叙階式

今日は叙階式に行った。・・・っつっても世の中の99パーセントの人はそれが何かよくわかんないと思う。羅馬カトリックのギョーカイ用語だからね。
日本におけるキリスト教徒は1%しかいないといわれています。とにかく少ないです。日本的には新興だから仕方ありません。(隠れキリシタンな方々は違うけど。)で、その1%のなかでさらにプロテスタントとか、正教会とか、カトリックとか色々あるわけでだから世の中の人が「叙階式」などというものを知らなくて当然だと思います。
そもそも、前にも書いた通り、神父という存在そのものに日本で出会うこともまれでしょうから、世の中の人は色々妄想ネタを膨らましてヤオイ腐女子に萌えられたり、すこぶる「あやしい」存在と思われたりしておりますね。でも、これも前に言った通り、ただのおっさんなだけです。でも、ナニが怪しさに勢いをつけるかというと「妻帯できない」これに尽きます。やはり結婚できないシスターなども殿方の萌えの対象であるがごとく、神父も「一生独身?」場合によっては「一生童貞?」と奇異の目と萌えな視点で見られているようです。生涯男子校生活的なモーリスな世界に妄想が行くんでしょうが、なんども言うようにただのおっさんです。ぜんぜん萌えません。
ただのおっさんの癖に独身な存在が山のようにいるのはローマ・カトリックだけで、プロテスタントの牧師は結婚できますし、正教会の神父は「主教」という偉い人だけ妻帯できません。主教は修道者がなるという伝統があるからなのですね。これは日本でも曹洞宗などの禅寺坊主の世界がそうで「僧正は妻帯できないのですよ。」と言ってました。(←京都・東福寺の僧正さん談)もともと仏教の僧侶も妻帯は出来なかったのですが、そういうコトになってしまったんですね。まぁ、独身男性がいるとおばさん達が萌えますから、びみょーに宣教効果はあるかもしれませんが、やはり相変わらず少数なのですからたいした効果はなさそうです。やはりヨン様のような殿方を神父にスカウトするしかないでしょう。
で、叙階式。要するに神父になるための儀式というか、そういうものです。司教が来て、神父(司祭)になる為の修養を終えた人に、司祭になるための儀式をするんだな。仏教のお坊さんでも似たようなのがあると思う。
神父(司祭)という職務は、俗世間的ないわゆる職業と違って「神から与えられた」と考えるので、一度なってしまうと死ぬまで神父(司祭)です。やめたくてもやめられません。世俗的にはトンでもな神父などがいたら、司祭がやらなきゃいけないお仕事などからはずされたり(職務停止)しますが、霊的世界では一生司祭の烙印を背負って生きていかねばならない。中世の神学者アウグスチヌスという人は「司祭はその人格がどんなにひん曲がっていようと、彼の行う秘蹟は有効なのだ」と言っています。つまり霊的なこと(秘蹟)は彼自身が行うわけではなく神が行うことであり、彼自身は単なる神の道具に過ぎない。つまりシャーマンみたいなもんですね。日本的解釈だと「神が憑く」という感じですかね。
というわけで、完全に自己を明け渡さなければならない。そういうおっそろしい覚悟がいる職務です。簡単にデューダ出来ないお仕事なのです。辞めたくてたまらなくても辞められない。カトリックの場合それに独身というハンデがあるので、好きな婦女子などがいても簡単に結婚するからやめるということも出来ず、プラトニックに愛するしかないです。そうでなかったら司祭を辞める覚悟で申請をして、教皇の許可をもらうまで何年か待たないといけないらしいです。その間、恋人が飽きてどっか行ってしまったら悲惨かも。
それと、神父(司祭)になるまでにはと〜〜〜っても長い年月が必要です。6年ぐらい勉強したり、修道会に入って司祭というコースなら10年ぐらい下手するとかかります。修養を終え、やっと娑婆に出られたら、もうジジイだったりすることもあります。まぁ、そこまで苦労してなった司祭を簡単には辞められないでしょう。
・・・というわけで、今日、叙階された神父も、異常に緊張していました。
生涯背負わなきゃいけないものを背負うわけで、それは相当の覚悟と忍耐の日々がいったんでしょう。男泣きに泣いてました。
神父という職務は「奉仕」の仕事で、更に偉くなればなるほど「僕」となるコトが*ほんとーは*要求されます。「わたくし」というのがどんどん無くなるわけですね。ですから教皇などは「僕の中の僕」などと申します。全てのカトリック教会の中の人に仕えなくてはならないお仕事であり、危篤でも元気な姿を見せるために教皇服に着替えて、病院の窓から挨拶しないといけないという、命を削って人々に応えなくてはならない過酷な仕事です。その為、教皇になった人はコンクラーベ教皇選挙)の結果を知らされたとき、その職務の重圧と恐ろしさに泣くという話も聞いたことがあります。
ま、どの世界も極めた人は大変だと思います。