ネット時代の言論の自由

ええっと。文字で考えるにやめたいのに。こういうエントリ読んじゃったんで。

○ Living, Loving, Thinking
■愚劣な言論を擁護する
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080427/1209224631
■「愚劣」ではあっても言論は言論だ
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080502/1209661435

いつも淡々と静かにエントリをあげていくsumita-mさんのブログ。端的に鋭いことなどが書いてあったりするんでアンテナしていた。まぁとても静かなブログである。それがいきなりコメントが10を超えたりしていて、プチ炎上系。どうしたんだろう?

・・というわけで全然知らんかったんですが、事の発端はというと青山学院大学の准教授とやらが己の私的ブログで怪気炎を吐いていて、しかもその内容が大変に「愚劣」であるという。問題となったのは最近判決が出た山口県光市の母子殺害事件に絡む言論で、まぁ既に知ってる人は多いと思う。他にもまぁ出るわでルわの過激言論。sumita-mさんのコメント欄にもその言動の一部などが紹介されていたが、いや[これはひどい]。なにか考え方に相違があるとか以前に、人としてどうよ?的な内容で。「こんな変な人よく雇っていたな、青山学院大学。赤っ恥かいてしまったな。しかしまぁ個人ブログというプライベートなことまでガッコは把握出来んよなぁなどと思っちゃいますね」などという感じで、自分的な所感は終わりな出来事なんですが。

ここで更に騒ぎは広がり、この准教授を雇っていた青学に苦情批判コールが起きたらしい。それを受けて青学が謝罪した。という話。

これに関するsumita-mさんの主張は

瀬尾佳美という人の言っていることが酷いということは勿論いうまでもない。しかし、酷いことを自己責任的にいう自由というのはあるだろう。問題なのは青山学院大学の学長が衆愚に迎合して、言論の自由へのコミットメントを放棄し、安易に「謝罪」してしまったことであろう。学長のすべきことは、先ずその「謝罪」を撤回し、改めて瀬尾佳美という人に謝罪することだろう。ところで、瀬尾佳美という人は恥を掻くことによって自らの愚劣な言論の責任を取ったといえる。次に責任を取るのは青山学院に電話を殺到させたDQNどもの番だ。
さて、仁/不仁ということからいえば、抵抗能力の低い子どもを殺すことはより不仁であり、寧ろ大人殺しよりも刑を重くすべきであろうとは思う。
ところで、「その准教授のサイトが大学のサーバを利用したものだったとしたら、ある程度大学側にも問われる責任はあるかもしれないが」という意見あり*1。仮令「大学のサーバを利用したもの」であっても、大学が言論の自由へのコミットメントを放棄することは許されないと思う。というか、所属先にクレイムをつけて大学関係者の言論を封じようとするのは、1990年代からインターネットに巣食うごろつきどものお得意の手段であって、知り合いでもそのような被害に遭った人は何人かいる。しかしながら、何れの場合も(青山学院とは違って)毅然としかとをしたため何事も起こらなかったというが。

・・・ということなので、私も同意なのであるが、そういう御仁を雇っていた学校にも連帯責任あるだろうと、まぁそういう批判がいくつかコメント欄に寄せられた。

うーむ。正直これはもとの御仁があれだし、極端に[これはひどい]事例なので、批判する人々の憤りというか、そういうものは判るし、まぁ学校の態度として、世間を騒がせ済まんかったとかつい言ってしまいたくなるのは判るんだが、言論を扱う大学という特異な期間においては、言論の自由というのは守られねばならない。ゆえに

もし対抗するとしたら、やはり「対抗」的な言論を行なえばいいんじゃないでしょうか。それが瀬尾佳美という人以上に「愚劣」なのか「愚劣」ではないのかはわかりませんが。そういう「言論」は(blogなど誰でも簡単に開けるので)そういうところで行なえばいいし、そうでなくても2ちゃんねるでもMixiでも何でもご自由にという感じです。私が批判したのは、所属先の大学に電話を殺到させるというやり方であり、また大学側がそれに安易に迎合したということです。

