78,チリ)フランシスコ・ハビエル・エラスリス・オッサ(71,チリ)
ミゲル・オバンドー・ブラーヴォ(79,ニカラグア)ニコラス・デ・ヘスス・ロペス・ロドリゲス(68,ドミニカ)
ハイメ・ルカス・オルテガ・イ・アラミノ(68,キューバ
オスカル・アンドレス・ロドリゲス・マラディアガ (62,ホンデュラス
ファン・ルイス・チプリアーニ・ソルネ(61,ペルー) フリオ・テラサス・サンドバル(69,ボリビア
ロドルフォ・ケサダ・トルーニョ(73,グァテマラ)
●アフリカ(名前がやはり長過ぎ)
フランシス・アリンゼ(72,ナイジェリア) アンソニー・オルブンミ・オコギエ(68,ナイジェリア)
クリスチャン・ウィイガン・トゥミ(74,カメルーンフレデリック・エツォウ-ンザビ-バムングワビ(74,コンゴ) エマニュエル・ワマラ(78,ウガンダ)アルマン・ゲイタン・ラザファンドラタンドラ(79,マダガスカル
ポリカルプ・ペンゴ(60,タンザニア) ベルナール・アグレ(79,コート・ジ・ヴォアール)
ウィルフリッド・フォックス・ネイピア(64,南アフリカ
ピーター・コドヴォ・アッピアウ・トゥルクソン(56,ガーナ) ガブリエル・ズベル・ヴァコ(64,スーダン
●アジア(範囲が広過ぎ)
ヴァーキー・ヴィサヤティル(77,インド) イヴァン・ディアス(71,インド)
テレスフォー・プラシダス・トッポ(65,インド) ハイメ・L・シン(76,フィリピン)
リカルド・J・ビダル(73,フィリピン) ファム・ミン・マン ・ジャン-バプティスト(71,ヴェトナム)
ペトロ白柳誠一(76,日本) ステファノ濱尾文郎(75,日本)ミカエル・ミチャイ ・キブンチュウ(76,タイ)
ユリウス・リヤディ・ダルマートマジャ(70,インドネシア) イグナス・ムーサ1世・ダウド(74,シリア)
ジョージ・ペル(63,オーストラリア) トマス・スタッフォード・ウィリアムズ (75,ニュージーランド

ムーサ1世!カッコいい!!

・・・・・これら人々がこれから缶詰めになるわけですが、候補者に関してロイターがこんな記事も。

次期法王選挙、ミラノ枢機卿が穏健派の票を獲得も
http://www.reuters.co.jp/financeNewsArticle.jhtml?type=worldNews&storyID=8188767バチカン市 14日 ロイター] 複数のローマ法王庁バチカン)ウォッチャーによると、
18日に始まる次期法王選挙(コンクラーベ)で、保守派のラッツィンガー枢機卿に対抗する
勢力が団結すれば、ミラノ大司教のディオニジ・テッタマンツィ枢機卿が穏健派の票を集める
可能性がある。
 イタリア各紙は、コンクラーベラッツィンガー枢機卿と、前ミラノ大司教のカルロ・マリア・
マルティニ枢機卿の一騎打ちになる様相を呈している、と報道している。

次期法王選挙、ドイツのラッツィンガー枢機卿が優勢
http://www.reuters.co.jp/financeNewsArticle.jhtml?type=worldNews&storyID=8175168§ion=investing
 【バチカン市 13日 ロイター】 カトリック教会幹部は13日、匿名を条件に、枢機卿団の主席
であるドイツのジョセフ・ラッツィンガー枢機卿が次期ローマ法王就任に向け大きな支持を得ているが、
まだ多くが意見を決めていないと明らかにした。

ラッツィンガー枢機卿は保守派の神学者で、過去23年にわたりローマ法王庁バチカン)で教義上の
監督を行ってきた。(中略)ラッツィンガー枢機卿は、この日ドイツで書籍を出版。そのなかで、欧州
はキリスト教の遺産を取り戻すべきと主張している。
法王就任を狙ったあからさまな動きは好ましくないとされており、この書籍がどのような影響をもたら
すかは不透明。

