楳図邸 高度経済成長的キッチュ作品 逆バラガン

たけくまさんとこで楳図かずおの家の内部が紹介されていた。
たけくまメモ
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-4481.html
■「まことちゃんハウス」内部写真・解禁!

たけくまさんが邸宅完成披露パーティに呼ばれた時に撮ったものだそうです。

楳図さんの家については周辺住民が訴訟を起こすなど色々物議を醸し出していたが、出来上がった家の外観は色彩だけがちょいと目立つ以外は存外普通で悪趣味と言えないレベル。正直、美的にはナニも考えてないだろ?的なセンスで、どーも騒ぐ方がおかしいと言うか、寧ろもっとアートを徹底希望ぐらいの感想でしかなかった。悪趣味で外観が悪い家ならもっと沢山ある。そういうわけで「なんだ、たいしたことないじゃん」と片づけていたのだが・・・。

・・・・という印象しかなかったのだが、内装については徹底してんなぁという感想だった。
なんというかわたくしがガキのころに流行った似非西洋風と言うか、リカちゃんハウス的と言うか、欧州コンプレックスの成金アメリカ経由のコロニアル文化がプラスチックになったような、そういう悪趣味的キッチュ。高度経済成長期の喫茶店とかペンションとかそういうの。張りぼて的。シャンデリアや廊下の手すり、カーテン(実はン百万もするらしい)に到るまで、本物らしさがなく作り物めいた感。一見すると安っぽい下品さに見えるような、つまりただの悪趣味んじゃと思われるが、手すりの柱などに見られるフォルムのわざとらしいまでのキッチュ性から鑑みるに結構計算してるのかな?と思う。そういう計算は色彩計画によって見えてくる。赤と白(あるいは赤と黄色)を徹底して用いることで、下品であることを一線で免れているし、ありがちな似非西洋的つまらなさを面白いものに昇華している。キッチュな作り物めいた感がより強調されたという感じ。つまりまぁコンセプトが一貫していると言う点で、面白い作品になっている。

楳図さんならではのポップさというか、高度経済成長期的モダニズムなんじゃないか?それもポピュリズムモダニズムといえましょうな。

子供の頃、リカちゃんハウスってのは女の子のあこがれで、レースひらひらにシャンデリア、白い手すりの階段があるホール。こういう物体を「素敵アイテム」だとして畳の部屋で遊んでいたわけだ。楳図さんという人はそういう夢見る子供に情報発信する仕事、漫画家さんであり、この高度経済成長文化の中で独特の作品を作り続けた人である。彼が選んだ内装は彼の作品に通じるナニかがあるし、たけくまさんが「建物自体がまぎれもなく100%純粋な楳図作品」と評したのはその通りであると思う。
楳図邸「まことちゃんハウス」は、ある時代の典型的な視覚記号を持った集合体として興味深い。

◆◆
そいや色彩がすごいというとルイス・バラガンがいるなぁ。メキシコのモダニズムの建築家で世界遺産にもなっている。その色彩たるや外観にピンクとか赤とか黄色とか原色をバンバン使う。のっぺりとした安藤忠雄的なフラットな面で構成される立体のその大きな壁面全部がピンク。内装にもそういう部屋があって、ピンクの壁面の部屋なんて普通は気が狂いそうなんだが、実はインテリアと調和して実に美しいものとなっている。安っぽくなりがちな色が、計算された立体空間と素材や環境とのバランスで逆に、品を作り出しているのだな。ちゃんと調和しているのだ。

カーサ・バラガン

カーサ・バラガン

楳図邸は逆で、安っぽくなりがちな立体物を強烈な赤という色彩で(品があると言い切れはしないが)空間的調和を保たせている。

まったく逆のコンセプトという点で面白い。

バラガンのあの色も日本の住宅街に建てたら近隣住人が訴えかねないかもです。まぁメキシコの陽光ならではの色彩だからなぁ。