『美の歴史』ウンベルト・エーコ

pataさんが恵んでくださったエコ本を読む。

美の歴史

美の歴史

“美”とはなにか?絶対かつ完壁な“美”は存在するのか?“真”や“善”“聖”との関係は?―古代ギリシア・ローマ時代から現代まで、絵画・彫刻・音楽・文学・哲学・数学・天文学・神学、そして現代ポップアートにいたるあらゆる知的遺産を渉猟し、西洋人の“美”の観念の変遷を考察。美しい図版とともに現代の“知の巨人”エーコによって導かれる、めくるめく陶酔の世界。

分厚い本なので島に行ってからのんびり読むつもりだったのに、待ちきれなくて昨日読んじゃった。と言っても「断片的に俯瞰して読んでみました」な「読み」だけど。


これはあくまでも西欧の、それもイタリアという場所から俯瞰してみた「美」の歴史であって、単なる「絵画彫刻史」ではないです。ですのでギリシャなんて感じからはじまって現代の大衆文化までというかなり幅のある時代の「美」の概念を大雑把に紹介していくという感じですので研究書ではありません。学級的な姿勢で読まんとする人には激しく物足りないとは思いますが、西洋の美の歴史にまったく疎いとかそういう方には是非読んでもらいたいですね。教科書なんかに使うと最適かもという読みやすさですし、西洋美学の入門書としてはとてもいいと思います。
少なくとも↓よりは西洋の美の歴史を学ぶにはずっといいです。

これ↑は小学校か中学校の教科書並みだよ。本が綺麗なんで読みやすいですけど。

その点、エコ本はエディトリアルが悪すぎ。イタリアで出版された形式のフォーマットをもらってフォントだけ入れ替えたって感じです。元本を知らないからわかんないけど。
日本語には日本語として読みやすい組があるのでちゃんとやり直して欲しかったですね。まぁガリマール社の「知の発見叢書」シリーズは成功した例だろうけど、エーコ先生のはそういう性質の本じゃないから。


とにかくざざっと読んだだけですが、近代における「機械の美」現代における「メディアの美」。すなわち「挑発の美」、「消費の美」についてのトコは参考になりました。後期の講義に採択するつもり。

あと「写本装飾論」の記述が引用されていたのはありがたいです。
水銀の赤と鉛の赤の違いってどげなもんなのか今度日本画材料店に行って観察してこようと思ったですよ。(←ナニも考えずに使っていた)