・・という意見に賛同するんである。
瀬尾とかいう馬鹿に対しても言論で行え。かの御仁のブログに突撃してどんだけ馬鹿か指摘してやるべきである。しかしなんつーか、批判すべき対象である「言論」ではなく、子供同士の喧嘩に親呼ぶみたいな明後日の方向の攻撃方法は、それはただの言論抹殺行為である。

また、sumita-mさんが以下のブログが紹介されていて、この内容にも同意する。

○Matimulog
准教授の個人blogの記述に勤務先大学学長が謝罪
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2008/04/blog_1fcc.html

一部、引用しておきます。

言論の自由には責任が伴うのだから、当該発言者自身が批判にさらされることは甘んじて受けるとして、所属組織をことさらにあげつらったり暴いたり、所属組織に抗議したりするのはお門違いであろう。
仮にトンチンカンな発言をする教員がいる大学だということになっても、そのような人事をした大学はそのこと自体で不利益を受けるのであって、また評判にも傷が付くのであって、それ以上に大学に対して攻撃を加えることが正当な行動となるわけではない。
あまつさえゼミ生を攻撃したりするなどは言語道断である。

個人がブログに思いをつづることと、活字メディアに見解を発表すること、さらには学術論文として発表することは、どれも思想の自由、言論の自由に属する行動であり、大学が所属教員に対して介入することが最も不適当な領域である。軽々しく、「このようなことが繰り返されることのないよう」努めるなどと発表できるものではない。
できることはせいぜい「一般的に気をつけてくださいね」という実効性ゼロのおふれを出すくらいであり、それを超えて何かするつもりなら、直ちにデリケートな問題に触ることになる。そして特に大学という組織が教員に対して「世間の批判を恐れて表現を慎め」というようなことをいうようになれば、もう「大学」の名には値しないのである。

つまり、まぁよくありがちな「穏便に済ませよう」「問題は事前に防ごう」モードに組織が入るとろくなことはない。なにかトラブルが起きた時、起こした人間を処分するでなく、組織自体がその問題の芽となるモノを排除するというのはよくありがちである。ネットでのトラブルが生じた場合などに、小役人的な管理保守脳の組織の人間が「社員にはすべからくネット禁止にすればいいです」などという光景ね。そして有益なことをしている人までもが足を引っ張られる。これはそういうこと言い出すヤツが責任とりたくないだけとちゃうか?みたいな保身レベルですな。こういう事なかれ主義というか、こういう小心者が蔓延するとその世界は死ぬ。

んで、ちょいとことの性質が異るけど昨今の青少年へのネット規制問題にもどこか通じるとは思う。判断力とか責任、或いは将来ネット世界でサバイブする為の智慧を学ばねばならない場面で、囲い込み運動するみたいなもんですな。一部の馬鹿ガキの性で健全に(まぁちょっと不健全も読むことあるだろう)普通にネットをしている大多数の青少年が規制された状態のものしか読めなくなるみたいな。管理化される社会方向ってどうよ?みたいな。

特に大学というのは言論を取り扱う組織である。会社とか以上に、言論することが命みたいな性格の機関なので安易に謝罪するってどうなんだろう?

