とんでも社長の偽装・他者への想像力の欠如

東横イン、二重図面で偽装工事 条例違反の状態
http://www.asahi.com/national/update/0127/TKY200601260394.html
ビジネスホテルチェーン大手「東横イン」(東京都大田区)が、横浜市に今月オープンしたホテル建設をめぐり、
法律や市条例で義務づけられている身障者用設備や駐車場を設けた建物をいったん建てながら、市などの完了検査
直後にこれらの設備を撤去・改造する工事をして開業していたことがわかった。撤去前の設計でなければ、建築
確認はおりなかった。朝日新聞社は、建築確認時の設計を示す図面と改造用の2種類の図面を入手。東横イン側は
取材に対し「昨年夏ごろから改造を計画していた」と、偽装工事だったことを認め、改造前の状態に戻す工事をす
る意向を示した。

先日からずっと他者への想像力について話して来たが、その最たる事件があったようですね。
祖母は車椅子でないと移動出来ないのですが、補助をしていると祖母を楽につれて歩ける場というのが少ないことに気付きます。↑こういう判りやすいとんでも社長のお馬鹿な行為はともかく、日常の街中でも、看板があちこちに突っ立っている。歩道がそこに建っている家の車庫から車道に出るための場所が低くなっているのででこぼこしていて大変である。路駐が激しく辛い。横浜の家の周りなんか酷いものです。とにかく路駐する馬鹿は上記の社長と同罪である。道端に立て看板ぞろぞろ出すヤツらも同罪であるよ。
以前、駅で道を見失った盲人に出会ったことがある。彼は何故か改札前のホールを行ったり来たりしていた。「なんか手助けを出来るか?」と伺ったところ、「工事のために乗り換え口が変わったために方向がわからなくなった」との事。地下鉄駅まで案内した。その時、道を指示するのに目が見えない人の世界を想像しながら説明していったのだが、これが難しい。「もうすぐ階段です」といったって「もうすぐ」の距離をどう説明していいやら判らない。しかし目の見えない人というのは優れて他の器官が発達しているのか、私が危惧するよりも遙かに多くのことを事前に察知している。手助けしているより教えられる事のほうが多かった。その時あの道端を塞ぐ看板がいかに彼らの道行きを困難なものにしているのか気がついた。足の悪い祖母にとっても同様である。
どんな人でもそりゃ快適に道は歩きたい。快適に過ごしたい。公共性の高い場所というのはなるべく全ての人に開かれていることが大切である。それが適わない場においては、多くの人が手助けをすればいい。
島では祖母は多くの人に助けられている。島は車の量もすごく少ないので車椅子の移動が楽である。電動の車椅子に乗って移動している老人も多い。細い道を電動の車椅子が移動していると、車のドライバーはクラクションを鳴らすこともなく、無理な追い越しもせず、辛抱強く、老人が気がつくまでゆっくりと後につく。通りすがりの人が老人に「後ろの車がつまっているよ」と声をかけてゆく。小さい島なので急ぐ事もないためそういう余裕がある。都会ではそういう余裕を持ちたくても渋滞を引き起こしてしまうとか、色々別の問題もあるのでそうはいかないだろうが、そういう思いやりの余裕くらいはせめて皆が持てる社会になって欲しいなぁとは思う。
なんというか日本は・・というか都会はみんな忙しすぎて追われている気がする。だから気持に余裕を持てなくなるのも無理はないのかなぁと思うことはある。外国から帰ってきてもそういう余裕のない光景にしばらく茫然としてしまう。なんでだろうか?誰も「急げ!」などとは言っていないのに。
◆◆
ところで那覇にも「東横イン」があったなぁ。え?東急系のホテル?と思ってしまったが現地の人が「違うよ」と教えてくれた。東急東横線のイメージが強いからなぁ。東急は気の毒じゃなぁ。駅にもバリアフリーのためのエレベーターを設置したり、体が不自由な方の為に駅員さんが手助けをしていたりする光景にもよくぶつかったし、なるべく様々な利用者が快適に利用しやすいように色々努力している会社なのに。
那覇東横インは新しいホテルで使いやすそうだったんだが・・こういうの聴くとなぁ・・。まぁ従業員は困っちゃうだろうから暴言社長さんでも首にして、これから頑張るといいと思う。

http://www.tokyu.co.jp/contents_index/topics/060127_attention.html東横イン」は、東急ホテルズおよび東急グループとは一切関連がございません
 