次々と予測記事。。ロイターは何をやっているんだか。ラッチンガーさんとミラノ大司教か。
ラッツィンガー枢機卿は教理庁長官を務め、ヨハネ・パウロ2世のブレーンでもあった。「ドミヌス・イエスス」という公けに出した文書でカトリック教会の優位性を説いたとして他のキリスト教から批判されている。まぁカトリック教徒に向かって出した文書で「カトリックも他の教派もなんでもいいっす。まったく同じっす」などと言っていたら、なんとなく偽善者臭いとは思うが、他教派徒の交流という流れにあったなかで出た文書だけに他の教派が不快感を示すのは致し方ないとは思う。個人的には軸がしっかりしている方だけに信頼はおけると思うし、ヨハネパウロ2世体制で敢えて憎まれ役を買って出ていたとも言えるし、教皇ともなると外交的な発言は変化するかもしれないけれど、顔がノスフェラトゥなのでなぁ。出された本というのも気になります。ヨーロッパ内向きの視点な方なのでしょうか?
ミラノの大司教は知らないですが、前任者のマルティー枢機卿は非常にリベラルな方だったと聞きます。前任者と同じ路線ならイタリアの若い人には人気があるだろうし、またイタリア人に一回戻すという条件や他国の多くのリベラルの票を集める可能性も高い。イタリア人はどちらかというとこの手のリベラル路線を期待しているのかもしれないですね。前大司教のマルティー枢機卿自身非常に人気のある方ですが、何故かヨハネ・パウロ2世には疎んじられた気の毒な方です。強化されすぎた教皇庁の立場の緩和を望みたい気持ちもあるので実はリベラルには期待したいが、いかんせん日本の現状の教会の有り様を見るとなぁ。
かつてはアメリカの枢機卿か?と言われた時代もあった。アメリカの葬儀に代表団が五人も団子になってやってきたのはその性もあるが、不祥事件以来それは囁かれなくなった。ブッシュは期待しているようですが。
また、アフリカのアリンゼ枢機卿の名も良くあがる。非ヨーロッパ人の枢機卿ということで、ヨーロッパ路線からの拡大という観点から候補になる可能性は高く、トトカルチョでも高徳点を挙げていた。黒人の枢機卿というのはヨーロッパ以外の人からの期待はあるだろう。また多数の信徒を抱える南米の枢機卿という線も考えられる。こちらは外交的には米国に対する牽制として効果的。
あと、個人的にはインド人の枢機卿なんかいいと思うんですが。アジア的には。。
まぁ、こういうのはいわゆる御心のままにと申しまして、どの人がいいとか実は考えていないんですけどね。

で、トトカルチョの本日深夜ぎりぎりの結果は

http://www.paddypower.com/bet?action=show_type_by_main_market&category=SPECIALS&ev_class_id=45&id=520
1・ヨゼフ・ラッツィンガー     3−1 有力候補、保守派、ドイツ人
2・ジャン・マリー・ルスティージュ 9−2 フランス人、よく知らないです
3・カルロ・マリア・マルティーニ  5−1 有力候補、革新、教皇中心の機構を弱めたい思想。高齢。(伊)
4・ディオニージ・ティッタマンツィ 7−1 有力候補、革新、穏健派。グローバル化に反対。イタリア人
5・フランシス・アリンゼ      8−1 アフリカ人、ヨーロッパ以外の国の有力候補
6・クラウディオ・フメス      8−1 ブラジル人、南米の期待が集まっている。
7・アンジェロ・ソダノ       10−1 元国務庁長官。ヨハネ・パウロ2世路線か? イタリア人

数字の見方はわかりませんが、リストの中にインドの枢機卿も33−1で入っていました。
一日経ってみたらアリンゼさんが3−1で1位に躍り出ました。チリ、アルゼンチン、ホンデュラス枢機卿も6位以下につけていますね。ローマ在住の方はハンガリーの教会法専門の枢機卿に注目!などと言っていますが、彼は52歳なのでなったとしても次回なんじゃ?怪しい憶測が彼の地でも囁かれているようです。