出版世界でもそうだが、本の内容がトンでもだというんで、作者ではなく出版社に電話して苦情するってのはよくある光景ですね。まぁ電話しまくる人よりも大学側の態度としてどうなんだ?という比重の方が強いかな。今回の件では。

ただ、こういう「衆を頼んで論者にあらゆる手段で電圧かける」ってのは、以前も小猫殺しの件で坂東眞砂子に対する不買運動呼びかけとか、なんだかなぁ?と思ったのに似てますね。有無を言わさず抹消してやる的な鬼気迫る感が怖いです。

一日一チベットリンク運動/Eyes on Tibet
二つの記事紹介

▼無差別発砲に友人倒れた 騒乱ラサ、自由求め脱出
http://www.asahi.com/international/update/0503/TKY200805020351.html
ダラムサラ(インド北部)=武石英史郎】
発砲に逃げまどい、血を流して力尽きた友人。命がけでくぐりぬけた検問。3月に起きた中国チベット自治区ラサでのデモに加わり、4月末にチベット亡命政府があるインド・ダラムサラへ逃れて来た最初のチベット人がいる。四川省遊牧民出身、出稼ぎでラサにいた露天商クンサン・ソナムさん(38)。朝日新聞の取材に当時の様子を語った。

3月10日にラサ郊外の寺院で起きたデモのうわさが広がっていた。14日午前10時ごろ、中心部で約30人がデモを始めていた。ソナムさんも加わり叫んだ。「自由を、権利を、独立を、ダライ・ラマ万歳」。誰かがイスラム教徒の肉店に石を投げた。チベット人が大切にするロバや馬の肉を売る店だったからだ。店主はナイフで抵抗、騒ぎが大きくなった。千人近くに膨れ上がっただろうか。治安当局の車をひっくり返して気勢を上げると、遠巻きにしていた警官隊が発砲を始めた。すぐ近くにいた友人が胸を撃たれて倒れた。布を巻いてやり、逃げようとしたが、2〜3歩で動けなくなった。混乱の中で友人の消息は分からなくなった。「恐怖というより、怒りと憎しみでいっぱいだった」

デモは場所を変えて続いた。漢族は逃げ、姿が見えなかった。午後3時ごろ、装甲車が3台来て催涙弾を発射。装甲車から兵士が自動小銃で無差別発砲を始めた。デモ隊は散り散りになった。幌(ほろ)付きの軍用トラックが倒れた人たちを荷台に載せて運び去った。火災による煙が充満する中、兵士の数がどんどん増え、怖くなり住まいへ戻った。午後9時ごろだった。

ソナムさんは、建設作業員の同郷者6〜7人と寺院近くの空き地でテント暮らしをしていた。15日以降、兵士が毎日やって来た。騒乱当時、何をしていたのか、逃げた者はいないか。ソナムさんは自分のことは黙っていた。露天商仲間が連行された。ソナムさんもデモに参加して投獄された経験がある。「捕まれば殺される。同じ死ぬなら逃げた方がましだ」。数日後、テントを抜け出した。行商に行こうと取得したパスポートとネパールの査証があった。ネパール国境行き乗り合いタクシーの座席が手に入ったのは3月26日だった。

検問は10カ所近くあった。乗客はほかに漢族が3人。身分証を盗み見たら、2人はネパール国境へ配属される兵士。恐ろしくなった。ただ、これが検問官の警戒心を緩めたかもしれない。途中の街で食事をとったとき、「ネパールでも騒乱で大変らしい。気をつけなよ」。漢族の言葉に黙ってうなずいた。国境には翌朝到着。往来する商人に紛れ込んだが、真新しいパスポートが怪しまれた。尋問は2時間半。「暴動なんてあったんですか」。しらを切り通した。ダラムサラへ向かう途中、カトマンズの難民センターから初めて故郷の父に電話した。「脱出した。元気だ」。盗聴のおそれがあり、一言二言だけ。遊牧に出た妻子と話すことはできなかった。

