祖母は今、与論にいる。正月に寝たきりになって以来、どうも身辺が不安になったらしく、自分から施設に入りたいと言い出した。うちには父、それも典型的な昭和ひと桁の仕事一筋、家のことはナニも出来ない父と仕事をしている母しかおらず、母は洋裁をする人なのだが自分のアトリエを持っていて平日は朝から日によっては夜遅くまでそこにいる。母も世間的にはもう定年の年齢だが個人事業家の悲しい宿命か、雇い人の為に事業をやめるにやめられず、かといって少々ボケの始まった父も抱えた現実に祖母としても母一人に負担がかかるのを恐れたのかもしれない。週に二日はお手伝いさんも来てくれるのだが、いない日の面倒は母も仕事があるのと、わたくしが遠方にいるために出来ない。
先月、与論の施設に引っ越した。なかなか快適なようだ。明治生まれの女性は強い。
その祖母には兄弟がいてどれも皆健在である。長生きの家系らしい。祖母にはいとこがいて、その方は中目黒に住んでいるのだが、今もやはり健在である。当年96歳。もうすぐ百歳である。最近はボケも少々酷くなっているらしく話の要領を得ないらしい。この世代の人の人生は面白いので元気なうちにいろいろ聞いておきたいものだ。戦前の大時代的な物語がそれぞれにある。たぶん力のある方なら小説にするであろう。この時代に生きた人にはこの時代に生きた人の数だけ面白い題材が転がっていると思う。