 2006年1月27日の朝日新聞で偽装工事が報じられている「東横イン」は、
「東急ホテル」、「エクセルホテル東急」、「東急イン」、「東急リゾート」の4つの
ブランドホテルを展開する私どもの「東急ホテルズ」とは、関連の無いまったく
別のホテルチェーンであり、東急グループとの関連もございません。
2006年1月27日
東急グループ

なんか色々とばっちりを受けたみたいで、激しく気の毒です。
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ええっと、木走さんもこれを取り上げていたので。こっちでもコメント。

●木走日記
高級ホテルもビジネスホテルも一律に規制する条例側に問題はないか
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060129

木走さんはあの社長の暴言が「本音を言っちゃった」ということで「そう思ってるなら貫き通せ。」とおっしゃっています。(勿論、批判があるのは当然だろうをしたうえで)
この文脈では最終的に障害者のための設備の義務づけが一律であることへの行政批判へと結びついていきます。
まず社長の暴言

「正面が駐車場だとホテルとしての見てくれが悪い。報告を受けて僕も、まあいいだろう、とっちゃえと考えた。やったことは仕方がない」

 「身障者用客室を造っても、年に1、2人しか来なくて、一般の人には使い勝手が悪い。うちのほかのホテルでもロッカーやリネン庫になっているのが現実だ」

朝日の写真をみても判る通り、見てくれは確かに悪い。その後の改造後の(つまり設備を取っ払った)写真を見ると、内部設備が整っていたり、人的なフォローがあるならば充分障害者にも使いやすい解放感があるとは思う。寧ろ広々としているので車椅子の人にとっては使いやすいだろうし、目の見えない方にしてもこっちのほうがいい気がするんだが。問題があるとするならば駐車場であるがこれは人的なフォローで何とかなるものだろう。どうもそういう印象を抱かせる条例には不備があるかもしれない。こういう点において木走さんが取り上げておられる

●「横浜市福祉のまちづくり条例」の内容を徹底検証する〜改正ハートビル法に準拠した厳しい19項目に及ぶ整備内容

という内容の適用の際のお役所的なやり方というのはどうなんだろう?と思えますね。
ただ、わたくしがむかつくのは「一人二人しかこない」社会になっている状況というか・・つまりそもそもが身障者自体全人口に比して少ない。当然なわけです。しかも身障者が社会に出にくい都市構造。私だったら怖くて引き篭りそうな町造り。それに仕事をばりばりしたくても雇用がそれを赦さなかったり。社会進出の機会が健常者より少ない。だもんで街で動き回る人が少ない。しかしだ、万が一のための危機管理が重要なのと同様、万が一の為に最低限のフォローが出来る体勢は必要でしょうね。「うちは金銭的な限界があって設備には割けないけど人的フォローが出来るように社員を教育しています」とか、まぁそういうのでもいいわけですし、車椅子用の人のためには他にも色々なケアアイテムがあるので設備自体は変えられなくても、そういうのを用意しておくとかでもいいとか、そういう模索は出来ますね。だから開き直るならその辺りを指摘すればいい。ふてくされちゃいかん。
尚、障害者もその障害の性質、重度、軽度で施設の仕様がかなり異るらしくて難しいようです。確かに全部のい欲求を満たすのは難しいかもしれない。

●高級ホテルもビジネスホテルも一律に規制する条例側の問題はないのか
(前略)
私がここで指摘したいのは、バリヤフリー社会を実現するという条例の主旨に反論したいのではありません。

