NHKの「日本の、これから」

普段はこういう討論番組は不毛なので観ないのだが、何故か親父が見はじめたので横で見ていた。親父が怒る怒る。終いに怒りすぎて二階に上がってしまった。親父は筋金入りの右翼なのである。サヨク臭い匂いが漂うとすぐ怒るのでいつもなだめるのに苦労する。
母も「戦争責任をとか、反省をしろって言われても私は反省しないわよ。子供だった私になにが判るっていうのよ。知るかっていうの。」とぶりぶり怒っていた。これも一つの戦争時代に子供であった世代の率直な感覚なんだろう。気がついたら敗戦だった。喪失感の中を終戦の酷い時代をとにかく乗り越え、日本という国を立て直したら、今まで黙っていた隣の国がぶうぶう言ってくるとか、反省しなきゃいかんとか色々言われて、切れたくもなるという按配かもしれない。今の日本を豊かにしたのは彼らの世代なのだという自負もあるだけに、恩知らずなサヨクとか、豊かになった途端たかりに来る隣国などにムカつくという理論なのかもしれない。
さて、私はまったく戦争を知らない世代なのでなんともいえないが、「これが敗戦をするという光景なんだなぁ。」と思って眺めておりました。櫻井よし子さんという方がとても美しく上品に怖いことをぽろっというのが絵になっている・・・などと、発言内容とまったく関係のないところで関心してみておりました。
私がこの番組に出ていたら中国の歴史学者さんに聞きたいことがあった。
こういう質問↓

中国で1980年代に出版された地図帳を買ってきたんだが、その地図には大韓民国
が存在していなかった。つまり朝鮮半島は南北が統一され「朝鮮民主主義人民共
和国」のみであり、首都は平壌である。国連でも認めている主権国家を記載しな
いという行為がまかり通っていたというのはどういう価値だったのか?現行では
それがきちんと修正されているのか?それについてどう思うか?

実は上記のはかなり長い間の疑問である。1980年代から1990年代のはじめにかけて中国に行く機会が多く、この頃の中国は非常に親日であった。中国人は日本人の知り合いを作りたがっていて、留学生などの交流も盛んになり始めた。だからあの番組に出ている中国人を見ると違う人のようにも見える。中国の人ともよく話す機会があったが、中国が抱える問題とかに真摯に向き合おうとしている人も多く、また歴史認識についての話が出ることはなかった。互いの未来を語らねばならないゆえに過去の問題を持ち込まないという姿勢を貫いているかのようだった。中国人はやはり大人だなぁ。。などと思っていたよ。でも地図帳に載った韓国のこの扱いは酷いじゃないか。と。この時代の韓国に対しての政策はどうだったんだろうか?
中国は政策によって思考の方向性を変える戦略(大韓民国の存在を認めないとか、反日教育するとか)をとったりする国なのか?で、櫻井さんがその辺りを指摘していましたですね。

歴史は実証的な物事、どのような事実があったか?について記載するものではあるが、認識はそれぞれの思想に基づく主観によるものとならざるを得ない。(実証的な歴史記述ですら修辞に於いて主観から免れ得ないが)木走さんのブログでも書いたが「三国志」は蜀の視点で書かれた物語であるが、三国それぞれに「魏志」「呉志」「蜀志」が存在する。呉や蜀からすると曹操は悪党だが、魏からするなら英雄である。だから共通の歴史認識を持つということ自体非現実的な行為というか、どこかの国が異常に強くなって他の国を支配するときに行うものであろう。
ただ、中国の史書などを見ると負けた王朝、失脚した王朝はたいてい悪役に書かれる。王朝末期の皇帝などは諡号も「霊帝」とか「幽帝」とかあまり嬉しくない諡号をおくったり、諡号の降格などを行ったり、まぁ不名誉なことを行うのが多い。隋の煬帝諡号などは「逆天虐民」を意味するひじょうに印象のよくないものである。のちの政権が自らの正当性を主張するために、前の王朝をひじょうに残虐で非道なものとして印象付ける必要があった。だから中国様は、彼らの伝統に従って、過去をそのように印象付けたいという按配。もう中国何千年もの筋金入りの手法なので今更、変えろともいえないわけで、だから日本としては放置して自らの正史を綴るしかないわけです。(そもそもが中国には負けてないわけだし、こちとら支配されているわけでもない主権国家だし)そして他国の歴史認識などをタマに見たりして、「へぇ〜国が違うとこういう風に捉えるんだなぁ」とか思うぐらいが丁度いいと思うんだけどね。妙に反日の他国を意識しすぎて国粋主義ゴリゴリになりすぎてもそれはそれで嫌な気もしますが、少なくとも日本の歴史学者は多様な視点で見るという検証を行うことを大切にしているので、民族主義史観という一つに絞ることはないだろうと思う。それは多数の視点の中の一つであると考えるよなぁ。。

いやはや、不毛な気がして結局最後まで見ませんでしたが、司会の三宅さんという人が櫻井さんにビビッているのが面白うございました。NHKの思惑を超えた混沌とした状況が広がっていたと思われます。

◆中国の問題
「中国には負けてないし」と書いたところその記述について吉祥寺の森の杉本さんからご批判いただきましたが、ブログにコメントと同じテーマで書いていらしたので、ご紹介しておきます。コメント欄でのやり取りの一助となりますれば。
http://blog.livedoor.jp/mediaterrace/archives/50004446.html
言葉の定義や認識の差異の問題などもあるような気もします。
中国共産党」にゃぁ負けてはいないというか、あの時期の中国はなんせ混沌としていて、中華民国中国共産党が戦っていたりと、内乱状態ですね。
杉本さんの定義における「勝」は民衆全体を含めた地域の問題で語っているので、そのときの政権というか王朝という概念での話でないので、そこでズレたかもです。今回のエントリはどちらかというとわたくし的にはその時々の王朝の戦略(前の王朝の悪口を言うとか)の話をしていたので。いやぁやはり歴史の問題は難しいなぁ。。。