『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』
九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 - City of Darkness
- 作者: 吉田一郎,グレッグ・ジラード,イアン・ランボット,尾原美保
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2004/02/21
- メディア: 大型本
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九龍というと「クーロンズ・ゲート」というゲームがあって、これがアジア的バロック感にあふれていて病み付きになったことがある。
これね↓
ARTDINK BEST CHOICE クーロンズ・ゲート-九龍風水傅-
- 出版社/メーカー: アートディンク
- 発売日: 1997/02/28
- メディア: Video Game
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溶け合ったビルディング。入り組んで住人すら把握していない迷路となった路地。違法な建築物の集合体。一度入ると二度と出ることは出来ないなどと言われた、イギリス領下にあって中国の領土であるが故の治外法権の魔窟。タダでさえ犯罪が多く猥雑すぎるほど猥雑な香港人すら恐れる町。そして40000人ぐらいの人が住んでいるだろうといわれていた。
この魔窟の怪しさを幻想的に再現したのが上記のゲームなら、こちらの本はそこに暮らす人々のリアルな像を描く本だった。この魔窟に住む人々はけして犯罪者でもなく悪の存在でもなく、ごく普通の人々だった。
九龍城は1997年の香港返還に先立って、1993年に取り壊されたのだが、その頃色んな写真集が出回ってなんとなく買いそびれていた。
- 作者: 九龍城探検隊,可児弘明,寺澤一美
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/07/10
- メディア: 大型本
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なもんで教授のトコにあった本のリアル九龍な生活は面白かったですよ。クーロンズゲートのあのシーンはもしかここか?とか。楽しめたりするし。
九龍の建築は隣り合った建物を互いに寄りかからせて建てるとか、建物と建物の間に隙間があるのでそこに部屋を作っちゃうとか、どんどん増殖しているうちにとんでもない塊が出来たようです。元はまばらに立っていた高層建物とその間を埋めている低層建築があって、その低層建築が高層化していくにつれて互いに建造物が繋がり、くっついて、類を見ないほどの無秩序な密度空間が出来上がってしまったんですね。まるでJ・G・バラードの小説みたいだ。空間権がある話。部屋を借りてそれを更にしきって何家族かが住んでいるとか、ある一角がいきなり床が抜けて閉鎖されていけなくなったとか。バラードは幼少時代を上海で過ごしているのでこの手の中国的な魔窟のカオス的拡散型建造物とか知っていたのかも。
そういうわけで、とにかく違法建築でしかも行き当たりばったりに建てているもんだから上下水道の問題とか、電線とか、無茶苦茶だったらしい。廊下やら隙間が謎のチューブやパイプに埋め尽くされているのはその性。あの建築郡が旧式の井戸を用いていたりするってのもすごい。しかし地下水は完全に汚染され、井戸水から引いた水を飲んだら「死ぬ」などと言われている。げぇ。そんな水質とゴキとねずみの巣窟な九龍内にかなりの食品関係の違法工場があるってのもどうよ?(そういやニューヨークのチャイナタウンもそれに近い怪しげなのが沢山あったなぁ・・・・)
あと道観の廟が内部に取り込まれてしまっていて、昔ながらの廟の回りは全部絶壁に建造物が取り囲んでいるため、廟の屋根の上に落下物防止用の金網を設けてあるが中国人お約束の「窓からゴミ棄て」のせいで光が射さなくなってるってのもすごいな。
はじめて中国に入ったとき、香港から入って香港から出た。啓徳空港に降り立つのは夜だったのだけど、啓徳空港というと悪名高い街すれすれに降り立つトンでも空港。なもんで飛行機の窓から密集したビルディングの塊が街明かりに照らされて浮かび上がるのをずっと見ていた。香港の街全体が九龍城のごとき怪しげさに満ちていて、いやぁすげぇ。とんでもない街だ。こりゃ魔都という言葉がふさわしいぞよ。などと思ったことがある。
数年後、再び香港に訪れたとき、案外清潔で(わりと)秩序ある街なんじゃなぁ・・と、中国のすごいトコをたくさん見たあとだったので、驚かなくなってしまった。それでも高いビルディングの窓に並ぶエアコンの室外機とか怖かったなぁ。落ちてきたらやだってくらい。