 問題はその方法論であり、利用実態に即したきめの細かい実現可能な条例にしなければまた今回のような条例違反が繰り返されるのではという疑念であります。

 シティーホテル並みにビジネスホテルにおいても厳しく条例規制するのであれば、カプセルホテルやラブホテルやモーテルにも一律適用すべきであります。

 私はバリヤフリーのカプセルホテルも身障者用駐車場の用意されているラブホテルもよく知りません。

 ・・・

 ようは、あまりにも強引にバリヤフリー社会を実現するために、現実の社会の有り様を無視したような法律の強引な適用は、かえって違反者を増やすだけではないのか、他にもう少し緩やかな賢い法律運用は無いのかということであります。

まことにお役所的な方法論がはたして正しいのかは疑念ではあります。
例えば条例が高級ホテルのみに適用されるなら、身障者は設備の整った、つまり必然的に高い施設に行け的なことになるかもしれない。ただでさえ身障者は金銭的に辛いからなぁ。うちは受け入れ施設がありませんからあるホテルにいって下さい。みたいな社会になったら可哀相だ。だから条例制定の方法論というのはまことに難しいと思う。ラブホもカプセルホテルも使いたい人もいるかもしれない。だから設備を整えるのは無理でも、せめて人的フォローが出来るような余裕ある心の社会にはなって欲しいですね。正直イタリアなんか酷い。遺跡ごろごろで、階段だらけ。道も石畳が多いし。日本よりバリアフリーは難しそうな環境だけど、歩道はそれなりの広さがあったり、なにかあると人がさっと手助けをしたり。まぁ自然に助け合ってるのは見かけますね。
もし、道端で困っているオーラを出している人がいたら一声かけるように。
あと、この社長にむかついたヤツは路駐、駐輪、看板出し、ゴミのぽい捨て(踏むと危険なものがあるかも)はやめろ。
つまりまぁ、他人を批判する前に自分達からはじめようよという事で。
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どうも障害者支援の法律「ハートビル法」で建てられた建物には公的支援や控除もあるらしいよ。

http://www2h.biglobe.ne.jp/~pure/sonota/heart/meritto.htm
1.補助制度[人にやさしいまちづくり事業]
認定建築物で公益的施設を含むものについては、公益的施設に至る経路のうち、
 ・障害者の利用に配慮したエレベーター
 ・幅の広い廊下(車椅子が楽に通れるもの)
 ・勾配が緩やかで手すりのついた幅の広い階段
 ・障害者の利用に配慮したトイレ
等の整備費について地方公共団体が助成する金額(整備費の3分の2以下)の2分の1を上限として国庫補助を行っている。
2.税制上の特例
認定建築物については以下に掲げる税制上の特例措置が講じられている。
(1)所得税法人税の割増償却
昇降機を設けた認定建築物について所得税法人税の割増償却(18%、5年間)を可能としている。
(2)事業所税の非課税
昇降機を設けた認定建築物の高齢者・障害者対応の廊下、階段等の増床部分について事業所税(新増設分)を非課税としている。

これらの援助を受けていたら詐欺だよ。
それと建築基準法に違反。

東横イン 改造、31客室増設
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060129-00000012-san-soci
横浜の2ホテル、容積率制限に違反
 ビジネスホテルチェーン「東横イン」による不正改造問題で、横浜市は二十八日、建築基準法などにもとづき、同市西区の「東横イン横浜西口」と同市南区の「東横イン横浜関内阪東橋」を立ち入り調査した。立体駐車場や吹き抜け部分を客室などに不正改造したことで、二つのホテルで計三十一室が増設されたことを確認。建築基準法で定める容積率の制限を大幅に超過しているとして、東横インに是正を求めた。
 市が、不正改造を確認した市内の東横インホテルは計四棟。

東横インはネットな人々に利用者も多いようで客室にLANがついてるとか、安いとかで人気みたいです。それは我々にとっては大変に有難い話なんですが、結局、そのような安さのからくりはこのような不法な手法で部屋数増やしているからってことですね。企業努力で安いのではなく、コストの削減を法を破って行っているという事で、これは障害者に対する暴言、暴挙以前の問題であると思われなのです。
ただ、最近建築関係の事件多いですね・・・・。こちらは姉齒問題の目くらましか?