バリのテロ

またもやバリでテロが起きた。観光地での出来事。映る映像を見ると昔知っていたバリとは違って都会になったなぁ・・などと思いました。たぶんもう知らない景色ばかりになってしまったんでしょうね。わたくしが知っているバリは椰子の木より高い建物がなく、空港からの道は夜、薄暗く、夜の闇の異常に濃い南国の島でしたですよ。

昔、あるアメリカ人と飲んでいたときに「バリ島観光」の話になり「僕はそういうところには絶対に行かない。20世紀の植民地だ。君達は旅をすることでその地を植民地化しているんだ」云々と人様の旅に大変に力を込めてケチをつけやがりました。むむむ。アメリカ人には言われたくない。などと思いましたが、その青臭いアメリカ野郎は親父がポール・ケネディとかいう政治なんかをやっている学者で、おそらくご家庭の話題もそういう文明論だったのでございましょう。政治脳が異常に発達している様子だったので、深くその理由を聞くとすごい薀蓄など聞かされそうで嫌だったし、そもそもその時は「なんて大げさな」などとあきれ返り、「ガキの癖に親父臭いヤンキー」と内心レッテル貼りをしてスルーしてしまいましたが、今思えば確かに一理あるといえば言えます。

そもそも観光地としてやっていくしかない土地ではそんな大げさなこと言われたら困るのですが、バリを取り巻く諸問題は様々で、彼の指摘もその一つではあったでしょう。バリ、つまりインドネシアの問題は華僑のやり口の汚さなどへの不満(しかし実は華僑のほうが働き者で安心感がある。インドネシア人怠け者過ぎ。という現実もある)やイスラム教徒とキリスト教徒の民族問題、貧富の格差、島同士が実は仲が悪い。等々沢山の国内問題を抱えていました。
さて、バリ島はヒンドゥーの伝統が色濃く残る島で、またポリネシアの文化の色濃い独特の島ですが、オランダの統治下では沢山の王族が滅ぼされ、歴史の中に消えていきました。

バリ島物語―A Tale From Bali

バリ島物語―A Tale From Bali

上記の本は、ある王族とその一族の村の滅亡の物語です。
美しいライステラス、深いジャングル、アグン山の麓にある寺院、朝になると送り火をたく風習。それらはまったく違う光景でありながらどこか懐かしさを伴うものでしたが、それでも私が訪れたときはもう観光地として賑わっていた頃で、今ほど立派ではないが沢山のホテルが建ちはじめていました。(電力不足でよく停電が起きたりもしていたが)バブルが到来しそうな予感に満ちた土地でなんとなく島の人は浮かれ気味な印象だった。それに比べて、ジャワなどは草臥れ果てた感じで、住民の愚痴を聞かされたりしたが、とにかく今のままではやっていけなくなるんじゃないかという不安があった。ですのでバリだけが異常なテンションだという印象でしたね。

で、バリテロ。
日本の方をも巻き込んだ悲劇となってしまいました。東南アジアのテロ組織ジェマ・イスラミアが犯人だそうですが。イラクをはじめ、中国といい、バリといい(フィリピンなどもそうですが)イスラムの動きは活発ですね。なんだかテロというお作法が蔓延しつつあります。それぞれの問題は憂慮すべきものも多いし、立場的に分からなくもないのですがテロという手法はやはり、人の憎しみを煽るだけでよくないとは思いますよ。はぁ。

注)中国の言う「テロ」はいわゆる「テロ」ではない、それは弾圧の口実としての「テロ」だという見方もある。