戦前の京都の新聞

お盆だったのか、母が祖母の部屋を大掃除すると、祖父の結婚式の時に着た衣装が出てきた。昭和初期のシロモノだ。素敵な織りの袴で、生地がしっかりしている。これをほどして洋服に仕立てようかと解体していたら、帯の部分の芯に昔の新聞(断片)が貼り付けられていたのを発見。手造りなので手元にある素材を使ったのね。
その新聞、どうやら京都新聞なんだけど、文章が面白い。
当然満州とかの地名などがあるし。
以下はその記事。××等の部分は破れて読めなかったりしたとこ。

▼藝妓を連れた怪しい紳士 保證金詐欺しての豪遊

二十四日午前一時頃京都市太秦署刑事が花園驛付近を偵邏中多数の藝妓に取り巻かれ浮かれてゐる怪紳士を誰何すると
 自分は京都土地健物保全株式會社の社長で
 取り調べられる必要はない
と豪語したので本署に連行取り調べると千葉縣安總郡國府村生れ強窃盗詐欺前科三犯鈴木元もと鱸元献(49)といひ昨年三月京都刑務所出所し五月無資本の東洋愛輪××會社を買収し京都土地健物保全株式會社といふインチキ會社の看板を上京區役所前に堂々と掲げ新聞に社員募集の廣告をなし中京區室町通り押し小路上る片山延之助外二十名から保證金三千圓餘を詐取したこと發覚し引續き餘罪取調べ中

▼臨検失敗の 偽警官  京都の珍劇

去る二十一日午前二時ごろ京都市左京區一乗寺赤宮町料理店粂田熊蔵方の表戸をたゝくものがあるので家人があけると『俺は下鴨署の森本であるが臨検に来た』とて奥へ行かうとしたので『何か警察の證據を見せてくれ』と迫り、二三押問答してるとその男は形勢不利と見たか脱兎の如く逃げ去った

上記のような文面なんだけど、見ての通りほとんど句読点がないというか読点がない。あと文章のテンポがそこはかとなくいいというか、後の記事なんか『聊斎志異』を読んでいるような気分になりますね。

外にもタイトルだけ記すと
▼待てども起床せぬ 若い男女のお客 調べてみれば劇薬を飲み昏睡
▼集金費ひ果たし自殺覚悟の男 京に来て捕まる
▼辧當を盗み廻る×××

最後のは下が切れてて読めないんだけどどうやら弁当を盗みまわる泥棒の記事のようです。


ところで京都って、今なんとなく地図を見て気づいたのだけど、番地なんかついてる。わたくしが子供の頃は上記のように通り名で住所を記していたので番地を知らない。通り名で東入るとか上るとかいう方がよくわかるんだけど。なもんで上記の事件の起きたトコなどもおおよそどのあたりかすぐ見当がつくというもの。お陰でヨーロッパの地図を見るのは大変に楽でござります。