棲息する環境によって人間は価値が変化する

・・・・・・・とかいうタイトルでナニが言いたいかというと、人間というのはたやすく環境慣れするというか、わたくしは普段は与論島というすごく田舎に住んでいる。いわゆる島嶼部というところだ。島嶼部のナニがすごいかというと、コンビニが一軒しかない。全国チェーン店なお店は一軒もない。せいぜい黒猫ヤマトの出張所があるくらいだ。Aコープというスーパーがあるがこれは東京じゃ聞いたこともなかった。生協らしいんだけどね。エスカレーターが島のどこにもない。ビルと呼んでいいような高い建物がない。一番高いのは与論病院か与論観光ホテルだろうが10階建て以上ではなかったと思う。信号機が二つしかない。点滅しているだけである。当然島から出たことがなければ電車というものの存在は知らない。新聞は朝日新聞と読売だけだけど夕刊は来ない。朝刊が夕方届く。インターネットで買い物がしたくても小さい文字で「島嶼部は除く」という言葉にがっかりすることが多い。台風が続くとスーパーからごっそりと売り物が消える。天気予報を見ながら牛乳とパンを早めに買い占めないといけない。買いたいものはない。あるものを買うしかない。庭にはヤシガニがいる。でかいヤドカリもいる。季節ごとに渡り鳥がやってくる。
まぁ、慣れると別に平気になるんですが、久しぶりに横浜の実家に帰るとびっくりする。人が大量に意味もなくぷらぷら歩いている。車がみんな新車でピカピカしている。錆びていない。道に草とか木とかサトウキビなどのごみが落ちていない。たかがペットショップごときで島一番のスーパーよりでかい。ものがありすぎて何を買っていいか分からなくなる。なので買い物に出かけたがナニも買わずに帰ってきてしまったことがある。大量の商品を眺めているうちに買いたいモノが何か忘れてしまったのだ。疲れることこの上ない。銀行で並ばされる。待たされる。ガキが意味もなく路上でたむろしている。子供が外で遊んでいない。車大杉。空気が悪くて喉が痛い。
こんなところで育ったのかよ?!と思うほどに浦島になってしまった。もう心底ど田舎人間です。これで銀座とか行ったら、どえりゃー驚いちゃうんだろうなぁ。なんでもシャネルの店とかいつの間にか銀座通りに出来てるらしいし、アップルのショップもどっかに出来てるらしいし。わたくしが最後に見た銀座ではルイ・ヴィトンの店が出来ていたり、以前あった店がどっかに行ってしまい、どーでもいい店は出来て、行きつけの店がつぶれるってのになんとなくむかついたが、今度はどうなってるんだろう。教文館だけはなくならないでほしい。
しっかし、銀座。行くたびにブランドショップ(それも糞メジャーなブランド)が増え続けているんですけど。ブランドの店は海外に行けよ。欲しいやつは海外で買え。シャネルが欲しけりゃパリのジョルジョV通りに行け。プラダが欲しいんならミラノのモンテ・ナポレオーネ通りにでも行けっての。世界中どこ行っても同じものが買えないと気が済まないというのもよくないと思うぞ。まぁ、わたくしは与論島の近所の客もめったに来ないような傾いたよろず屋で賞味期限も怪しい、日に焼けたアメリカ産の菓子でも買ってるのがお似合いだけどね。与論でシャネル着てヴィトン持っていてもしょーがないし。マジにカビが生える。だから高級ブランドなど無駄である。与論で他人から賞賛されるような価値があるものは海辺で拾ってくる獲物だ。シャコガイのでかいのを採った日にはしばらく皆の賞賛の的になると思う。どえらくでかい魚を釣った日には、与論島の民族村で魚拓を保存展示してくれるかも。
来週から展覧会のせいで銀座勤めになるが、まぁ田舎もんはまっすぐ家に帰りますや。とにかくどんどん田舎体質になっている自分としては混んでいる電車に乗らない時間を調べるのが先決か。