著作権の話 JASRAC報道を受け

JASRACがどーやら独禁法違反であげられたらしい。

ジャスラック立ち入り検査 著作権めぐり他社排除容疑
http://www.asahi.com/national/update/0423/TKY200804230134.html
テレビやラジオ番組で使う楽曲の放送使用料をめぐり、著作権管理団体の日本音楽著作権協会JASRAC)の契約方法が、競合他社の事業を不当に制限し、市場への参入を排除するものだった疑いが強まったとして、公正取引委員会は23日、独占禁止法違反(私的独占)容疑で、同協会の本部(東京都渋谷区)に立ち入り検査をした。

 JASRACは、NHKや民放各局が番組内で流す楽曲の使用料について、流した回数や時間ごとに計算するのではなく、各放送局の年間放送事業収入に1.5%を乗じた金額を放送使用料として徴収する「包括契約」という契約形態をとっている。各放送局のサンプリング調査をもとに、作曲家らへの配分を計算している。市場規模は年間約260億円。

 音楽著作権の使用料を徴収し、作曲家や作詞家に分配する業務は、かつてはJASRACの独占市場だった。01年10月施行の著作権等管理事業法で、JASRAC以外の業者の参入が認められ、数社がすでに事業を開始している。

 関係者などによると、新規事業者は楽曲が使用されるごとに支払う個別処理方式での契約だったが、JASRAC包括契約方式をとってきたため、放送局は新たなコスト発生を嫌って新規事業者の管理楽曲の使用を控え、作曲家など権利者も新規事業者への楽曲の管理委託をとりやめるなどするため、新規のライバル社の参入を困難にしている疑いがあるという。参入はしたものの、ライバル社は使用料徴収額で圧倒的な差を付けられている。

 楽曲の使用をめぐる独禁法違反事件では、公取委が05年3月、音楽配信会社への利用許可を不当に制限したとして大手レコード会社5社に排除勧告を出した例がある。

 日本音楽著作権協会は「立ち入り検査には全面的に協力している。具体的な容疑は分からないが、我々は適正に音楽著作権の管理業務をしてきた」と話している。

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 〈日本音楽著作権協会〉 1939年に設立された日本最大の著作権管理団体。英語の略称から、ジャスラックと呼ばれている。全国に21支部。作詞家や作曲家などから委託を受け、放送やネット配信、カラオケなどで利用される音楽の著作権管理をしている。06年度は、約1110億円の使用料を徴収している。

音楽関連の著作権は厳しい。
finalventさんとこでこの件を取り上げていたが。

finalventの日記
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20080425/1209080356
■日経春秋 春秋(4/25)
 nifty時代は歌詞の一行でも引用すると大騒ぎだった。

・・と指摘されておられた。そう。niftyのフォーラムでは歌詞引用にピリピリしていて、一行も書くことまかりならんというので音楽のはなしをするのは大変だった。その性でJASRACは大変に忌み嫌われる存在となった。イチイチ素人の文章に文句つけんなこのボケみたいな。そんな気分。しかし、いまやネットでの音楽配信の時代、コピーがたやすく出来るので、確かに音楽という知的財産が脅かされているのは同じように表現で食っているわたくしとしては危惧するところではある。んが、音楽ギョーカイにはJASRACという怖い存在がある為に、ま、大丈夫なんだろとか思っていたが、流石にやり過ぎたのか、とにかく上記のような始末である。微妙ザマミロ気分、微妙心配気分。な複雑な気持ち。

