おフランス・三姉妹の修道院とゴルド

一応、行ってきた記録でも書いておく。
そもそも、最近の私は怠けの罪がすごいので、「旅に行く」という行為自体に怠けていたので、今回の旅は人任せである。旅にでるまで一体何処に行くのかについても実はよく把握していなかったよ。以前見そびれた「ロマネスクの三姉妹」と呼ばれるシトー派の修道院を見るというので行ったようなものだ。あとは向こうに住んでる友人に会えるという目的くらい。だからそれ以外の情報はナニも知らない。ガイドブックも持っていかなかったし、おフランス語モードに頭の中がついぞ切り替わらなかったよ。一番使った言葉は、「ぼん ぅじゅ〜る」と、「めるし」、と「ふろ゛ぁ(寒い!)」「も〜べとん(天気悪!)」な気がするだよ。(そもそもおフランス語などよく分からん)
◆シトー派の修道院建築
飛行機に缶詰になりながらたどり着いた所はニースであった。「ニース」というとよく聞く街なんだけどどういうところか知りません。「マティスの教会がある」というくらい。なもんでとっとと「ル・トロネ」という修道院に向かったのである。(以下続く。風呂に行ってくる)
・・・・で、風呂から上がってきたので続きを書こうと思ったけど、何処に行ったのかよく覚えていないや。メモ帖を見ないとね。

ところで、この旅はツアー形式であります。そもそも数年前に中世ロマネスクオタクと成り下がった、某編集者と、某画廊オーナーと、私とで、「ロマネスクな教会にいきたいが、場所がとんでもない辺鄙な所にあるので、どうしたらいいか?」ということから「バスをチャーターしてツアーを成立させる人数集めたらいけるかもね。」という大変に他人に頼りきった企画でロマネスク教会を見に行くツアーを作ったのがきっかけである。建築家やカメラマン、作家、編集などヤクザなボーーーっとした人々が集まってだらだらとロマネスクを見る旅という感じ。そのためクソど田舎ばかり行くのである。今回の旅でもクソ度田舎ばかり回っていたのでボルドーにたどり着いたときはあまりにも都会で、おら、びっくりしてしまっただよ。
というわけで、「ロマネスクの三姉妹」とも呼ばれるシトー派の3つの修道院(ル・トロネ、シルヴァカンヌ、セナンク)を訪ねる所から旅は始まったわけだ。この3つ、成立も同じような12世紀という時期で厳格シトー派の中心人物、サン・ベルナールの理念の下に簡素な均整のとれた美を今に残している。既に2つの修道院は完全に廃墟と化し、聖務は行われていなかった。同行者の一人が未だ生きている修道院の聖堂は空間にある何かが違うと評していたが、やはり祈りの途絶えた聖堂は寂しいものがある。ル・トロネ大修道院はそういう廃墟化した聖堂であった。

3つとも構造は同じであり、薔薇の名前に出てくるあの修道院(フォントネー大修道院をモデルにしたといわれている)のように回廊があり、それを囲むように僧房があり、簡素な聖堂がそれにくっついて存在している。大きな石造りのこれらの建造物は寒波に見舞われた南仏の寒さを壁に抱え込んでしまうので底冷えのする中でのフィールドワークと相成りましたよ。
そもそも12世紀というとクリュニー大修道院が発達していった時期でもあるのだが、シトー派はそれらと別れ、やがてヨーロッパへと広がっていくのですが、クリュニーと決定的に違うのはドミトリー形式の僧房を持つことだそうですよ。(ぐりちゃん談)だから聖堂横の僧房の広さは空間として心地よい。フォントネー大修道院の僧房なんぞは床に砂が引いてあったと記憶する。
どの修道会も、この時期発達したゴシック様式とは完全に袂を分かつようにシンプルへ、よりシンプルへと向かおうとするが、均整の取れた数学的な美の探究という点で現代美術にも通じるものがあるように思えますよ。さらにはその材質のみの美のありようがモノ派と呼ばれる人々の作品に通じると思いましたですね。
いやはや、寒波な南仏でいいもん見せてもろたですね。

◆ゴルド
滞在はゴルドという街で、わたくしは予備知識的に全然知らない街だった。いくまえにま・ここっとさんが教えてくれたので判ったという体たらくでしたよ。もっともボルドー在住のフランス人はこの町のことをぜんぜん知らなかったのでよしとしよう。とにかくミシュラン地図にも小さく出ているような小さな街で、フランス人のバカンスご用達な場所のようだよ。ようするに山村って感じなところですが、お山にへばりつくように街がある。天然の要塞状。中世はこのように高台に街を作る。いやなやつらが攻めてきたら城門を閉ざして城砦化するのに最適なんだな。だからすごく眺めがいい。だけどおかげさまで寒いよ。しかもシーズンオフは店が閉まっている。街が寒々しく一層気温が低く感じられるので困りモノだよ。

どんな具合な所か写真でも紹介するのが筋なんだろうが、写真を撮る習慣や整理する習慣があまりないので、赦せ。

で、この寒々しい街にお泊りしたんだけど、ホテルがすごくよい。雰囲気が素敵である。農家を改築したような田舎建築ホテルでバカンス様ご用達らしく本当は冬場は開けていないらしいところを無理にお願いして開けてもらったらしいよ。ゴルドの街を一望に眺められる庭もよろしい雰囲気で「ふぃがろじゃぽん」とかに載っちゃいそうなおしゃれさである。が・・・・・・・暖房機器が全然駄目である。寝ている間に凍え死ぬかと思っただよ。この時期はおしゃれよりも暖房が重要だ。あと風呂ね。日本人は西洋人のように体が野蛮に出来ていないので風呂に浸からないと疲れが取れないんだよ。ローマの修道院(風呂桶なし)に住んでる某氏は「風呂なんかイラネ」とか言ってるけど、わたしゃ軟弱なので重要だよ。日本人が誇りとする風呂文化を大切にしたいよ。ただ歳食っただけだからかもしれないけど。

で、このゴルドには3泊した。このホテルの滞在中に覚えた言葉は「ね〜じゅ(雪)」である。凍え死にそうに暖房が効かないうえに雪なんか降ってるんじゃねぇ!とか思っちゃいました。