消えゆく島言葉

うちの島の人口は5000人半ば。歴史的にはかなり長い間、隔絶したような状態にあった性か、独特の言語を話す。お年よりの話す島言葉は標準語とは完全に異なる、独特の音を持っている。日本語と共通するものもあればかなり古代の大和言葉が残っていたりもする。
介護施設で島の年寄りに話しかけたりしてみるが帰ってくる返事がまったく判らない。どこで区切られているのか、どこからどこまでが名詞でどこからどこまでが動詞か判らないような音。旅んちゅ(余所者)なわたくしには聞き取れない。仕方がないので島言葉がわからなくて済みませんというしかなくちょっと情けない。
言語体系的には奄美言葉と国頭言葉が渾然となったものらしい。ウチナーグチとも通じる言葉もある。ユンヌフトゥバ(与論語)は周辺の島々の言葉と渾然となって、結局独特の言葉となっている。与論島でしかいわないような言葉もあるようだ。
▼与論方言事情(上) 沖縄風文化や言語
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/kotoba20010815.html

上記に詳しくでているが、音の独特、破裂音、「カ」という音が「ハ」という音になる。(フィレンツェ人みたいだな)更にめんどくさいことに集落が違っても言葉が違うといわれている。ここまで細分化されるとどこに線引きしていいやら。

さてユネスコさんが絶滅品種な言葉を指定していたようだ。絶滅語。

▼世界2500言語消滅危機、ユネスコ「日本は8語対象」
http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY200902200176.html
【パリ=国末憲人】世界で約2500の言語が消滅の危機にさらされているとの調査結果を、国連教育科学文化機関(ユネスコ、本部パリ)が19日発表した。日本では、アイヌ語が最も危険な状態にある言語と分類されたほか、八丈島や南西諸島の各方言も独立の言語と見なされ、計8言語がリストに加えられた。
(中略)
日本では、アイヌ語について話し手が15人とされ、「極めて深刻」と評価された。財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構(札幌市)は「アイヌ語を日常的に使う人はほとんどいない」としている。

 このほか沖縄県八重山語与那国語が「重大な危険」に、沖縄語、国頭(くにがみ)語、宮古語、鹿児島県・奄美諸島奄美語、東京都・八丈島などの八丈語が「危険」と分類された。ユネスコの担当者は「これらの言語が日本で方言として扱われているのは認識しているが、国際的な基準だと独立の言語と扱うのが妥当と考えた」と話した。

アイヌ語の話者は15人だそうだ。うちの島の比ではない。
しかしうちの島よりも人口が多い奄美宮古、国頭が入ってるのにうちの島は大丈夫だってのは何故なんだろう?

↓これによると奄美大島の話者は北奄美で1万人。南奄美で1800人。国頭は5000人。
http://www.ethnologue.com/show_country.asp?name=JP

うちの島はというと・・・

Population 950 (2004).
Region North central Okinawa; Yoron Island.
Dialects Inherent intelligibility is generally impossible, or very difficult, with other Ryukyuan languages and Japanese. Ryukyu languages are 62% to 70% cognate with Tokyo dialect of Japanese.
Classification Japanese, Ryukyuan, Amami-Okinawan, Southern Amami-Okinawan
Language use Older adult speakers can also understand and use Standard Japanese. Those from 20 to 50 understand Yoron, but mainly speak Standard Japanese at home and work. The younger the generation, the more fluently they speak Japanese (Wurm and Hattori 1981). Those under 20 are monolingual in Japanese (T. Fukuda SIL 1989).
http://www.ethnologue.com/show_language.asp?code=yox

なんてデータが出てます。
950人ぐらいしか話せないようです。確かに島の若い人はもうシマグチは話せない。聞き取ることは出来ても話せないといってる人は多いし、こどもたちは判らない子も多いようです。危機を感じた島人達がシマグチを子供に教えていますが、核家族化し家庭内で話されていないのでやはり学習が難しいようです。
そういうわけで立派に絶滅種になりそうな勢いですね。

島では菊千代さんという80歳を超えたにもかかわらず現役で島文化保存に努めるスーパーなおばあちゃんがいて、なんと島言葉辞典を作り上げてしまいました。
http://d.hatena.ne.jp/asin/4838602154

島の言葉が失われていく危機のなかで次世代に島の記憶を残しておくことを自らの仕事として、この言葉の辞典だけではなく「芭蕉布」そして伝統生活文化を保存することに努めています。菊さんだけではなく息子さんも島言葉の伝承に努めていて島言葉の講座を開いたりしています。島の役場をはじめとした様々な人たちがそういう文化事業を支えています。

こういう島人の努力があるのでもしかしたら「まだ絶滅しないよ。大丈夫だよ」ってされたのかも。

ちなみにうちの島の「有難う」は「トゥートガナシ」です。他の琉球奄美の島とも全然違いますね。