ところでfinalventさんのところのコメ蘭でも書いたが、視覚産業の著作権は酷い。というか視覚産業のギャラは激しく安い。特に出版関係でのギャランティは酷く少ない。聞いたら驚くと思う。100万部売るベストセラーだろうが、3000部のだろうがギャラは変わりない。大手出版社の文庫本の表紙画で4万円というのがあってのけぞったことがあったが、それではマックのバイトの方がマシかもです。再版されても作家には印税は入るが、装丁画家やデザイナーにはナニも入らない。売れてますよなどと言われても、一桁代のギャラを貰って以降なにも生じないので、へぇ〜。とか他人事である。しかも出版関係の広告などに表紙が載っていても、すでに絵の権利を売り渡したあとなのでなんのギャラも貰えないのがデフォルトで、タマに貰える時があるのだが、そういう良心的な出版社は余裕がある大手。それでもそういう出版社のでも貰えない方が多い。デザイン化されたので権利はないということなようだ。
担当した作家が船で世界周遊の旅に出たり、ブランドもんを大量に買いあさったという話を聞いても、奴隷化された装丁家としては殿上人の話である。そういうわけで、締め切り遅らせる作家にはむかつく時がある。奴隷化されたイラストレーターのせめてものプライドとして、それくらいは文句垂れたい。だが、同じクリエイターとしての産みの苦しみも判るのでこれまた激しく怒れないのである。

かくして描くという行為へのモチベーションはどんどん下がり、ついでに財政も下がり、今月は再び文庫本すら買えない財政に転落した。
モチベーションの方は自分自身の問題なのでそれはまぁ自分でなんとかしなきゃいかんことなのだが、そもそもなんだか全然仕事こないんだよね〜。ネット時代で無料写真配信が発達して出版物の仕事もおおいに減ってしまった。大ベテランの大橋歩さんですら仕事が少なくなったわよぉとおっしゃっていた。本屋に並ぶのはフリー素材を用いたデザインが多い。そりゃデザインする人間も絵心はあるんで、勝手にいじれるそういうの方が楽しいと思う。
なもんで、今月も月一のカットの挿画量5万円でひと月を暮らさないといけないんだが、保険と光熱費当のインフラと国民年金でそれ以上になってしまうので、半年の出稼ぎの時に貯めておいた貯金がどんどん目減りしていくんであるよ。わたくしにとって出稼ぎはマジな「出稼ぎ」なのである。日本がアメリカのように保険加入してないと医療が激しく高い国でなくてよかったっす。友人の多くはいわるゆ生命保険とかなんとか保険とか入ってないのが多いんだが、わたくしも同様である。せめて台風の時の保険に入っておきたいんだがその余裕が全然ない。

イラストレーターとかアーティストという視覚産業で働く人々はおされとか言われたり、横文字職業などと揶揄されるが、かような過酷な環境で生きのびているわけで、全然おされでないんである。好きじゃなきゃやってられないとかいうレベルではなくそれしかできなくてやっているんだが、マジにJASRACのごとき守ってくれる存在が欲しくなるのである。

知的財産は理不尽なまでに複製を赦さんぐらいでないと守れないんですよ。それで食ってる人々のものは敬意はらって欲しいなぁとは思います。
確かに一行のコピーも赦さんというのはすごすぎると思うのだけど、それでも知的財産の所有権が守られないとかような奴隷生活が表現者の世界に待っていることになる。そうなった時、文化というのは衰退していくのです。

そういうわけでイラストレーターの先輩としていっておくが・・・
このギョーカイマジに食えんぞ。
同人系な人で同人本販売という別な収入持ってるとか、ファイン系で画商を確保するとか、文章も書けますよとか、エディトリアルデザインもしますよとか、ガッコのセンセしてますよとか、複合的な経営をしていないと、マジにネットカフェ難民になります。不器用で絵しか描けないわたしのような馬鹿モノだと下流覚悟。それでも一応出稼ぎ先が確保出来てるから食えてるが、将来は年金のみの生活になるかもしれないよな恐怖の毎日。朝起きるとその恐怖で鬱になることしばしば。誰も助けてはくれない。ジャスラック様もいない。その覚悟あるもののみやればよろしい。お勧めはしない。

ちなみに悪玉扱いされているJASRACの取り分は意外と少ない。
P2Pとかその辺のお話@はてな
http://d.hatena.ne.jp/heatwave_p2p/20080424/1208984800
■1枚3,000円のCDが売れたときのJASRACの取り分

アーチストや作詞家の権利を守り、取り分は少ないのに悪玉扱いはよく考えたら酷いよ。
奴隷化した挿画家にしてみたら神様みたいな存在だよ。