ボルドー

ついに旅の最期の地、ボルドーにやってくる。旅の日記帳には「ガロンヌ川・きたない」としか書いていないよ。はじめて訪れる街だというのにまったくやる気がない。だってボルドーって別にどうでもいいんだもんよ。葡萄酒も飲めないし。友人がここにいるので訪ねるのが目的だもんよ。
で、ここで友人Hと再会。ぐりちゃん同様こちらも久しぶりぶりの再会である。嬉しいです。なんせかつてはよく二人でイタリアに旅行したという腐れ縁の同業者の親友である。彼女がフランスに行ってしまい、わたくしは島に行ってしまったのでなかなか会う機会がない。まさかボルドーなんちゅうフランスの田舎都市で会うとは思わなかった。不思議だ。彼女はおフランスで絵を描く仕事をしようとしているがこれがなかなか難しいらしい。なんせフランス人はいいかげんで時間概念が長すぎて埒があかずダメダメだそうだ。「やりましょう」といいながら遅々として仕事が進まんと怒っていた。
で、彼女が来たとき隣にすごく美しく華奢な女性がいるので「だ?誰?」と思っちゃいました。セシルさんという彼女は友人のルームメイトだそうで。しかも漫画家だそうだ。おフランスの漫画家!本を見せてもらったけどメビウスの流れを汲む正統な漫画家だった。すごいよ。なんか有名な漫画本屋から本が出ているよ。実は彼女はかつて男性だったのだけど、悩みに悩んでついに性転換をした女性で、繊細な感性と男性的な感性を併せ持つ作品を描いているので感心した。おフランスではこうした方に対し未だ理解がなく日本より保守的だそうで、彼女もかなり辛い思いをしていたそうです。
で、友人とセシルさんと三人でこの日はだらだらする。どうせ葡萄酒も飲めないしベトナム中華に行った。幸いにしてセシルさんも飲めないし、ベトナムは旨い。おフランス料理より私向きだ。アジア魂を感じるよ。
ところでボルドーはかなり都会で、鹿児島市くらい。田舎もんと成り下がった私にはまぶしい都会だよ。お店屋さんもいっぱいある。ギャラリ・ラファイエットまであるよ。しかしこれが中途半端にダサいものしかない。買い物根性を全然くすぐられないよ。ま・ここっとさんのお勧めどおりインド屋に行ったらやっと欲しい服があったが、結局、買わずじまいで終わっちゃったよ。買い物が実はあまり好きじゃないんだな。とっとと済ませて、久しぶりの友人と喫茶店でだらだらしたいので、土産の酒とつまみだけ購入して喫茶店に入ったよ。友人といるとボルドーだっていうことを忘れますね。ボルドーって一応聞いたことある大都会だよ?いいのか?観光しなくて????
結局、最終日はセシルと彼女のアパルトマンに遊びに行って、時間切れになってしまいやした。友人も12月下旬に日本に帰ってくるといっておりましたが私は島なので会えない。またまたなんとなくしみじみしてしまいました・・・。
やはりメールや電話で話したとしても直接会うっていうのは違うんですよね。みんな距離遠すぎだよ。お互い。

セシルさんの漫画↓
http://www.amazon.fr/exec/obidos/ASIN/2847894349/171-0301952-4131467

どうも外国のアマゾンのISBNは対応していないので表紙画を載せられない。しかしすごく巧いよ。設定は近未来のお話。ファンタジックな絵柄と芸術性はおフランスのコミック状況を正統に踏襲している。フランスの漫画家は芸術家扱い。そして原稿料は白黒の絵を描いて支払われ、更にカラー原稿を完成して支払われるという二重構造だそうです。面白いね。セシル的には「白黒の方がより想像力を書き立てるので好き」だそうで、白黒の絵画の描写が持つ深さを力説していました。私もそう思う。ただ、彼女の作品は色彩感覚はやはりフランス人ならではの中間色が多く綺麗だが、本人は気に入らないらしい。
原稿の描き方は画用紙みたいな紙にマジックなどを駆使してざざっと書き、それをスキャナーに読み込んで再構成するという手法。しかしもっと生原稿を大切にしたらどうだ?と密かに思う。アトリエに無造作に散らばって放り出してあるんだもんよ。漫画原稿の態を為していないとはいえ貴重な原画だろう。
で、カラーにするときはそれにフォトショップで加工する。その使い方も日本人とは微妙に違う。セシルは日本人のセンスをよいと思うようだが、わたくし的にはセシルのセンスが良いと思う。お互いないものねだりの感性なのかもしれない。(彼女の好きな漫画は『MONSTER』だそうですよ。『20世紀少年』も好きらしい。)
で、彼女と友人Hのコラボで新しく漫画を描こうとしているみたいでこちらも愉しみですね。出たらご紹介したいです。