記憶するべきこと

世の中には風化させてはいけないことがある。勿論、太平洋戦争によって引きおこされた悲劇の数々。関わった国それぞれにある悲劇。幾つかの犯罪的とも言える行為。論証が済んでいない悲劇もあるし、思い出したくない悲劇もある。でも風化させてはいけない。
先日の6月4日は天安門事件の日だった。よく憶えている。?小平の開放政策によって蒙を啓いた若者たちによる民主化運動。はらはらして見守った。わずかに知っている留学生の友人、大学関連の知りあい、中国で出会った画家や研究者達を思い出した。皆、未来を夢見ていた。
しかし事件は悲劇に終った。?(トウ)小平は弾圧を選んだ。多くの国が中国政府を非難した。しかし中国の田舎の現状をこの目で見たあとだったので、私は学生の運動はいささか早過ぎると思っていた。ゆえに、?(トウ)小平の選んだ苦汁の選択は仕方が無かったとは思っていた。しかしその弾圧の仕方は酷すぎた。流血と拷問、関係者に徹底して沈黙を強いた。その後、中国では「天安門事件はなかったこと」になってしまった。多くの亡命した学生達がこの記憶を風化させまいと、今年もあちこちで集会を開いたようだ。

天安門事件から16年 4万5000人が追悼集会 香港
http://www.sankei.co.jp/news/050605/kok004.htm
1989年の天安門事件から丸16年の4日、香港島のビクトリア公園で犠牲者に対する恒例の追悼集会が
開かれた。主催した「香港市民愛国民主運動支援連合会」によると、約4万5000人が参加。

 集会では犠牲者の遺族や海外民主活動家による民主化要求のメッセージを披露。参加者は「中国指導部は
何を恐れているのか」と訴え、天安門事件や、1月に死去した趙紫陽・元中国共産党総書記の再評価を要求。
ろうそくを手に犠牲者の冥福を祈った。

中国共産党は以下のように総括している。

天安門事件直前、トウ小平氏が危機感 「譲歩すれば中華人民共和国なくなる」
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20050607dde007030032000c.html
◇党出版物に記載

 【北京・大谷麻由美】民主化を求める学生らを武力鎮圧した1989年6月4日の天安門事件直前、最高
実力者のトウ小平中国共産党中央軍事委員会主席(故人)=写真・ロイター=が「譲歩すれば、中華人民
共和国はなくなる」と語っていたことが明らかになった。保守派の陳雲・党中央顧問委員会主任(同)の生
誕100年を記念して最近出版された「陳雲伝」(中共中央文献研究室編)に記載された。

 トウ氏は、北京に戒厳令が敷かれた89年5月20日の中央政治局常務委拡大会議で「問題の根は党中央
に出てきていて、中央内部にある。党内には二つの司令部がある」と指摘し、学生を擁護する側についた趙
紫陽総書記(今年1月死去)を非難。「譲歩すれば、中華人民共和国はなくなる」と述べた。

 陳氏も同会議の席で「トウ氏の講話と中央の取るべき措置を完全に擁護する」と同意した。

 陳氏は同年5月26日の顧問委常務委会議で「今はカギとなる時で後退はできない。もし後退したら社会
主義の中華人民共和国は資本主義の共和国に変わる」と語った。

 これら発言から、当時の二大実力者であるトウ、陳両氏が民主化要求運動に対して強い危機感を抱き、軍
の武力鎮圧につながったことが分かる。

 天安門事件後の同年6月8日、失脚した趙氏に関する政治局常務委の報告書を読んだ陳氏は「趙氏は経済
工作の中での過ちを自己批判しなかった。ブルジョア自由化思想の人物を長期にわたって重用した。改革開
放を唱えたのはトウ氏を中心とする党中央であって、趙氏ではない」という意見の追加について考慮するよ
う求めた。

 陳氏は天安門事件から約1年後、「89年の騒乱は建国以来、発生したことのない非常に複雑な政治事件
であり、党内の特定の歴史的環境における特殊な政治闘争だ」と振り返った。

当時かなり危機感を持って受け止めたことが伺える。確かに彼らの危機感はわからないでもない。しかしその後の隠ぺい工作の方法はやはり戴けない。これらに関しては大紀元時報なども大量に記事を書いてあるから参考にするのがいいとして。。気になったことがある。各紙の最近のニュースヘッドラインを並べてみよう。

毎日新聞
6月7日
上海:「小康」実現度87.8%で全国トップ
中国:大学受験スタート、志願者数は867万人
周小川:通信衛星通じてグリーンスパン議長と会談
08年北京五輪:公式スローガンは23日に発表
環境保護総局:193都市が生活汚水処理率0%
中国:天安門事件直前、トウ小平氏が危機感 「譲歩すれば中華人民共和国なくなる」←★
中国:大学入試、今年も偽2B鉛筆が横行 機械読めず0点の恐れ、受験生注意!
日中首脳会談:サミットでの開催、見送り−−町村外相見通し
脱北の現場から:/1 「中国籍」を売春で入手
中国:沖ノ鳥島周辺に出没の海軍船、EEZ外側1〜2キロまで接近
日中関係:世界はどう見る 中国 現代国際関係研究院日本問題研究所所長・楊伯江さん

