新潟・カトリック新発田教会

仕事で新発田ってとこに行ってきました。
なんか典型的な地方都市。シャッター街が寂しい地方都市。回りは田んぼ。自然がいっぱい。産業はしょぼんだけど農業は頑張ってる。ここはくいっぱぐれないよな〜な感じ。
まぁうちの島より都会だけどね。人口9万人とか。うちの島の18倍。


そういう地方都市なので、地方財政破綻とか都市部と格差がどんどん激しくなる中で自立するにはどうしたらいいのか?ということを探っているようです。「観光」という観点からしてもお隣の村上と違ってどうにも中途半端な町並み。歴史は古いのだけど度重なる大火に見舞われるという不幸からあまり古いものは残っていない。しかし昭和の懐かしい原風景が今も残る所は多い。

その一つがカトリック新発田教会。ただ昭和な古さがいいというだけでなく、この教会はなんとあのフランク・ロイド・ライトの弟子のアントニン・レイモンドの設計による。建築家には涎物件だという。その性で遠くから建築家達が見に来るという隠れたスポットらしい。


日本のモダニズム建築史上重要な人物でもあり、多くの建築を日本に残している。カトリックギョーカイ関連では目黒アンセルモ教会、軽井沢聖パウロ教会、南山大学等、見たことあるよね物件。


教会は派手な建築ではないけど、シンプルな中で祈るという目的に特化された静かな空間を作っている。集中バシリカ様式と申しますか。木組みを大胆に露出し、素材をそのまま生かした内装。レンガと木、コンクリートという素材をそのまま生かすという方法論が質素ながら静謐な空間を作り出している。なんせカトリックは予算がない。そういうわけでステンドグラスは用いることが出来ず代わりにレイモンド夫人が自ら切り抜いたデザインされた和紙を窓ガラスに貼り付けるという和製ステンドグラスを用いていて、それがかえってよい効果をもたらしている。


で、まぁスンバらしい教会だというので見物に行ったら丁度ミサをしていた。ちょうど説教中で後ろから覗かせていただきますよ。と見ていたらこわもてなおっさん信者が出てきて、いきなり教会の説明とか、この教会の敷地を横切って道路を通す計画があること批判を演説し始めた。なんでも市会議員だそうで・・ミサはいいのか?おっさん?!
結局おっさんはミサが終わるまで外で我々一行の相手をしていた。わたくしはこっそりおっさんご一行から抜け出し、ミサに出て聖体拝領までしてもらいましたけどね。ごめんなさい。親切な市会議員のおじさん。


しかし、乱暴な都市計画は酷い。
なんせ実態も見ずにいきなり地図のど真ん中にこういう幹線道路通そうぜってな計画だったらしい。おっさんが怒るのも無理はない。カトリック信者だからというだけでなくこの文化財新発田市のみならず日本、或いは世界的にも重要な建築だということ。つまり建築史上重要なことだと判ってるのか?ということで。
案の定「この建築物を残してくれ」という建築学会関連からの要請も起き、更になんやわからんけど建築ギョーカイが賞まで出している。
そういうことだけでなく、周りの住宅も無理やり立ち退きで気の毒な状態。風景を乱暴に切り取るような都市計画ってどうよ?
幸い、多くの人の要望で景観を損ねないようにしようと動き始めたらしい。市会議員のおっさんも頑張ってるみたいです。


どうも日本は車社会に向かない土地まで車社会に無理やりして風景が地方都市も単一化している。私は車に乗らないもんで、この手の車社会がどうも嫌いなんですが。地方の大規模ショッピングセンターとかダサいし、同じものしか売ってないし。


新発田市もそうした大規模ショッピングセンターのお陰で街の中心だった商店街が過疎化しシャッター街に変容し、どうしようもなく醜い光景を晒す羽目になりつつある。こういう光景が日本中いたるところにある。チェーン店のショッピングセンターが最終的に地方の商業を衰退させているようで。自立しろという前に搾取されているようじゃぁねぇ。などと思ってしまいましたよ。


とにかく新発田カトリック教会建築はすこぶるつきに珠玉の教会だった。大切にして欲しいです。


この教会の司祭館もレイモンドさんの作品。予算がまったくない中で頭をひねくって作った作品らしく、壁はなんとベニヤ板そのまま。そのベニヤ素材を生かすためになされている気遣いがなんとなく面白い。梁のでこぼこに合わせてカットしてあったり。ふすまのデザインもよい。雪国で耐えうるために張りや基礎はしっかりと作ってある。柱の太さもすごいのだけど間はベニヤってのがね。面白いですね。質実剛健の典型です。
しかも原始的な床暖房なつくりなのも面白いです。ライトの住宅建築を思い出します。実用を重んじた作品になっていました。
若い神父様がそこで生活なさっておられるようです。いいなぁ。


そのあと、オニハスの咲く潟を見に行き、その後村上にいく。村上という街は昔の京都の外れみたいな町で古いものを大切にしている。寺町があり、谷中にも似ている。この街を再生するべく街の人たちが行政の力を借りずに自力で様々な工夫をして、そのお陰で観光客がおとづれるようになった。祭りを大切にし、伝統を大切にし、古い町屋を壊さず再生、再現している。そのお陰かしっとりとしたいい町並みになった。地方都市が自立する為のアイディアとして、村上市の取った手法を参考にするのがよいかも。


案内してくれたのは新発田のアーチストで写真館を経営している一家。これまたすごく古いつくりでノスタルジア。まるで千と千尋のセットみたいな、雑多な浪漫風。彼が撮った写真館の記録映像を見せてもらいましたが、なかなかよかった。写真館4世代にわたる記録を写真を通じて見せてくれるものでそれはそのまま日本の近代から現代の記録になっている。興味ある方は是非行ってくださいです。
吉原写真館というとこです。


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・・・・で、その後日本海を見せてくれるってんで海岸沿いの道を延々行ったんだけど車に酔ってしまい具合が悪くなってしまいました。その性で昨日と今日も調子が悪かったという塩梅です。いやぁねぇ。


日本海は水が綺麗というけどうちの島のほうが綺麗だった。
でもかっこよかった。