エルネスト・ネト ブラジル現代美術作家の柔らかい空間

香川県は何故か良質なアートがそこはかとなくある。それも、イサムノグチとか、安藤忠雄とか、静謐な元素を感じるような芸術を創りあげる作家だったり。そんな香川県丸亀市の中心の駅、丸亀駅のまん前のくそど田舎な駅にどこにでもあるような鄙びた街並みの横にいきなり超コンテンポラリーで上質な巨大建造物が建っている。
世界的に有名な美術作家、猪熊弦一郎と建築家谷口吉生とのコラボレーションだそうだ。1993年に没した猪熊自身がこの美術館の細部にまで指示し、インテリアなども選んだそうで。なかなかおされ空間である。いいなぁ丸亀。
美術館はこれ↓
http://www.mimoca.org

猪熊弦一郎ってこんな人↓
http://web.infoweb.ne.jp/MIMOCA/inokuma.html

モダニズムの時代のパリに学び、あのピカソマティスの同時代人である日本のモダニズム作家である。一番目にする彼の作品は三越の包装紙だと思うけど。
http://www.excite.co.jp/News/bit/00091098253172.html
猪熊とやなせたかしのコラボなんだそうだ。へぇ。

この美術館では猪熊自身の作品の常設展ほか、現代美術展などをよくやっているようだ。我々が行ったときは丁度、ブラジルの現代美術作家、エルネスト・ネトの展覧会をやっていた。金田一輝師匠行きつけの店に丁度この展覧会のポスターが貼ってあり、最終日時間が空いたので行こうということになった。まぁ、えるねすとぉ?知らんぞ。などと、さほど期待もせずに行ったんだがこれがよかった。

私は島に移住する前はよくイタリアに行っていた。目的はヴェネチア・ビエンナーレである。この美術の祭典はすでに開催が52回以上を超えている。その時代のコンテンポラリーな、世界中の「現代」美術を見ることが出来、美術における昨今の流行なんてのもなんとなくわかる、まぁ一応、一度は見とけよな、美術祭である。
数年、この美術展があるとイタリアまで行ったものだが、最近はサボっていた。しかも島移住なんで現代美術の激しく疎くなっていた。その疎い感性に、久しぶりに衝撃を与えてくれたのがこのエルネスト・ネトの作品だった。

展覧会場に行くといきなり靴を脱げと言われる。部屋いっぱいに大きなテント状の布が張り巡らされ、その内部へと入り込むという仕掛けである。ああ、あれだ。昔、ビエンナーレで、内藤礼が物議をかもし出した、一人一人入る空間って作品と同じようなバーチャル作品ね。しかもスパイスの匂いがする。ターメリッククローブの匂いだ。これもミラノ在住の作家でもあり友人の現代美術作家、広瀬智央がやっとったじょ。マネっこ乞食じゃね?などとぶつぶつ言っていた。キュレーターのおねーさんに、小山登美雄ギャラリーでよくやる作家の広瀬君がやってた作品に通じるなどと申していたら、なんでもこの展覧会自体を小山がプロデュースしているらしい。うげげ。どっかで繋がりがあったのか。しかもギャラリー小柳も関わっているようで、内藤礼も繋がってくるようで。ううむ@

ネト氏は1980年代後半からこのようなヴァーチャルというか、ギャラリーと作家の双方向の作品を目指していたそうだ。

エルネスト・ネトは、1964 年にブラジル・リオデジャネイロに生まれました。1980 年代後半より作品 の発表を始め、伸縮性にすぐれた薄い布地を用いた有機的な形態のオブジェや、そのオブジェで 構成されたインスタレーション作品で注目を集めます。以来、ブラジルのみならず世界各国の美術 館で個展を開催し、また、2001 年の第49 回ヴェネツィアビエンナーレでブラジル代表に選ばれる など、現在最も注目を集めているアーティストの一人です。

前述した、内藤礼は1997年のヴェネチア・ビエンナーレで『地上にひとつの場所を』というインスタレーション作品を出品。この作品において、鑑賞者が一人ひとり館内に入り、3分間という時間の間、作品とともに過ごすという鑑賞法を指示したことによって、館の前には長蛇の列が出来、多くの批判を受けた。内藤はそれに対し、あわただしく作品を流してみていくようなビエンナーレの、美術が消費されているかのような有様を批判。「美術は時間のある人だけが見ればいい」と反論して、ジャーナリスト達を黙らせたらしい。内藤の作品は「瞑想」的なものを喚起するのが目的であり、空間とともに永き時間を感じるということをテーマにしていただろうが故に当然の主張でもある。

ネトの作品はこのときの内藤の作品に通じるものがある。布で囲まれた空間の中に、「一人」ではないが、入り込み、作品が作り出す空気を全身の感覚で愉しむという点に於いて。ネトがこうした作品を作り始めたのはどうやら内藤礼のあのビエンナーレ作品の頃でもあるようで、ネト自身が彼女の作品を知っていた可能性もある。

しかし、内藤と違い、ネトの作品はもっと動的でもある。ポップな目に鮮やかな色。柔らかい布とともにリラックスするオブジェたち。身を投げ出して愉しみ、引っ張って愉しむ、まとって愉しむ。手触りのよい布はまるで母の優しさに包み込まれるかのような、あるいは胎内へとむかうかのような、人間の持つ普遍の「安らぎ」の感覚空間を演出している。ずっといるとすごく眠くなる空間が心地よい。五感を解放し浸りこむことが大切な作品である。そこには内藤の瞑想的な(どこか禅的ともいえる)作品とは違う、もっと日常的な素になれるような暖かさがある。
こんな作品な↓
http://web.infoweb.ne.jp/MIMOCA/event3.html
http://www.operacity.jp/ag/exh85/j/artist/ernesto.html
http://www.cmoa.org/international/html/art/neto.htm

本人の顔はごついけどね。作品はやわらかくて優しいよ。
◆◆
というか東京オペラシティでもやってるのか・・・。

『メルティングポイント』展
ジム・ランビー、渋谷清道、エルネスト・ネト
期間:2007.7.21日[土]─ 10.14[日]
東京オペラシティアートギャラリー(3F ギャラリー1・2)

開館時間:11:00 〜 19:00
(金・土は11:00 〜 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)

休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、8月5日[日](ビル全館休館日)

入場料:一般 900円(700円)、大学・高校生 700円(550円)、中学・小学生 500円(400円)
http://www.operacity.jp/ag/exh85/index.html

オペラシティってどこだ?????