◆読売新聞
副首相ドタキャン帰国、指導部の決定…中国紙報じる (6月7日 21:25)
毛派の地雷?路線バス爆発、53人死亡…ネパール (6月7日 03:01)
国税関、業者からの「ご祝儀」を全面禁止 (6月6日 20:56)
中国のプロサッカー、観客1千人と警官隊衝突 (6月6日 19:15)

産経新聞
・批判前に党への報告求める 中国がメディア規制強化(06/07 14:41)
・中国紙、町村外相の対中反論を一斉に非難(06/07 14:41)
・中国への対応苦慮 シンガポール紙記者拘束 「北京に干渉できず」(06/07 09:17)
・バス襲撃、25人死亡か ネパール南部、毛沢東主義派の疑い(06/06 16:02)
・サッカーファン1000人暴動 中国・河南省(06/06 13:53)
・拘束のシンガポール紙記者は北京に 「当局の監視下で居住」(06/06 12:35)
EEZの1−2キロまで接近 中国海軍船、11日目に撤収(06/06 10:03)
天安門事件から16年 4万5000人が追悼集会 香港(06/05 01:57) ←★
・中国領事、豪に亡命求める 反体制派への対応に反発(06/04 19:06)
ベトナムに東南ア最長のトンネル完成 日本のODAで(06/04 19:06)
天安門事件の風化進む 教科書でも触れず、知らない若者増加(06/04 19:06) ←★
・G4、拒否権を封印へ 安保理拡大決議草案 「保持するが不行使」(06/04 16:35)
・傷む地球 環境破壊進む 衛星写真に変化くっきり(06/04 13:41)
・中国の軍拡に強い懸念 米国防長官(06/04 13:41)
・中国を監視対象国に 米、脱北者の強制送還を批判(06/04 11:25)

朝日新聞
「援助で歴史は封殺できない」 中国外務省副報道局長(06/07)
五輪が追い風、中国で高まる英語熱 年2千万人ずつ増?(06/07)
ネパールでバス爆発、53人以上死亡 毛派の犯行か(06/06)
平壌放送、前日と同じ番組流す 5時間以上、原因不明(06/06)
米中商務相が北京で会談 激化する貿易摩擦問題を協議(06/04)
中国人外交官が亡命求める シドニー総領事館勤務の領事(06/04)
米国防長官、中国の軍増強に懸念 アジア安保会議で演説(06/04)
中国でNYタイムズの助手を起訴 機密漏洩などの罪(06/03)
揺らぐ上海の「土地神話」 不動産価格乱高下(06/02)
中印ロ、初の3カ国外相会談へ エネルギー協力など協議(06/02)
中国が共同開発案 東シナ海ガス田日中局長級会議(06/01)

中国関連のヘッドラインを抽出してみた。残念ながら日付がバラバラで、読売と毎日の6月4日の記事を採集できなかったが、ヤフーに残されたヘッドラインによると両紙とも「天安門事件」は取り上げていたようだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?c=int&t=l&d=20050604
産経にも上記のように記録が残っている。しかし朝日には記録がない。取り上げなかったのだろうか?
謎である・・・・・。
◆拉致家族
同じように風化させてはならない事件に、北朝鮮による拉致問題がある。未だ状況が掴めず、救う会の人々は焦燥を感じておられるようだ。遂に今月下旬に首相官邸前で「座り込み」という非常手段に訴えることにしたらしい。なんとも痛ましい限りだ。

「北に経済制裁を」官邸周辺で座り込みへ 拉致被害者家族会
http://www.sankei.co.jp/news/050605/sei070.htm
拉致被害者家族会と支援団体「救う会」は5日、東京都内で合同会議を開き、安否不明の被害者救出のため、
北朝鮮への経済制裁発動を求める座り込みを、24日から3日間、首相官邸周辺で行うことを決めた。

「座り込み」という選択までには紆余曲折あり、会の中でも賛否があったらしい。こうした手段にでることはやはり反感を買うかもしれない。しかし訴えかけるにはどうしたらいいのだろうか?風化させたくない。という家族達の逡巡と悲嘆があったようだ。
詳しいことは枇杷さんのブログに。

予想はしていたが、あまりにも。
http://fruitsofloquat.seesaa.net/article/4174200.html 

ここに到るまでの多くの話し合いが持たれたらしい。
拉致事件」は我々が記憶するべき事柄の一つだ。