命がけでつかんだ自由とは何か。ソナムさんは言う。「外出しても、何を叫んでも、殺されないこと」

亡命政府によると、年間2千人を超えていたチベット難民は中国側の移動制限で激減。騒乱後はソナムさんと学齢期の児童3人だけという。

渦中にあった人物の証言は重い。

福田首相止まらぬ中国傾斜 五輪開会式出席前向きの真意
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080502/plc0805022035008-n1.htm
福田康夫首相(71)は2日、今年8月の北京五輪開会式への出席について、記者団に「まだ決めていないが、行けたらと思う」と述べ、情勢が許せば出席したいとの考えを表明した。首相が開会式に出席すれば、1988(昭和63)年のソウル五輪竹下登元首相以来20年ぶり。ただ、国内では中国製ギョーザ中毒事件や長野の聖火リレーでの中国人留学生らの態度への反感が高く、国際的にもチベット問題への批判が強い。開会式出席は、低支持率にあえぐ首相にとってさらなる逆風を生む結果となる可能性もある。
 首相は同日夜にも6日に来日する中国の胡錦濤(こきんとう)国家主席(65)から開会式への招待があった場合、「そういう話があれば検討させていただきたい」と述べた。
 政府内では首相の発言について「人権問題に関心の薄い国、日本という国際イメージが定着しかねない」(政府関係者)という懸念の声が出ている。ただでさえ、首相はチベット問題に関して中国への理解と配慮を優先させる姿勢を見せてきたからだ。
 外務省にとっても首相の発言は、寝耳に水だったようで、同省幹部は1日、「親中派の首相でもこの時期に五輪開会式出席を言ったら、内外に与える波紋が大きいことぐらい分かっている」と指摘していた。
 胡主席への配慮であるにしろ、首相の対中傾斜ぶりは、官僚側の観測を超えていたということになる。与党内からも「首相が出席すれば、世界の笑いものだ」(自民党有力議員)との声も上がっている。
 中国は北京五輪の開会式に、各国の元首、首脳クラスを多数集め、国威発揚を図ろうと考えている。だが、人権意識が高い欧州の複数の首脳はすでに不参加の意向を示している。
 ドイツのメルケル首相、ポーランドのトゥスク首相やチェコのクラウス大統領らは不参加を明言。フランスのサルコジ大統領は、中国がチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と公式会談をすることを出席の条件としている。現役の首脳ではないが、日本の首相経験者の一人も周囲に「招待されても絶対に行かない」と述べている。
 一方、ブッシュ米大統領は出席の意向だが、議会側からは欠席を求める声が出ており、次期大統領候補らもそろって不参加を訴えている。韓国の李明博大統領は「隣国での開催なので開会式には出席したい」と表明している。
 国や首脳により対応は分かれるが、中国側に注文や条件をほとんどつけようとしない今回の首相の発言は、中国に助け舟を出した形だ。首相は3月29日には、北京五輪開会式のボイコット論について「声高に批判したり、オリンピックと関連させるようなことが、今の段階で適当かよく考えないといけない」と述べ、中国をかばう姿勢を見せ続けている。
 共同通信社が1、2の両日に実施した世論調査で、福田内閣の支持率は19・8%と、とうとう20%台を割り込んだ。今後もこれといった政権浮揚の秘策を見いだすのは難しい中で、首相が中国への対応を誤れば、支持率はさらに落ち込む可能性もある。

日本政府は親中路線。日本における五輪妨害はやはり「反体制」という図になるという按配。つまり鼻息荒く怪気炎を吐いていた右翼は「反体制」警察の敵。

・・ということを自覚してるのかゴルァ!というエントリが最近チベット問題関連であちこち言われていましたが、まぁそういうことだと。

○無産大衆
http://d.hatena.ne.jp/madashan/20080504/1209879892#seemore
■総括その二 で、結局左翼って誰のことなの?

チベットデモでの様々な現象を題材にして政治運動について考察している。これ以外にもなかなか読ませる良ブログ。
文字がすごく詰まっているが、それ相応の濃さに加えたエンタティメント感があるとこがすごいので、定期購読中。左翼とか右翼とかマルキシズムとか革命とかいうキーワードが頻繁にリンクされるようなブログ書いてる人にお勧め。4月24日からなのでエントリ数少ないからはじめから読むといいよ。24日にかかれたブログを書くことについての宣言文読んでからどうぞ。