きな臭い東シナ海

家の目の前は東シナ海だ。居間から東シナ海。水平線が広がっている。夜の海はひたすらに真っ暗で塗りこめたような闇が重く垂れ込めている。冬ともなれば荒れてリーフで砕ける波がごうごうと音を立てている。津軽三味線でも似合いそうだ。日がのぼるといきなり海は輝く。リーフを境に翠と藍とがくっきりと別れ、穏やかな日には波間にあそぶハリセンボンの群れが見える。
そんな窓の外の水平線上に何故か採掘船が泊まっている。ごりごりなんか掘ってるみたい。あ〜そんなトコ掘るとリーフが痛むじゃないか。あの採掘の性でクジラがお産をしに来なくなったんだぞ。むかむか・・・・不審船認定してやりたいじょぉ。と、勝手なことを思っていたら、こんなニュースが。

東シナ海ガス田、試掘権の手続き開始 日本の権益主張

経済産業省は13日、東シナ海の石油・ガス田開発について、日本の民間企業が申請している試掘権を
認可する手続きに入ったことを明らかにした。中国では反日デモが相次いでおり、17日には日中外相
会談が予定されている。中国側の反発が予想されるが、中国が先行して開発を進めている石油・ガス田
が日本側の排他的経済水域EEZ)まで連続していることが確認されたため、日本の権益を主張する
必要があると判断したとみられる。

経産省は今月1日に、中国側の地下構造が日本が主張しているEEZの日本側までつながっているとの
調査結果を発表。中国側に対し、データの提供と開発中止を求め、応じない場合は試掘権付与の手続き
に入ることを通告していた。12日までに中国側からの反応がなかったため、経産省は外務省など関係
省庁と調整した結果、試掘権付与の手続きに入ることを決めた。
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/keizai/20050413/K2005041301510.html?C=S 

案の定、中国は激しく文句を言って参りやした。

一切の責任は日本に ガス田試掘で中国が警告とけん制

 【北京14日共同】中国外務省の秦剛・副報道局長は14日の定例会見で、東シナ海天然ガス田開
発で日本政府が民間業者への試掘権付与手続きを始めたことについて「日本が中国の重大な関心を直視
することを強烈に要求する。この問題から生ずる一切の責任は日本側にある」と強く警告した。

副報道局長は13日、日本の動きを「重大な挑発」として対抗措置を講じる可能性を示唆しており、ガ
ス田問題で中国側が極めて厳しい対日姿勢で臨むことを明確にしたといえる。
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/kokusai/20050414/20050414a3280.html 

鼻息が荒い。怖い。そう。中国は今高度経済成長で激しくエネルギーに困っているのだ。だから燃料系にはマジ切れする。国内ではこんな行為まであるのだ。

中国:天然ガス盗難の被害が深刻、中原油田=人民網

河南省山東省にまたがる中原油田では近年、天然ガスの盗難が非常に深刻な問題になっている。現地の
住民が、村の付近にある油井のバルブを開け、ビニールシートを張り合わせて作った大きな袋に天然ガス
を充填し、持ち帰って使用しているという。(編集MM)
「人民網日本語版」2004年6月25日
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/flash/316217

すこぶる人口が多いうえに高度経済成長。京都議定書無視の中国は先進諸国になるべく頑張っているのだが、それにはエネルギー問題が目の前に横たわる。だから油田が欲しいしガス田も欲しい。東シナ海沖縄トラフにあるガス田は中国としては咽から手が出るほど欲しいのだ。そのお気持ちはよく判る。
私の伯父さんは、カナダでこのガス田についての研究をしていた。「沖縄の海には無尽蔵とも言えるガス田が眠っているんだよ〜」と教えてくれたのだけど、当時の私はへぇ〜。と思って聞き流していた。それがご近所の海の話だとはねぇ。思い到りませんでしたよ。中国が尖閣諸島を欲しがるのはその性なんですね。
で、その主張とか、ガス田の状況はというと以下のサイトや論文などが参考になります。

中国】日中境界海域で資源採掘施設 [05/28] まとめサイト
http://3.csx.jp/senkaku/ 
「進展する中国の東シナ海石油開発と海洋調査」平松 茂雄  杏林大学教授
http://www.cnfc.or.jp/j/proposal/asia00/hiramatu.html 

