相変わらずきな臭い東シナ海

なんでも昨日また大規模なデモをしていたらしい。中国のねらーの祭りは規模が違う。失業率も洒落にならないし暇な人が多いんだろうなぁ。規模はでかいが通常の中国デモの暴力性からいえば珍しくおとなしいデモ。一部、留学生が殴られた、火をつけられたなどということがあったようで日本なら驚きものですが、この国民がまじに怒ったら日本では考えられないほどすごいことになっているのは歴史が示す通りです(EX 通州事件ー中国では闇に葬られている歴史事件の一つ)。ですから今回のデモに関してはやはり「祭り」に過ぎないと思うのです。
転じて、日本のネット関連では、多くの人が不快や怒りの声を上げつつも、現実の大規模抗議オフはあまり起きていない模様です。双方共にどこかで祭りであるということが判っているのかもしれません。
判っていないのはたぶん煽り記事を書いているマスコミとそれに翻弄されている政府の関係者だけなのかも。うちは新聞を取っていないのですが、ネット上のヘッドラインなどを見ると二言目には歴史教科書絡みとか靖国絡みで書かれたデモニュース。賛成派も反対派もそれを利用しているとしか思えないのですがどうでしょう。当然中国の若者はそれが主張だったりしますが、それに便乗して自説をこれ幸いと展開したいが為に、耳目を集めたい。だから取り上げ方に異様に力が入り込むという意図があるんじゃないかと邪推もしたくなります。なんというか歴史教科書や靖国に囚われているのはマスコミも同じなんですよね。
あと、マスコミはネットを目の敵にしていますから、その辺りもこれから踏まえて読まないといけないかもしれませんね。ネットの影響はこれほど怖いのだという論がそろそろ出て来るのではないかなぁ。(もう出ているかもしれないですがテレビも新聞も習慣として読まない私には判りません)
この一連の現象を考察してきた人たちのなかで、木走さんのブログがまとまっていて読みごたえがあります。
木走日記
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050416/1113632306
非常によく調べ、分析を重ねています。
木走さんが書いておられるように、私自身も日本の常任理事国問題に関しては焦らず、動かざること山のごとしの態度でいた方がいいと思っています。そもそも、なんで常任理事国入りしたいのかが未だ良く判っていません。アナンさんの拡大政策がこんな形になってしまってアナンさんもびっくりなのではないでしょうか。まぁ、東アジアで中国だけというのは不均衡ではあると思いますが、あらたな国際紛争になるなら日本は静観しておくほうがいいでしょう。国際社会がこんなジャイアンみたいな国は怖いと思えばおのずと均衡を考えるとは思います。
中国政府としては国内の問題の方が頭が痛いはずです。今回のことは中国の抱える矛盾した問題が噴出してきたともいえるでしょう。
金田一輝氏がコメント欄で以下のように書いています。

よくいわれるごとく、内紛の矛先を政府から日本にそらせるという魂胆でしょう。ただ、コントロール
できないくらい過度の反日運動になるのは、当局側は避けたいところでしょうね。かといって日本に対
して融和的態度を取ると、反日=反政府になるわけで。中共の高官レベルのひとが「反日デモの責任は
日本にある」などというのは国際常識からすれば驚きですが、ある意味やむをえなくもある。
http://d.hatena.ne.jp/kanedaitsuki/20050416 

中国の天安門事件の時に見せた若者の抗議運動。あれからかなりの時間が過ぎました。あの世代の中国人は非常に冷静に自分の国のことを見据えていたように思えます。私自身が知る限りの中国人もこの世代ですが、開放政策が実施されて留学してきた中国人(彼は同じ学舎で学ぶ我々同世代の学生よりも精神的に大人だった)、また国内で様々な道に励む中国人(漢中の芸術家。素朴だが、自身の道を世俗に左右されることなくさぐり続けていた修道士のような人だった)、日本の大学で教鞭をとる中国人(広州出身、彼の同僚達と共に広州を訊ねた時、彼から中国が抱える問題について話を聞いた)など様々ですが、どの人も「中国」というものを相対化した、いい意味での個人主義が多かったと思います。この世代の芸術家には蔡国強という人もいて、ベネチアビエンナーレの作品で自らの国を兵馬俑のごとき陶器で造った作品は壮観でしたね。その視点には成熟したものがあり、中国という国家が抱える人材の深さにあらためて驚いたことがあります。
蔡國強に関しては以下のサイトを参照のこと。
http://www.jpf.go.jp/yt2001/cyber/artist/012_Cai/info.html
蔡に関する様々な美術界の評が出ている。
http://www.peoplechina.com.cn/maindoc/html/zhuanwen/200210/zhuan52.htm
祭に関して中国人ジャーナリストがその軌跡を紹介している
広州出身の中国学者は「僕らの感覚では、中国政府のある北京よりも日本の方が近い。距離が近いというのは大切なことなんだ」と言っていた。国という概念を距離で測っていた。また国家としての中国には精神面での成熟が追いついていないことを憂慮していた。こういう自立した人たちが多数出るのをどこかで恐れたのだろうか?確かに彼らの延長線にはあの天安門事件が存在しているのだ。
今の中国政府はそれを畏れ、若い人に愛国教育を施してきたらしい。解放された情報を得るインターネットの時代なはずなのに、何故か閉ざされた検閲制度がある。また海外からの放送にも検閲がある。北京にいる人のブログでNHK衛星のニュースで台湾を扱ったものにブラックアウトが入る様子を書いたものがある

ぺきん日記/中国・北京より
http://beijing.exblog.jp/2279975/反国家分裂法」のニュースが報道されていたこの時期、NHKプレミアムのブラックアウトが多くなり
ました。全人代のニュース映像が流れている間は平気なのですが、「台湾の反応」みたいな感じで、陳
水篇さんの発言や100万人規模の反対集会の話題に入ると突然ブラックアウトします。そして次のニュー
スに話題が移ると意外とスグ復活します。

このブログのライター、pandanokuniさんは反日デモの様子を細かく紹介しています。現地の人ならではの情報収集は非常に参考になりますね。

pandanokuniさんのブログでの中国の人たちの会話からもよく判ることだが、中国では国内で使う教科書は当然書かれていない事柄がある。それに関しては木走さんのブログの海外ニュースの指摘などでも知ることが出来ますが、海外でも有名な話なんですね。このように、日本の歴史教科書を取巻く状況とはあまりにも環境が違う。子供たちがたとえその教科書で教えられたとしてもたやすく違うものを見付けることが出来る。だから学校で教えなくとも負の歴史も知っている。寧ろ押し付けられるものに反発を覚える若い世代は、おおむね逆の方向へと向かう。(今の若者に右翼が多いのは逆にサヨク教育を受けたからだろなどと思うのだな。)しかし中国人にとってその事情は判らないのだろう。
自分がしていることは他人もしている。
人間はえてしてそういう思考をしがちだ。だから誤解や溝が生じる。そのことを応答する際には念頭に置きながら考えなきゃいけないんだろうと思う。中国は嫌でもつきあっていかねばいけない隣人だし、反発するのではなく理解することも必要な隣人だと思うのですよ。そして理解するならば非常に深く、面白い国ですね。