わたくしはそういう資源のことはよく判りません。が足下にある資源をむざむざとられるのは間抜けです。ガソリン高いし。日本はどうしてこういう存在を今まで放置してきたんでしょうか?と謎なのですが、なによりももっと怖いのは海里問題です。中国が主張する海里は沖縄に沿って出張っています。もしこの主張が通るなら、漁業に携わる方などどうなるんでしょう?海域がココまで出張られたら庭先に不審船がウロウロしそうで怖いです。
それ以上にきな臭い最近の日中間。そして欧州が中国に武器輸出の色気を示している事や、反日運動の最中に知ったヨーロッパの国の認識は「極東は火薬庫だ」であること。もし万が一この海域を巡っての争いになったら、私の住んでいるところは前線基地になるという案配です。琉球はただでさえ大和とは違う歴史を持った土地なので、いつ何時台湾的扱いになってもおかしくない。そして小さな島の宿命はいつも大きな権力に翻弄され、たやすく切り捨てられるということです。
なんか、ここは毅然と臨んで欲しい一面ではあります。どうなるか不安が山積み。
濱尾枢機卿は移民の問題を扱う中で、たびたび中国に赴き、中国の地下教会などの問題に向き合ってきたそうです。そしてその彼を後押ししていたのがヨハネ・パウロ2世でした。バチカンが中国問題をかなり真剣に捉えていたことが伺えますが、それはやはり今日見る極東のきな臭さにも通じるのでしょう。親中国にして皇室とも縁の深い濱尾枢機卿はその意味ではかなり重要な外交上のポジションにいると思います。(そう考えると、小泉@米国のポチはやはりバチカン外交に赴いた方がよかったかもしれないなぁ)
ヨーロッパ諸国は完全に静観するか、武器輸出の有様からして場合によっては中国につくかもしれません。そして日本の頼みの綱は米国やインド、台湾、インドネシアなどの東南アジアといった国々(但し米国はどうやら採掘権を中国と取り交わしているとか?マジですか?)。この構図でいつ何時、第3次世界大戦が勃発してもおかしくない。しかし戦争など誰もが損をし、遺恨を未来の子孫に残すばかりであることは現代が既に証明しています。中国が必死なのもよく判りますが、かといって資源の独占めやら海里問題は困ります。
なにか上手い平和的解決があるといいのですが。

で、小烏丸氏がブログでこの問題に触れて下さいましたです。

小烏丸の日記@デースケドガー
http://d.hatena.ne.jp/kogarasumaru/20050415
もしかすると、枯渇以前に環境破壊で世界が滅びるかもしれません…。しかも中国はその可能性を
踏まえた上で、手っ取り早い手段として原子力発電所の増設で対応しようとしている節があります。
こういう現状を見ると、日本の対中国ODAの打ち切りは拙速ではなかったかと思わされます。
「日本のODA」といえば金のばら撒きですが、環境指針の作成補助・環境向上施設の導入支援・
新エネルギー導入補助など様々な可能性が失われたのではないかと思っています。

中国のエネルギー問題が深刻であることを上記に書いた。中国には何度も訪れているが、その度に風景が変っている。上海の対岸のビルディングの林立。自転車が支配していた道路は今や車の洪水。深洲に街がいきなり生じたり、奥地にもその建設ラッシュの波は押し寄せていた。エネルギーがとにかく欲しいのは無理もない。あの人数を養わねばならない。しかしあの開発スピードは異常だ。どこかに歪みが生じるのは眼に見えていると思う。しかし、これは中国だけではなく世界規模で考える事柄ではある。野放しの開発は結局、世界規模で困ることにもなる話だと思うのですね。小烏丸氏が指摘するように、環境問題なども横たわるし、対応に関して近視眼的な考えは結局、我々にも返ってくる。衛星でみた上海の光は今も増え続けている。二酸化炭素の排出量も日本の比ではない。真っ赤っかなのだ。だから資源の横取りなどという違法的行為をするほど困窮している中国の落とし所も考えていかないとまずいとは思う。だからといって、無制限な拡大的行為を容認するだけではいけない。ただ反発するのではなく、マジに対話が必要だと私は思うのです。

日本が何故、沖縄トラフのガス燃料に着目しなかったのか不思議だと書いたが、もしかしたら日本近海に眠る膨大な量のメタンハイドレートの開発の方が優先だったからかもしれない。

http://www.mh21japan.gr.jp/japanese/index.html
メタンハイドレートは石油・天然ガスに代わる次世代資源として脚光を浴びています。エネルギー資源に
乏しい日本周辺にも、日本が消費している天然ガスの約100年分の量が存在すると推測されています。

実は前にも書いた私の叔父はこの研究開発でカナダにいる。バミューダ海域にも大量にあるらしいよ。まだまだ不安定な代物らしい。日本では四国沖から琉球にかけて存在するらしいです。これが果たして環境問題の解決に繋がるのか?またこれらが新たな環境破壊を産み出すか判りませんが、人災が深刻な事故に繋がる原子力よりも期待は出来るのかもしれません。